令和7年第1回定例会 一般質問・2

2件目

ファイナンス機能を有する組織の創設という、組織改革による意識改革について

 

問   三豊市の財政事情を考えるとき、納税業務を含めた歳入と歳出を一元管理する意識が必要と考える。今は市税は市民環境部、財政は政策部、公有財産は総務部に分かれている。そこで、会計管理者のかかわり方も含めて、財政運営において歳入確保とその運用の関係性の重要さを認識するファイナンス機能を有する、理財を担う組織創設による意識改革によって、行政の事務事業運営の意識改革につなげることを提案する。

 

答   税務部門、財政部門、管財部門については、自治体によっては理財部等の名称で同一部局の所管となっている事例があるほか、総務部の中に3課が、税部を除く2課が配置されている場合もある。

本市の現状を踏まえると、組織改革による組織全体の意識改革につながり、財政面で好影響が生まれるのは難しいと考える。しかし、提案の趣旨については同様の意識を持っている。

 

問   今回の初めての提案で、三豊市の行政機構組織が変わるとは思えないが、将来的に行政機構を考えるときに、基本的な三豊市の行政運営の理念や、考え方、姿勢が組織に表れるのではないか。

理財とは「金銭財物を有利な結果を得るよう取り扱うこと」となっている。まさにファイナンス機能の根幹を担う役割となる。

あるマーケターの著書に「組織とは一人ひとりの能力を引き上げる装置だ」とある。一人でいるときよりもはるかに大きな力を発揮する、それが強い組織で、それこそが組織をつくる意義だとまで言っている。当市の現状とこれからの財政状況を考えるとき、マンパワーの最大活用が求められ、そのための組織の在り方について考える必要があると考える。

ファイナンス機能とは、組織を動かす血液ともいえるお金を管理するための一切の動きのことだ。血液の巡りをよくする組織を創設してはどうかというのが私の提案だ。気が付いたら市の財政のことを誰もが意識している、そんな意識改革となるような組織改革に着手する価値はあると考える。

今後組織改革を検討するに当たっては、この提案を留め置いていただくとともに、組織とは一人ひとりの能力を引き上げる装置であるという視点をもって取り組んでほしい。

 

答   職員一人ひとりの能力を引き出すことがより良い行政サービスにつながっていくので、今後の組織改革に当たっては、その観点にも留意していく。

令和7年第1回定例会 一般質問・1

三豊市議会3月議会の一般質問では、2件の質問をしました。

1件目

太陽光発電システムの課税について

 

問   太陽光発電システムは二酸化炭素を排出しないクリーンな発電方法で、三豊市が目指す脱炭素社会の実現にも大きく寄与する発電方法だ。

民間では、屋根などの余剰スペースや遊休地を活用できることや、借入金の償還が立てやすいことと、工事が手軽なこと等で、10kW以上の産業用の太陽光発電システムが多く設置さてている。

太陽光の出現は新たな産業となり、地域経済に効果があったと思う。一方で、産業用のシステムは課税対象になるが、納税義務を怠る悪質なケースも多くあると聞く。真面目に納付している市民や事業者が損をしているようなことがあれば、あまりにも不公平であり、行政の信用そのものが失墜する由々しき事態である。

不公平の解消について、これまでの経緯や現在どのような取り組みをしているのかを問う。

 

答   今年度に入り(R6年度)課税状況について大規模な調査を実施した。その結果、10kW以上の設置届数は、法人が260社、個人が517者の計777者だった。法人260社についてさらに申告の有無を調査したところ、法律の義務付けられている申告をしていない法人は140社であり、率にして54%と、実に半数以上に上ることが判明した。

この事実を受け、未申告の法人140社に対して申告を促し、最大5年間さかのぼって課税を始めた。新たに課税した額は9,601万8,600円だった。この額は全償却資産の当初予算額の10.8%に当たる大きな額だ。

固定資産税は他の税と異なり、何年も先まで影響する税だ。増収となった固定資産税の今後の10年間の収入見込み額は、合計で約1億161万円に上り、今年度課税済みの額と合計すると約1億9,762万円の増収となる。

 

問   個人所有とはいえ不公平の解消という意味では何ら変わらない。個人所有の実態や課題、対応方針について問う。

 

