民生常任委員会行政視察研修(松山市)

平成29年3月議会において、平成29年度三豊市一般会計予算の中の山本地区就学前施設建設事業費55,486,000円に対して、附帯決議が出され採決の結果可決されていました。〔付帯決議の内容は、2017年3月17日の『三豊市議会予算委員会(平成29年度)』で形成したいます〕

平成29年7月25日(火)に実施された今回の視察研修は、附帯決議にそうような施設建設の可能性を研究するためのひとつの事例として計画されました。訪問したのは愛媛県松山市余土(よど)保育園で、視察テーマは「余土中学校旧校舎の活用について(保育園移転について)」です。

 

余土保育園は、余土中学校の旧校舎を改築した複合施設の中にあり、本年4月開園した。この施設は、余土保育園の他に、余土児童クラブと松山市子ども総合相談センター余土事務所が設置されている。ここに置かれたいづれの施設にとっても、社会状況の変化から新たな施設整備の必要があり、いかに対応するべきか検討されていた。

●余土保育園の整備前の状況は、余土中学校に隣接する公立保育所で、昭和40年に建設された木造2階建ての園舎だった。耐震化のため改築が必要であったが、敷地が狭く、改築工事実施が困難な状況であった。

●余土児童クラブの整備前の状況は、余土小学校の児童が利用する施設でありながら、小学校から離れた国道を横断しなければならない場所にあった。また、利用児童数の増加で施設が手狭になっていた。

●子ども総合相談センターは、松山市内に既存施設として中心部と北部地域の2か所あったが、子育て世代人口が南西部地域で増加したことにより、相談の利便性を向上するため、3カ所目として設置が求められた。

このような状況の中、余土中学校の跡地利用を地元のまりづくり協議会と市との間で協議を重ね、公民館等の地域施設エリアと保育園・児童クラブ等の子育て施設エリア、売却エリアに分け、活用計画が作成された。それにより、余土中学校旧校舎の内、昭和61年度(平成29年度で31年経過)に新耐震基準で建築されていた鉄筋コンクリート3階建てを、保育園・児童クラブ等の子育て施設として利活用することとなった。旧校舎の改築総事業費は約3.5億円。延床面積2,189㎡、㎡当たり単価約156,000円。3つの施設に要した費用内訳は、保育園1.8億円、児童クラブ0.9億円、センター0.8億円。耐久年数は、RC造建物を60年とすると、耐用年数は残り29年であるが、今回の改築で延伸すると考えている。

【3つの施設の配置図】

基礎や躯体等の構造部を活かすことで軽減できた費用を、非構造部である内装や設備等に余裕をもって投入することができた。その結果、保育と子育て支援・総合相談環境の充実が実現した。

例えば、保育園の遊戯室は3階にあるが、園児が階段を自力でのぼれるための手すりを設置することで、子どもの自ら成長する力を引き出すような工夫をしている。また、旧校舎の広い廊下によって保育環境をゆったりとしたものとなり、安心感とともに保育のしやすさにつながっている。

 

三豊市の政策方針の根幹である「遊休施設の有効利活用」と「財政健全化」に沿った山本地域就学前施設建設計画は、大野小学校旧校舎を活用することによって、実現可能であるという確信につながる研修でした。

 

 

第3回永康病院調査特別委員会

5月15日(月9に開催した第2回の永康病院調査特別委員会から2か月近くになった7月12日(水)に、第3回の委員会が開催され、永康病院から平成28年度の経営実績及び施設整備の考え方と、調査状況の報告がされました。

 

●現在の病棟(157床━許可病床199床)

1病棟(一般病棟):平成28年度より42床を休床しており50床

2病棟(精神科病棟):59床

3病棟(療養病棟):48床

●平成28年実績

外来   一日平均約180名

入院   一日平均約81名(病床率:約52%)

●これまでの取り組み

医科大学への医師派遣要望や、病床数の削減による人員の配置換えと看護基準のアップ、訪問看護ステーションの開設などを行ってきた。

●これからの取り組み

医科大学への医師派遣要望をを継続するとともに研究講座の開設協議や、診療体制の変更を行う。

●施設整備の考え方

施設環境、事業費、整備期間、病院規模、運営影響、交通アクセスを踏まえ、抜本的な整備方針(建設場所等)も併せ検討する。現在、(株)自治体病院共済会に調査委託し、地域の医療需要をはじめ、新病院の健全経営計画・規模・機能などの整備基本調査の策定を進めている。(6月1日~10月31日の期間)

 

