令和5年第4回定例会一般質問報告

令和5年三豊市議会第4回定例会における一般質問報告をします。

「市民病院と地域産業(資源)の連携について」

質問   三豊市立みとよ市民病院は開院から1年半が過ぎた。今、国では、2024年度以降の医療・介護・障がい者支援のトリプル同時報酬改定が議論されている。自治体病院であるみとよ市民病院も、その都度、経営状態に少なからず影響を被る。市民病院が報酬額の増減により経営状態が翻弄されることのない独自の収益事業を、市の産業施策と連携して構想することで、なくてはならない自治体病院であることの存在感を示すべきときが来たと思う。

市民病院の存在価値を見つめ直すべきだと気づいたのは、次の理由による。「自治体病院経営において、総務省は一般会計を入れた後の経営収支の黒字を重視しており、税金投入ゼロを求めているわけではない」ということだ。それは、地方の自治体病院が都市と地方の税の格差を埋める再配分機能を有しており、住民の命を守る病院をつくり、医療者を雇用して、医療を提供することができるため、ほかの公共施設より意義が大きいからだ。さらに、病院や福祉施設は将来を見込める産業であり、産業振興の観点からも考えるべきである。

かといって、病院維持のためにルール分の税金を増やすことは、財政からしても納得のいくものではない。そうならないために、そこに病院があることの存在価値を活用した市民病院と地域産業(資源)の連携による経済活性化が図られ、そこで得られた収益が病院の経営支援に向けられるような取り組みができないかということだ。市民とともにある『みんな』の市民病院を核とした地域産業(資源)の連携による地域経済活性化と市民病院の健全経営に向けた取り組みの考えを問う。

次に、三豊市だからこそできる産業(資源)を活かした事業展開の検討をしてはどうか。3点について提案する。 ①地域観光資源やゲストハウス、スポーツ施設等を活かした医療ツーリズムの可能性。これまでの医療ツーリズムは、高度医療を求めた海外からの富裕層中心のものであるが、今後は、求める需要が一般化することによる健診と観光を兼ねた家族ぐるみの医療ツーリズムのマーケットの可能性があると考えられる。 ②摂食障害嚥下食をはじめとする薬用作物を取り入れた、薬膳の医療・介護食等の開発と提供。教育機関や民間事業者の協力による、患者の病状に応じた食材、メニュー開発を、薬用作物栽培を主要施策として推進する、このまちだからこそできる薬膳メニュー開発が考えられる。 ③ベーシックインフラ活用による、治療後の日常生活を支える事業展開。市はベーシックインフラ構築に向け、市民への直接サービスの展開に着手しているが、病院の【治す医療】はもとより、治療を終えた利用者が日常の生活に戻ってからの【支える医療】があれば、楽しい食事が実現するものと考える。

以上の3っの視点から、医療機関の存在価値を最大限に活用した地域活性化と産業政策の考えを問う。

 

答弁   みとよ市民病院は、地域に根差した病院として、市民の生命と健康を守るため、職員は患者の立場に立った病院運営に努めている。この地域になくてはならない病院として、退院後の支援や事業者との連携を考えていく時期に来ていると認識している。

市民病院を核とした地域産業の連携による地域経済活性化と市民病院の健全経営に向けた取り組みの可能性については

①医療ツーリズムは、今後、求める需要が一般化することになれば、観光などの周辺産業にも貢献するなど、経済的な効果も期待できると考える。現在、ふるさと納税の返礼品を活用した人間ドックを提案し、募集を進めているところだ。ほかの地域からの健診の受け入れをすることで、本市の認知度を高め、交流人口の拡大につながることから、先進事例を調査研究するとともに、関係機関と連携を図る。