答   個人所有の太陽光発電システムは、10kW以上の設置者517者のうち、申告数は77者、未申告者数は440者で、適正に申告しているのはわずか15%だ。対象となる件数も法人の3.2倍になるのでマンパワーが必要だ。法人所有は会社の資金から納付するのとは異なり、個人所有は家計からの支出となるため、法人以上に丁寧な説明が必要となる。公平性の観点から適正な課税の取り組みを拡大しなければならない。

 

問   個人所有の85%が未申告という実態は、15%の真面目な納税者からすると不公平感極まりないと思う。

固定資産税は性質上、一度課税すると何年も先まで影響するので、早く取り組めば組むほど多く税収が得られるのだから、マンパワーが必要であるならば次年度から直ちに職員を増員してでも不公平感を解消し、法人のように増収につなげていかなければならない。今年度法人に課税したように個人に拡大した場合の増収見込み額を問う。

 

答   経済産業省の資料を分析したところ、課税対象者は190者ほどで計算すると、令和3年度から令和17年度までの合計で、約1億200万円の増収となる見込みだ。

 

要望  取り組みにはマンパワーが必要であるならば、次年度から直ちにその体制を整えるべきだ。早急な組織強化によって、不公平の解消に着手することを要望する。

議会運営委員会行政視察研修 報告・Ⅲ

浜田市議会では、「主権者教育の取り組みについて」と「議会基本条例の見直しについて」、「議会による事務事業評価の取り組みについて」の3点を研修しました。

 

先ず、主権者教育の取り組みは、議会広報公聴委員会の活動として展開されている。委員会の2023~25年のスローガンは ‟ミライへつながる議会” だ。市民の声を聴き政策に反映させるための情報収集活動として ①はまだ市民一日議会 ②議会報告会 ③意見交換会 ④ぎかいポスト がある。また、収集した情報をどう扱ったかを知らせる情報提供活動として 1⃣議会だより 2⃣議会だよりmini 3⃣浜田市議会HP 4⃣YouTube がある。

『はまだ市民一日会議』は、令和元年犬山市議会市民フリースピーチ制度を視察し、令和3年度から開催してきた。会場を市議会議場として、定員10名、発言時間一人5分、議員からの質問5分、発言への対応は全員協議会で議員全員で協議した後、議長名で発言者へ報告(HPにも掲載)。

1回目の令和3年度は定員を超え18名の応募があり、全員を発言者とした。2回目の令和4年度は定員の10名に絞った。3回目の令和5年度は2回目にモレた応募者を追加した。

成果は ●議会への関心が高まった ●広い世代からの意見を議会へ伝える場が増えた(主権者教育の一環) ●発言が施策に反映された ●発言から議員連盟が設立された ●マニフェスト大賞で評価された ●YouTubeでの配信をすることで多くの方が見ている などがある。

『議会基本条例の見直し』は、当条例の規定にある「議会は、一般選挙を経た任期開始後、速やかにこの条例の目的が達成されているかどうかを議会運営委員会において検討するものとする。」としており、新人議員を含む全員で協議を行い、「見直し検討ワーキング会議」を立ち上げ見直しの概要をまとめる手順となっている。

『議会による事務事業評価』は、令和6年度に施行実施に取り組んだ。導入の経緯は、徳島県小松島市議会、那賀町議会へ視察し、決算審査で試行でやってみることとなった。

試行の流れは、⑴3常任委員会による評価事業選出 ⑵決算審査での質疑による選出事業の深堀 ⑶全議員が事務事業評価シートを提出 ⑷3グループに分かれ評価シートをもとに評価意見書を作成 ⑸議長を除く全議員で各グループが作成した評価意見書の内容を確認 ⑹試行でやってみた感想などのアンケート聴取 となっている。評価の際に注目すべき視点は、ア.市民ニーズ イ.市民参加、共同の有無 ウ.市が実施する必要性 エ.費用に見合った効果 オ.目標の達成状況、全体予算のバランス がある。

ここまでの取り組みで注意するべき点として ①全議員の理解 ②執行部を巻き込むために要協議 ③試行は大切 ④徹底的にパクる部分とオリジナルな部分のバランス が見えてきた。

 

議会による事務事業評価の導入の目的を再確認すると、「議会の事務事業評価と決算審査を次年度の予算編成に生かすことより、議会の監視機能を強化し、課題の共有と事務事業の改善(適正化・効率化)を図ること」であることが、明確に認識されており、私たち議会においても改めて導入の目的の根幹となるところを見つめ直さなければならないと気づいた研修でした。