委員会の今後の動きは、8月7日(月)に伊関友伸(ともとし)先生の研修会を開催します。また、8月24日(木)と25日(金)の2日間で、常滑市民病院と下呂市立金山病院の視察研修を予定しています。整備基本調査の結果が出されるころまでに、地方の自治体病院の事例や人口減少高齢社会の地方の医療のあり方について、基礎情報の収集に努めたいと考えています。

 

民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・3

民生常任委員会の行政視察研修報告の最後は、山口県周南市における「もやいネットセンター推進事業について」です。

 

周南市は、平成15年に徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町の2市2町合併により誕生した。山口県の東南部に位置し、人口147,000人程、面積656.29㎢で、北は中国山地から南は瀬戸内海を臨んでいる。北部にかけ丘陵地が広がる農山村地帯であり、海岸線に沿って古くから大規模コンビナートがあり、国内有数の大企業の工場地帯として発展してきた。

もやいネットセンター推進事業は、平成25年に『もやいネットセンター』を地域福祉課内に設置したことから始まる。そのミッションは、 ”共に「支え」「つなぎ」「守る」をモットーに、高齢者をはじめ全ての人を「支え」、必要に応じて、関係者や関係機関と「つなぎ」、高齢者等を「守る」、様々な活動を支援” とした。この取り組みを、平成28年から、相談内容を各課につなぐ総合相談の役割と、高齢者の見守りの役割へと発展させ、福祉の《総合相談窓口》としてスタートした。

『もやいネットセンター』の業務体制は、保健師・社会福祉士等の専門職4人を含む7人だ。相談は24時間電話対応することにあわせて、平日の日中はセンターで、平日の夜間及び土・日・祝日の終日は、民間事業者委託している。相談実績は、平成25年の『もやいネットセンター』設置時には1,450件/年程であったのが、平成28年度では2,200件/年を超えており、増加傾向にある。

もやいネットセンター推進事業は、3つの業務によって展開されている。

【もやいネット支援事業者】  平成25年に登録事業者数目標を100件としており、現在67件が登録している。電気・ガス等のライフライン事業者や地域巡回事業者に加え、年を追うごとに人が多く利用し集まりやすい事業者や、交通運輸関係事業者の参加が増えている。

【もやい徘徊SOSネットワーク】  もやいネットセンターへ徘徊情報の提供があった際、ネットワークの参加者に情報提供し、捜索への協力を依頼。 ①「しゅうなんメールサービス」への登録者は、約8,600人 ②「事前登録制度」に行方不明になる可能性のある人の登録は、46人

【もやいネット地区ステーション(地域の見守り支え合い拠点)】  社会福祉協議会にあり、31地区、「地域コーディネーター」37人が配置されており、訪問活動等を展開している。「地域コーディネーター」の役割は、地域の見守り支え合いネットワーク活動の調整役として、”安否確認” ”生活課題を早期発見、関係機関に円滑につなぎ早期対応” ”孤独感の防止” のため活動している。

もやいネットセンターを中心とした周南市の相談支援体制は、●もやいネットセンター(福祉総合相談窓口) ●いきいきサポート地域包括支援センター(地域の身近な総合相談窓口) ●31地区のもやいネット地区ステーション(地域の見守り支え合い拠点 の3層体制の連携強化とともに、民生委員・児童委員や福祉員などの地域の見守り関係者や、警察・消防・医療福祉施設など、地域のつながりが点から面となるような体制構築を目指している。

 

周南市の高齢者の現状は、65歳以上の一人暮らしが6,700人、75歳以上の二人暮らしが2,000世帯であり、より一層のきめ細やかな体制づくりを急いでいるようです。本年度より、周南市が全国に向けて発信するシティプロモ―ション「周南市(しゅうニャンし)」に便乗し、ネコをモチーフにした【もやいネット支援事業者 高齢者の見守り活動 に協力しています】マークを支援事業者の営業車に表示してもらうというユニークな手法で、見守り活動を日常的に推進していく取り組みを始めています。

周南市のもやいネットセンター推進事業は、これまでの5年間計画的に取り組まれてきました。高齢者をはじめ全ての人が安心して暮らせるよう、ネコが路地裏に入っていくごとく、市内の隅々まで目が届き支援の手が差し伸べられるような活動を目指していることを、確認することができたともに、制度をつくることにとどまらず、実効性のある活動に展開するなど、見習うべき点の多い研修でした。