②高齢者や障がい者の摂食嚥下障害の問題は、医療機関や介護施設だけでの支援では限界がある。食の支援には、本市の地域資源である農産物や魚介類、フルーツ、薬用作物などを活用し、教育機関や異業種連携により医療・介護食の開発を進めていく必要があると認識している。健常者が食べてもおいしい嚥下食が開発できれば、退院後も家族で同じものを食べることができ、在宅でのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の生活の質が向上すると考えられるため、先進事例を調査研究していく。薬用作物の取り組みは、市民病院では本市の総合政策アドバイザー監修のレシピを取り入れた健康食を薬膳料理として、1泊の人間ドック受診者に提供しており、食の重要性を再認識していただいている。このようなレシピを地域の事業者と共有することで、市民の健康増進と地域資源の活用を進めていく。

③今年度、三豊ベーシックインフラ整備事業として、地域の健康社員食堂という取り組みを実施している。市民病院と連携しながら、企業の従業員だけでなく、治療を終えた患者に拡大していくことは、市民全体の健康維持向上の観点から十分検討すべきであり、展開可能性のあるものだと考える。また、日常生活に戻ってからの支える医療は、宝山湖ボールパークの芝生広場や父母ヶ浜の砂地などの観光資源を活用し、退院後のリハビリや精神的な癒しの提案などを、関係機関と検討していく。

今回の提案により、みとよ市民病院の存在価値を高めるとともに、事業者との連携により地域活性化を進めていきたいと考えている。

 

以上で一般質問の報告を終わります。

 

 

地域医療政策セミナー研修報告 他

令和5年10月31日(火)、東京都内にある都市センターホテルで開催された、全国自治体病院経営都市議会協議会の主催による『第17回地域医療政策セミナー』及び、11月1日(水)の官公庁訪問の報告をします。

医療政策セミナーでは2件の講演がありました。

 

1件目  「地域包括ケアシステムを支えるICTの仕組みづくり」 守屋潔氏(名寄市役所健康福祉部、名寄市立総合病院情報管理センター長)

母親の介護体験から、〈治す医療〉だけではなく〈支える医療〉があることに気付き、ICTネットワーク構築に取り組み始めた。ちょうど令和6年度の医療、介護、障がい者支援のトリプル同時報酬改定が議論されていた。2025年以降の医療・介護提供体制の姿の3つの柱は、①『医療・介護を提供する主体の連携』により、必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受け入れられること ②地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその『連携』が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること ③『健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備』されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること となっている。これを医療DXにより、名寄市のすべての医療介護連携を改善しネットワークで実現した。

名寄市医療連携ICTのコンセプトは、1)病院の視点:名寄市立総合病院と地域の連携効率化 2)ケアマネージャーの視点:ケアマネージャーの業務負荷の軽減 3)市の視点:市が中心になって地域で1つのネットワーク(地域完結型)をつくる ということだ。そのために、医療の情報と介護情報を1つのパソコンで全て見えるように構築していった。情報の性質として、ストック情報の【ID‐LINK】とフロー情報(日々の情報のやりとり)の【Team】で構成されており、市が積極的に声がけすることで、全員参加することができた。

情報・データ等を機能効率しても、ICTのIだけでは動かない。Cのコミュニケーションが重用であり、自分たちでつくろうという当事者としての共感が加わって初めて動き出す。

名寄市の取り組みからのヒントとして4点あげる。●介護者にとって最も必要なのは利用者の正確な医療情報であり、医療連携の基盤の上に介護連携、医療介護連携が成り立つ ●自治体が事務局となり、地域全体の最適化=地域包括ケアシステム構築のためのICTであることを明確にすること ●ICT業者丸投げにせず、現場の声を引き出す、当事者意識を持たせるファシリテータの助力 ●機能よりもランニングコストを最小化して継続性を重視し、機能不足は運用で補うこと だといえる。ICTネットワーク構築の費用は、初期投資約2千万円、維持運営費は120~130万円程度だ。

終わりに、「ストック情報は国がDX推進しているが、先ずフロー情報整備から取りかかり、参加する全ての人々が当事者意識を育むための共創の場づくりから着手してはどうか」 との提言があった。

 

 

2件目  「食支援の京のまちづくり~新たな医療産業連携の試み~」 荒金英樹氏(愛生会山科病院消化器外科部長、京介食推進協議会会長、京滋摂食嚥下を考える会顧問)