議会運営委員会行政視察研修 報告・Ⅱ 

大竹市議会では「常任委員会政策研究会について」と「議会報告会について」「SNS運用要綱について」の3点を研修したました。

先ず、常任委員会協議会及び政策研究会の設置目的は、議員間討議を拡大するためで、本会議及び委員会で議員相互間において十分な討議を行い、議論を尽くして合意形成するために、その経過及び結果について市民への説明責任を十分に果たすためだ。

「常任委員会協議会」は、常任委員会の所管事務に関し、協議または調整を行うため、執行機関からの説明もしくは報告を求める必要があると認められる場合に常任委員長が招集している。具体的な議事の内容は、市の実施する事業等の計画・方針の説明と情報提供を受け、それに対して質疑、意見し協議を行っている。令和6年は14回の開催をしており、全文記録している。

「常任委員会政策研究会」は、常任委員長が必要に応じて招集しており、執行部が実施する事業等に関連する調査研究を目的として、議員相互間のひざ詰めでの討議を中心に運営されている。令和6年は18回開催されており、要点筆記している。

次に、議会報告会は『大竹市議会議会報告会実施要綱』を平成26年9月に制定し、平成27年2月に第1回議会報告会を実施。その後、年に1回程度、報告会を実施している。会の時間配分は議会からの報告は極力少なくして、多くを市民との意見交換に充てている。

市民から寄せられた意見や要望、質問は、議員全員で対応を協議し、執行部へ回答を依頼する場合もあり、それをもって市民への回答としている。なお、回答は市のホームページへ回答を掲載することとしている。

令和6年は、新人議員が各団体に声をかけ、市内で活動する団体対象の議会報告会をするなどして、参加しやすい議会報告会に取り組んでいる。

最後に、SNSを活用した議会情報の発信は、SNS運用要綱を定め効果的に活用するための体制整備に取り組んでいる。

『大竹市議会SNS運用要綱』では、(趣旨)として議会基本条例に基づき、SNSを効果的かつ安全に利用するにあたり、必要な要綱を定めるものとするとしている。(利用者の遵守事項)で、利用者のページ利用に際して、12項に及ぶ禁止事項を定めている。他、(違反に対する措置)(利用者からの情報についての免責)(知的財産)(個人情報の扱い)が盛り込まれている。

この要綱は、令和6年3月25日から施行され、令和5年1月16日から適用されている。

 

今まさに取りざたされている、SNSにおけるフェイク情報への対応はどうなっているのでしょうか。次回に持ち越しの課題となりました。

 

議会運営委員会行政視察研修 報告・Ⅰ

三豊市議会議会運営委員会の行政視察研修を令和7年1月21日(火)~23日(木)の3日間実施しました。研修先は、21日に広島県三次市議会、22日に同じく大竹市議会、23日には島根県浜田市議会でした。

 

三次市議会では、「予算決算委員会について」と「主権者教育の取り組みについて」、「議会基本条例の検証について」の3点を研修した。

先ず、予算決算常任委員会の設置の経緯は、常任委員会を単位とした分科会での審査では、自分の所属する分科会の内容しか分からないことや、全体的なことや歳入についての審査が難しいことがあったためだ。

議会改革の取り組み項目の一つとして議会内で協議し、平成23年3月定例会に特別委員会の通年設置を1年間試行した。平成24年9月定例会に予算・決算特別員会を常任委員会化した。令和2年9月定例会から、事業別審査シートの導入により審査資料の充実を図り、決算審査から予算審査へ「ツナゲル」を実践している。

次に、主権者教育の取り組みは、参加者の固定化や女性や若者の参加が少ないため、幅広い意見や提案が十分聴衆できないという議会報告会等の課題があった。そこで、選挙権年齢が引き下げられたこともあり、高校生と意見交換会を行うことで新しい発想、意見を取得できるのではないかとの意見があった。

三次市には3つの県立高校と1つの県立中学校があり、それぞれの教育カリキュラムに即した開催を行った。意見交換会では、政治参加について ①議員になるにはどうしたらよいか ②議会の仕事は何か 等の意見が交わされた。

現状、ここでいただいた意見や要望について、一般質問に生かしているものの執行側への提言にはいたっていない。

最後に、議会基本条例の検証について。三次市議会では平成22年3月に条例制定している。平成27年度に全条文について達成度を内部評価した。これまでの間検証の取り組みはなかった。