以上で、民生常任委員会行政視察研修報告(平成29年)を終わります。

民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・2ー②

「がん検診向上の取り組みについて(検診すすめ隊等)」

境港市のがん検診受診率は、国内で最も受診率が低いといわれている鳥取県内においても、受診率ワースト1だ。境港市で、平成23年~27年の5年間にがんで死亡した人の割合は、全国を100として、胃がん123.9、結腸がん136.8、直腸がん124.8、肺がん122.0、乳がん112.4、子宮がん212.3で、すべてのがんにおいて全国平均を上回っている。この状況を改善すべく、平成26年度から29年度にかけ、受診率向上策に取り組むこととした。

がん検診受診率向上対策として、個人負担金の軽減や休日検診の拡大、受診会場の拡大等の、受診しやすい環境づくりとあわせ、継続受診のPRにも力を入れてきた。主な取り組みは、とりだい(鳥取大学)メディカルセミナーや境港医師協会と連携した講演会、検診すすめ隊の結成等がある。

検診すすめ隊の結成は、身近な人に勧められたことによって受診した割合が多かったことによる。隊員になった住民と関係機関に830個のオリジナルバッジを配布している。

環境づくりや継続受診PRの多様な取り組みの結果、すべてのがん受診が県平均に遜色ないレベルまで向上してきた。

 

検診すすめ隊の効果は、大きなものがありました。私の考えるその理由は、検診を勧めてくれる身近な大切な人と、いつまでも健康で幸せな生活をしたいとの思いが、そうしたに違いなのです。目標や生きがいを共有し、いつまでもともに楽しく、生きた証を積み重ねていきたい、と思えるようなまちにしなければ何のためのがん検診向上なのか。そんな考えを、改めて深めるきっかけとなった研修でした。

 

民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・2-①

民生常任委員会の行政視察研修で、2件目に訪問した鳥取県境港市の報告をします。「自死予防対策について(いのちとこころのプロジェクト等)」と、「がん検診向上の取り組みについて(検診すすめ隊等)」の取り組みです。

 

境港市は、鳥取県北西部に位置し、三方が海に開かれた自然条件であるため、古くから港を中心に発展してきた。人口34,000人余、面積29.10㎢のこじんまりとしたまちでありながら、日本海の豊富な水産資源に恵まれ、漁港が整備されるとともに海運による物流の拠点として、存在感を示し続けている。近年、観光において、当市出身の水木しげるに因んだ『水木しげるロード』によって、県内でも有数の観光地として「さかなと鬼太郎のまち境港」を全国発信している。

〇「自死予防対策について(いのちとこころのプロジェクト等)」

いのちとこころのプロジェクト事業は、国の自死対策強化事業が始まるにあわせ境港市においもて年間平均10名程度の自死者があったことにより、平成24年度にスタートした。この事業のポイントは ●自死(自殺)予防として思春期に着目した取り組み ●教育(学校)部門と保健福祉部門が共同して実施 で、平成24年度~26年度の3年間を1期、平成27年度~29年度を2期とし、現在進行中である。1期目は、子どもと関係機関による ”実態把握” ”情報共有” ”啓発” に取り組んだ。2期目は、子どもと保護者による ”ネットワーク” ”情報フィードバック” ”ひみつきち” の具体活動に取り組むこととしている。

1期目の取り組みとして、最初に実施したのが40歳未満のこころの病気を持っている人に対する聞き取りだ。子どものころを振り返ったものとして ●相談できる人がいなかった ●誰かに気付いてほしかった ●不安感を抱えていた ●できない自分が嫌いだった 等が多くあった。このことから、子どものころの気持ちや経験が、大人になってからの生きづらさに影響しているのではないかという推測ができた。

対策として、市役所関連部署(保健・医療・福祉・学校教育)及び関係機関(障がい福祉サービス事業所・医療機関等)による、思春期からの取り組みを検討することとなった。これが、いのちとこころのプロジェクト事業になった。目的を『生きづらさのある子ども(大人)を減らそう』と定め、 ➊自分の気持ちを自分でキャッチできる(気付く力) ❷自分の気持ちを言葉で人に伝えることができる(伝える力) ❸聞いてくれる人(支える地域)ができる ができる仕組みを作ることとした。

2期目の取り組みとして、小6生に実施したアンケート結果から ●悩んだときに話せる人、ほめてくれる人として親が一番多い 反面●悩みを話せる人はいない(6.9%)、ほめてくれる人がいない(3.1%) があった。このことから 〔子どもが自分の思いを表出できることが大切〕 〔子どもの話を聞いてくれる人、相談にのってくれる人、ほめてくれる人がいてくれることの大切さ〕 が欠かせないことが分かった。