京都の市中一般病院で一般消化器外科に従事している。人工栄養とがん患者の栄養管理を専門としており、疾患に応じた栄養支援をすることで、治療の下支えを行なっている。また、超高齢社会の招来による摂食嚥下障害、誤嚥性肺炎の増加に対し、院内の体制を整備するとともに、地域での医療連携、異業種との交流を通した「まちづくり」に取り組んでいる。

食を支える京都の医療・介護連携は、2008年の京都府口腔サポートセンターに始まり、2010年〈いつまでも食事を楽しめる京都、滋賀〉をスローガンに京滋摂食嚥下を考える会の発足、2012年山科地域ケア愛ステーション(現 京都市山科区在宅医療・介護連携支援センター)でき、2016年には京都府医師会在宅医療・地域包括ケアサポートセンター へとつながっており、訪問管理栄養士を広めている。

食を支える京都の医療・産業連携は、医療・介護連携だけではなく異業種連携により推進されてきた。京滋摂食嚥下を考える会を発足し、数々の「嚥下食プロジェクト」を発案実施してきた。有名料理店と連携した【京料理】、福寿園に依頼した【京のお茶】、京都府菓子工業会と協力した【京の和菓子】、伏見の老舗蔵元とコラボした「日本酒プロジェクト」、豆腐を飲み込みやすくて美味しい「豆腐プロジェクト」、食器にこだわった「介護食器プロジェクト」などがある。極み付けは、「晴れの日の松花堂弁当」や、『せんしょう』の「やわらかおせち」となった。

多職種連携、地域連携による京都のまちづくりを推進するために、「京介食推進協議会を発足し、新ブランド『京介食』を立ち上げた。これまでの取り組みの中から、「食支援の京のまちづくり」の発想が生まれた。医療技術を産業の発展に使えないか。これまでは地域包括ケアシステムには産業界が入っていないため、利用者の意見が取り入れられていなかった。医療を介して利用者の意見を取り入れ、新たな医療・産業連携に向けて、『京MED(キョウメド)』(京都×医療・介護分野への参入を目指すチーム)が発足した。

今、ポストコロナに向けて、京都府商工労働観光部ものづくり振興課と公益財団法人京都産業21の参画により、行政との連携が始動している。

 

『第17回地域医療政策セミナー』の研修報告を終わります。

 

11月1日(水)には、三豊市職員2名のそれぞれの出向先を訪問しました。一般財団法人地域活性化センターでは森亘輝さんに面会し、センターの役割や所属している企画・人材育成グループの業務等について説明をいただきました。また、経済産業省で業務に当たっている赤池賢史さんから、「工業用水道の現状と課題を踏まえた施策の取組状況」について説明をいただきました。お二人とも元気で業務に携わっているようでした。

忙しいところ時間を割いていただき、ありがとうございました。

公共施設再配置特別委員会 視察研修・3

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修3件目の報告は、栃木県宇都宮市における研修です。

 

宇都宮市は東京から北へ100㎞、栃木県の中央に位置している。平成19年に2町と合併し、面積416.85㎢となり、人口においては北関東初の50万都市となった。恵まれた立地と交通条件がそろっているとともに、本年8月には芳賀・宇都宮LRTが開業し、首都圏の北の拠点都市として政治・経済・文化の中心地として、さらなる発展を続けている。

『予定価格をマイナスとする公有財産売り払いについて』に関して、宇都宮市理財部管財課財産グループより説明をいただいた。

本年6月に、予定価格をマイナスとする建物等解体条件付き私有地公売(一般競争入札)を実施した。

【入札の概要】   (1)建物等解体付き一般競争入札:旧河内地域自治センター跡地を、宅地分譲に関する知識、実績等を有している民間事業者に現状有姿のまま売却し、併せて、売却用地内に残置された建築物(建物、地下埋設物等)を解体・撤去していただく  (2)土地利用条件:住宅地開発(宅地分譲)を土地利用条件とする  (3)予定価格(公表): ●予定価格以上で最高額で入札したものと契約 ●土地売却価格から建物等解体撤去費を差し引いた金額を予定価格とする ●土地の評価額から建物等解体費用を差し引いた金額を予定価格として設定