平成30年度、前の内部検証の評価に対して外部評価(環太平洋大学教授)を受けた。この外部評価において 「三好市議会が果たす最大の役割は、議会基本条例にも定められている『市民福祉の向上及び市政の伸展』であり、任期4年の最後には、より上位の視点から、議員、議会は、自らどのように実践してきたのか、その検証が肝要である」との指摘を受ける。

令和4~5年度にかけ、議会基本条例に掲げる議会、議員活動について検証を着手した。初めての試みであった「議員活動:選挙公約実現に向けての活動の自己評価検証」は、全議員が理解不足のまま取り組んだため、個人の議員の評価検証の視点がバラバラとなり、成果の出ないまま終了してしまった。

現在の取り組みは、前の取り組みの反省を踏まえ「議会改革プラン実施計画」の基本理念をベースとして、個々の議員が公約実現に向け、いかに取り組んできたかを自ら検証することを目標としている。

 

すなわち、議員個々のマニフェストの検証であることより他はないと感じた研修でした。

令和6年第4回定例会一般質問・2

2件目は「オーガニックビレッジ宣言と出口戦略について」です。

【質問】

オーガニックビレッジ宣言を発出するにあたって策定された有機農業計画で、有機農業のおかれた現状として「流通は系統外流通、場合によっては市場外流通となり、販路も生産者自らが開拓せざるを得ない状況」であることが示されている。この事業着手時点から作物の出口の問題があることは認識された課題となっていた。

三豊市の独自性ともいえるバイオマス資源化センターみとよを活かした、オーガニックビレッジ実現に向けた取り組みの現状と、出口戦略の現状と見通しについて問う。

【答弁】

今年(R6)3月にオーガニックビレッジ宣言を発出し、昨年度に引き続き、国のみどりの食料システム戦略推進交付金を活用して、有機農業産地づくりを進めている

①生産関連の取り組みは、有機農業を目指す新規就農者や慣行農業から転換を希望する方を対象として土づくりセミナーを開催し、農業者の拡大を目指している

②加工・流通関連の取り組みは、西讃農水産物商談会に出展し有機農産物の販路拡大を進めている また、市内運送会社との連携も目指している

③消費関連の取り組みは、東京有楽町で開催されたシティプロモーションイベントに出展し、生産農家自らが有機農産物のPRを行っている

出口戦略の取り組みの状況は、県内の民間病院で、「食べておいしく体に優しい食材で健康サポート」したいとして、年明けから市内の有機農産物を取り扱うこととなっている。また、高松に店舗を有するオーガニック食材取扱店『春日水神市場』が丸亀店をオープンするとのことで、取扱量の増加を目指している。

バイオマス資源化センターみとよ等の微生物の力による堆肥化は、堆肥原料の地域内調達や循環、また耕畜連携やみどり認定の取得といった環境に優しい取り組みとして、本市の作物の付加価値となることから、今後も積極的に推進していく。

 

以上で、一般質問2件の報告を終わります。

 

 

 

 

 

令和6年第4回定例会一般質問・1

第4回定例会では2件の質問をしました。2回に渡って報告をします。

 

1件目は、「豊中町本山地区の治水対策について」です。

【質問】

豊中町本山甲百合田地区では、商業施設の立地、国道11号線及び県・市道の拡張または昨今の大規模な住宅開発により、農地が大幅に減少するなどの環境変化に起因し、既存の用水路に流入する雨水や生活排水が増量し、しばしば浸水被害が発生している。特に台風の豪雨にはその被害が大きく頻度は高まっており、地域住民の自助努力では対応できない状況になりつつある。今後、さらなる大きな災害発生も危惧されるため、地域住民が不安を抱くことなく、安心して生活していくための状況改善が急務と考えられる。そこで、多面的な政策効果の期待できる方策として、遊水地を設けることによる治水対策の提案をする。

一つ目は、防災としての治水対策によって、住環境が良くなることによる地域住民の安心安全の確保。

二つ目は、現状管理不十分の隣接民有地の一部を遊水地とすることにより、新たな企業誘致にも活路が開けるという産業振興の可能性。

三つ目は、これまで借り手のなかった農地が優良農地となり、農地保全の道筋がつく。

というものだ。以上のような三方良しの政策展開の考えを問う。

 