このような環境をつくるためには、学校、保護者はもとより、地域を巻き込んだ取り組みが求められる。その方法として ①「だんごの串を通す」ように子どもの成長の情報が切れないようにすること(特に中学校から高校の間) ⓶「理解者を増やす」ために【こころの応援団を広げる会】を立ち上げ(平成27年度) に取り組んでいる。現在進行中の活動として ➊自分の気持ちを自分でキャッチできる(気付く力)→小6アンケートの継続 ❷自分の気持ちを言葉で人に伝えることができる(伝える力)→母子保健事業(赤ちゃん登校日・いのちの学習会) ❸聞いてくれる人(支える地域)ができる→【こころの応援団を広げる会】で検討 の中から、「子どもの居場所が必要!」に行き着いた。特に、【こころの応援団を広げる会】では、スーパーバイザーである東京国際大学の松本教授の助言をいただきながら、子どもの居場所の必要性に対して、《ひみつきち》をつくる計画が進められている。

 

子どもに限らず私たち大人も、心がつらくなった時に、自分の気持ちを話せる、聴いてくれる人の存在は大切です。そんな人がそばにいてくれることや、隠れ家のような《ひみつきち》があることで、心の安らぎを覚えることがあります。そんな居心地のいい地域づくりの原点を、学ぶことのできた研修でした。

 

民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・1

三豊市議会民生常任委員会の行政視察研修の報告をします。

九州に大災害をもたらした前例のない猛烈な豪雨の最中である平成29年7月4日(火)~6日(木)に、被災地の惨状に思いをはせながらの研修となりました。今回の研修で訪問したのは、岡山県新見市、鳥取県境港市、山口県周南市の3か所です。

最初に訪問した、岡山県新見市における「哲西認定こども園について」の報告をします。

 

新見市は、岡山県の最西北端に位置する中国山地にあり、鳥取県と広島県に接している。人口30,000人余、面積793.29㎢で、岡山県の11.2%を占めているが、ほぼ全域が山間地であるため、耕地はわずか5.8%程だ。平成17年に新見市と大佐町、神郷町、哲多町、哲西町の1市4町が合併し、新たな新見市となった。

旧哲西町であった哲西地域は、人口2,500人弱で65歳以上人口は1,100人余で、高齢化率44%をこえる過疎と高齢化の進行している地域だ。

哲西認定こども園は、新市となった2年後の平成19年に、県内2番目となる認定こども園として設置された。平成25年に施設の老朽化や立地の悪さから、移転の要望があり、合併後新見市の哲西支局となっている旧役場であった複合施設を、96,000千円の総事業費で改築し、平成27年に現在の場所へ移転している。

この複合施設は、「きらめき広場・哲西」といい、旧哲西町の総合整備計画により、総事業費21億75,000千円余で平成13年に完成したものだ。この中に設置された施設は、新見市哲西支局他、生涯学習センター、文化ホール、図書館、保健福祉センター、内科診療所、歯科診療所、ATM(農協)がある。そして、隣接地にある道の駅「鯉が窪」と一体化することで、保健・医療・福祉・文化・教育・行政に止まらず、食事や買い物、くつろぎの機能を併せ持った、地域拠点施設となっている。

哲西認定こども園の施設概要は、延床面積867.77㎡、定員0歳児~5歳児の50名。その他、調理室(51.44㎡)、屋外遊戯場(740.00㎡)、相談室、多目的室等を備えている。

移設後の園児及び保護者、地域の反応は、「きらめき広場・哲西」内にある子育て広場で地域の子どもたちと一緒に遊んだり、支局職員や診療所の実習中の学生などと交流する機会が多くなった。図書館の絵本等を身近に借りることができるようになった。支局、図書館、診療所、文化ホール、子育て広場等の住民サービスが集約されたことで、保護者にとっても安心で便利であるとともに、乳幼児から高齢者までが集うことができ、地域活性化の拠点となったことを喜んでいる。 *この地域は伝統的に、住民による自主的な生涯学習や地域活動が活発であったため、公民館の設置はない

 

哲西町の先人たちの先を見る力量に感心しています。目の当たりにした診療所の活況に、この施設が地域住民の生活の支柱になっていることを実感したからです。遊休施設の有効利活用には、その地域の置かれた現状と将来への展望を見据えた、複合的な熟慮が欠かせないことを再認識したとともに、少子高齢・人口減少社会に、地域拠点とともにある認定こども園は、かくあるべしを学んだ研修でした。