【答弁】

豊中町本山地区については、台風や近年の降雨量の増加を起因とした大雨により、水路から水があふれ、たびたび浸水被害が発生していることは承知している。被害回避の対策を検討するため、令和元年度に本山地区排水対策調査業務を実施し、具体的対策を検討するための基礎資料を作成している。調査報告では、現状の水路断面の不足が指摘されているが、農業用水路としては、過不足なく利水されているため、受益者負担も発生することから、農業用水路を拡幅することは困難な面があるとされている。

一方、下流域の市河川である加奈子川は、河川護岸の老朽化から現在改修工事を計画中であり、河川の拡幅や護岸のかさ上げなどの改良工事を進めて行く予定だ。

また、県河川である竿川や財田川については、県に対して河道掘削による流水面積の拡大などの協議や改修要望を行っていく。

さらに、地元自治会からの要望のあった貯水池などの検討も行う。

議員提案の遊水地については、整備されれば十分な治水効果が期待され、浸水被害の軽減につながると考えている。また、管理不十分な土地を遊水地として利用することによる住環境改善やそれに伴う企業誘致等におけるメリット。さらに、周辺農地の保全に道筋がつくことなど多面的な効果が期待できるものと考える。

遊水地の整備について、財源の確保を行うために整備内容に合致した国の補助金等の確認や要望を行いながら幅広い視点で検討を行っていく。

 

1件目の質問の報告を終わります。

 

地域医療情報交換会

地域医療政策セミナーを受講した翌日は、埼玉県蕨市議会会派新翔会と地域医療の核となる市民病院建設についての情報交換を行うため、蕨市役所を訪問しました。

 

蕨市は埼玉県の南部に位置し、5.11㎢の市域の中に75,000人が暮らす日本一人口密度の高いまちだ。近隣の市に複数の病院がある中で、老朽化した市立病院の建て替え計画が、存廃も含めて検討されている。

現在の病院は、外来診療として 内科、小児科、外科(皮膚科)、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科があり、病床数は130床となっている。

三豊市立みとよ市民病院と類似した規模であることから、公立病院の役割と機能を備えた施設とはどのようなものか、及びその建設手法について情報交換を行った。

 

『CM方式及びECI方式のメリット・デメリットは』

CM方式

【メリット】 ●病院発注の場合、技術者不在であるためマイナス面をカバーする  ●精度の高い基本計画に基づく概算工事費の積算による、ローコスト建築が可能 ●コンパクトな建物形状でシンプルな矩形の建物 ●実績に基づくきめ細かな支援によるプロポーザル審査の実施で、最適な設計者・施工者の選定 ●基本計画から開院までの工期短縮

【デメリット】 ○CMに対する新たな費用が発生 ○CMの技量によって左右される

ECI方式

【メリット】 ●設計者と施工予定者の協働により実施設計を行うため、予算額内でできる ●基本設計中に施工予定者選定の準備が進められるため工期短縮ができる ●基本設計に対して施工予定者の保有技術により、コストの低減が図れる ●施工予定者は、必要な資機材やその時期が把握できるため、安価な時に押えれるなどコストの低減につながる

【デメリット】 ○施工予定者を選定するプロセス(プロポーザル等)が複雑になり、発注者の負担が増え有識者の助言が必要(そのためのCM) ○設計者の業務範囲と施工予定者の技術協力の範囲が重なる部分があるため、事前に役割分担を明確に ○コスト低減は図れるが、結果として施工予定者1社からの工事費の見積もりになる

 

『施設整備に当たり特に配慮する点』

① 工事を予算内に収め、ローコストでハイクオリティな施設とする

②診療の流れに沿った部門構成や、コンパクトで機能性を考えることで、無駄をなくし効率的で使いやすい施設とする

③免震構造で地震災害に対する安全性を高め、災害に強い施設とする

 

蕨市議会会派新翔会は9名の会員を有する第1会派です。内4名が新人議員であり未来の地域医療の観点に立ち、市立病院の在り方を熱心に調査研究しています。今回の情報交換会をきっかけに、さらなる地域医療政策の学びを深めていきたいと考えています。

 

 

 

「地域医療政策セミナー」研修報告

令和6年(2024)10月30日(水)、東京都都市センターホテルで開催された、全国自治体病院経営都市議会協議会主催の「第18回地域医療政策セミナー」に参加しました。

 

協議会会長の喜多浩一金沢市議会議長から挨拶があり、その後2件の講演を聴講した。

1件目は、厚生労働省大臣官房審議官(医政、口腔健康管理、精神保健医療、災害対策担当)(老健局、保健局併任)森真弘氏による「令和6年能登半島地震を踏まえて~災害時の医療体制構築と今後の地域医療維持、確保の課題~」の講演だ。

●自治体が災害が発生する前(平時)から医療施設等に備えて欲しいこと  ①避難に関する注意喚起を行う ②非常用自家発電設備(設備・燃料の確認等)、水や食料、医療資源等の備蓄状況の確認 ③医療機関の連携体制の構築・確認

●平時より地域の医療事情を知らねば、災害時に的確な支援はできない

●能登半島地震の後、これから  ①人口減少や高齢化の状況を加味した平時からの医療計画の実現 ②平時や災害時にとらわれない、地域のレジリエンス向上に向けた施策の継続

●災害医療の体制の見直し  ①DMAT・DPATの派遣や活動の円滑化や様々な保健医療活動チーム間での多職種連携を推進する ②災害時に拠点となる病院や他の病院が、その機能や地域における役割に応じた医療の提供を行う体制の構築 ③豪雨災害の被害を軽減するため、地域と連携して止水対策を含む浸水対策を進める ④医療コンテナの災害時における活用を進める

●災害拠点病院について  災害時に多数発生する傷病者、被災した医療機関の入院患者に対して、災害拠点病院を中心として、被災地内外の医療資源を活用できる医療提供体制の整備

●災害医療コーディネーター  医療コーディネーターとの連携、DMAT等の医療チームの派遣調整を実施する人材

●広域災害・救急医療情報システム(EMIS)  基本機能として、医療機関基本情報と被災医療機関の緊急情報他を有する

●事業継続計画(BCP)  病院機能の損失をできるだけ少なくし、機能の立ち上げ、回復を早期に行い、継続的に被災患者の診療を行うための計画 ①病院等における耐震診断・耐震整備の補助事業 ②医療施設非常用自家発電装置設置整備事業 ③医療施設給水設備強化等促進事業 ④医療施設浸水対策事業 ⑤医療施設等の災害復旧に対する補助金事業

●地域医療構想について(今後の展望)  地域ごとに必要医療数を見直さなくてはならない。医療需要の変化:入院患者数は 、外来患者数は、在宅患者数は

●「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化

●医師の高齢化も進む

以上を包括した新たな地域医療構想については、2024年ごろを見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療介護等を含め、地域の医療提供体制全体の地域医療構想として検討予定

 

阪神・淡路大震災や東日本大震災に続く能登半島地震から導き出された、「救急医療と災害医療とはちがう。しかし、救急医療ができなければ災害にも対応できない」という視点での説明は、とても納得できる有意義な講演でした。

 

2件目は、まんのう町国民健康保険造田歯科診療所主任歯科衛生士の丸岡三紗しによる「県内一の過疎地域での挑戦!こどもも若者も高齢者も大事にするまちづくり~高齢者のためのお買い物ツアーや移動支援&児童館のないまちで取り組む子どもと子育て世代の居場所づくり」の講演だ。

香川県まんのう町琴南地区では、「人の健康を守るのは医療だけではない」を掲げて、医療関係者に民間を加えた在宅医療・介護の連絡会を設け、月一で集まってケース検討などを行っている。民間を入れることでフラットな運営ができることとなった。

ここでは「社会的処方」がフレイルの改善になることを活動の主眼に置いている。「社会的処方」とは、地域とのつながりを処方することで問題解決を図るというものだ。例えば、診察室で患者さんが「さみしい、日ごろ話す相手がいない」と言ったら「では、このサークルはどうでしょう」と地域の資源を紹介してその場で連絡を取る対応の仕方。

「健康を目的としたアプローチは本当の予防が必要な人には届かない」ということだ。

運転免許証を返納するとフレイル(虚弱)になるのか。足がないから買い物に行けなくなったストレスで痩せた事例が多くある。移動手段がないのは重要であることから、『週1で買い物ツアー』『無料通院バス(町からの補助)』を実施した。

唯一の中学校が廃校になる。そこを活用し地域住民が集えるコミュニティスペースを作った。需要は子育て世代にある。地元クリエイターと協力し、子育て世代のための居場所づくりを開始した。旧琴南中学校がみんなのコミュニティスペースとなった。今の時代の子育て支援に必要なことは「親御さんを楽にしてあげること」だ。

目の前の一人ひとりの困りごとを真剣に聞き、一つ一つ解決していく、その地道な積み重ねがまちづくりだ。

 

こんな近くに、こんなにクリエイティブでバイタリティのあふれた人がいたのに、気づいていなかったことに深く反省しています。「社会的処方」という視点は医療・介護・子育てなどの社会的課題を、地域資源をもって解決していこうとする、まちづくりの本質を射抜いています。市民ニーズと解決方法は、行政の中だけではない社会の中にあるという、当たり前のことを再認識させられた講演でした。

 

「地域医療政策セミナー」研修報告を終わります。

会派清風会視察研修報告(東北編)・2

会派研修の2件目は、岩手県盛岡市で開催された「第19回全国市議会議長会研究フォーラムin盛岡」の参加です。

大会テーマは「主権者教育の新たな展開」で、10月9日(水)と10日(木)の2日間の日程で行われました。

 

パネルディスカッションは、「地方議会の課題と主権者教育」をテーマに、コーディネーターを井柳美紀氏(静岡大学人文社会科学部法学科教授)が、パネリストに土山希美枝氏(法政大学法学部教授) 越智大貴(一般社団法人WONDER EDUCATION代表理事) 渡辺嘉久(読売新聞東京本社社会教育ネットワーク事務局) 遠藤政幸(盛岡市議会議長)で行われた。

コーディネーターから、全国都道府県・市・町村議会議長会で決議した『地方議会に関する地方自治法改正を踏まえた主権者教育の推進に関する決議』に基づく、主権者教育の推進の課題と方向性について示された。地方議会の課題として●投票率の低下 ●無投票当選の増加 ●議員の性別や年齢構成の偏り がある。推進の方向性は ◯議会に対する関心を高め、理解を深める主権者教育を一層推進する ◯出前講座や模擬議会など、議会自らが主体的に行う主権者教育の取り組みに対する支援を講ずる

パネリスト4名から ●「誰がための主権者教育か」を見つめ直すことが大切であり、議会が主権者教育をするべきか疑問がある ●政治や選挙・よのなかをおもしろく学びあい・みんなで創るシティズンシップ教育・主権者教育の研究実践と場づくり ●何が投票を促すのか。「政治とつながる」とは?「政治」は「未来」「政治とつながる」=「未来とつながる」「政治を考える」=「未来を考える」⇒「自分の未来を創造する」 ●盛岡市議会における高校生議会の開催によって市政の課題について意見交換し提言をまとめた。また、市議会が大学に「おでかけ」し、学生と意見交換を行う事業

 

課題討議は、「主権者教育の取り組み報告」として、コーディネーターに河村和徳氏(東北大学大学院情報科学研究科准教授)、事例報告者に白鳥敏明氏(伊那市議会前議長) 諸岡覚氏(四日市市議会議員:第83代議長) 服部香代氏(山鹿市議会議長)で行われた。

コーディネーターから、地方議会と主権者教育には総合学習的な発想が役に立つ。地域の課題を発見し、それを議論し、改善策を提言するサイクルが「政治」であるならば、地域の課題の棚卸をおこない、政策の進捗状況を調べることだ。

事例報告者から ●伊那市議会の事例として、若い世代、特に高校生に議会に関心を高めてもらうために、高校生の議会傍聴、高校生との意見交換等の企画を決定し実施した。成果として ①高校生からの意見・提案 ②意見交換に参加した高校生による請願の提出 ③高校生からの要望を執行部へ ●四日市市議会の事例として、「ワイ!ワイ!GIKAI」と名付けて高校・大学に出向いて出前型意見交換会や、生徒と議員の選挙ポスター作り、高校生議会等の実施 ●山鹿市議会の事例としては、なぜ小学校でのシティズンシップ教室に取り組んだのか。議論して最終的に意見を集約していく経験を子どもの時から経験しておくことが大事。企画から実施に至る検討と模擬投票の実践で大きな波及効果

 

「議会改革をしても投票率は上がらなかった」という四日市市議会の報告は、議会本来の在り方を考えさせられました。市民不在の改革では意味がないということであり、当たり前のことですが市民のための議会でなければならないということです。その取り組みは、それぞれの議会と市民との関わりによって形作られていくものなのだと感じた研究フォーラムでした。