【売却物件】   2区画計6,314.09㎡の旧河内地域自治センター跡地であり、施設(建物・工作物・埋設物等)が残存されている。延べ床面積3,334㎡(旧河内地域自治センター本館・別館西館、旧河内土地改良区事務所事務所棟・倉庫)

【売却条件】   (1)用途の指定:売却後の物件の用途は「宅地分譲」 (2)本物件の引き渡し:買受人が建築物等の解体及び撤去を行うという条件での売却のため、現状有姿のまま引き渡す 他

【予定価格】   土地価格103,100,000円、建物解体撤去費128,315,000円であるため、予定価格は▲25,215,000円のマイナスである。入札額における最低額及び限度額は、土地価格は表示額を最低額とし、建物解体撤去費用は、表示額を限度額として超えないこと。

【買戻特約】   買戻特約期間は、契約締結日から5年とする。

令和5年6月に4社の応札があり、その結果トヨタウッドユーホームが落札した。 入札金額:95,882,000円  土地売却価格:178,382,000円  建物等解体撤去費用:82,500,000円 (入札金額=土地売却価格-建物等解体撤去費用)

市の試算では22戸程度の分譲数を見込んでいたが、29戸の分譲計画提案であり、プラス入札であっても住宅地開発による分譲事業が可能で、利益が出るとの判断であった。

議会は、『宇都宮市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例』第3条2項:土地について1件5,000㎡以上のもので、かつ、買い入れ又は売払いの予定価格が6,000万円異様である場合  を適用し上程され可決した。

 

宇都宮市は、LRTを基軸とした公共交通ネットワークの構築によるコンパクトシティとして、全国のモデルとなるまちづくりを進めています。翻って三豊市に目を戻すと、縮小のまちづくりを発展的に展開していかなくてはならない現実があります。公共財産の有効な処分には、まちづくり全体を見渡した分析による縮小と発展の発想による、分析と着手が求められることを感じた研修でした。

公共施設再配置特別委員会 視察研修報告・2

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修2件目の、茨城県古河市における研修の報告をします。

 

古河市は、平成17年に1市3町の対等合併で誕生した。現在人口は約14万人、面積123.58㎢で、茨城県の最西端に位置し関東平野のド・マンナカにあり、首都60㎞圏にある。

『公共施設等総合管理計画~ファシリティマネジメントの推進について~』を古河市財政部財産活用課から説明をいただいた。

公共施設の最適化の必要性は ●施設が大量に更新時期を迎える ●人口減少等で施設利用需要が変化 ●市町合併による類似施設保有増に対する整理が必要 などによる。

これまでの取り組みは、平成27年に古河市公共施設等総合管理(ファシリティマネジメント)基本方針を公表。平成28年に同基本方針[分野別施設方針]を公表。令和2年に古河市公共施設適正配置基本計画を公表。

ファシリティマネジメントの目的は、3つの改革目標にある。「行政改革」「量の改革」「質の改革」により ●将来へ負担を残さない行財政運営の実現 ●過不足ない公共施設サービスの提供 ●持続可能な社会基盤(インフラ)の安定管理 を求めるものだ。副市長をトップとするファシリティマネジメント推進会議で着手しており、庁内での意思決定プロセスは、各施設の管理部署で検討委員会や策定委員会、作業部会を組織し、会議を重ね統一を図っている。

古河市の公共施設の保有状況は189施設で約34万㎡であり、その内学校教育系施設が6割を占めているなど、人口減少の中で、これらの公共施設の最適化に向けてこれからどうするのか。①公共施設の配置や数量を最適な状態に見直すために、他の公共施設との複合化や集約化など、新たな手法をもって施設配置や数量を適正な状態にしていくことが必要 ②施設を見直しても市民サービスが低下しないように代替案を確保する ③地域全体を「面的」に見て施設が有効に活用されるように配置のあり方を検討する ④民間と協力することでサービスの向上や経費節減につながるよう行政と民間の守備範囲を明らかにする

公共施設の最適化に向けた事例として、複合化(機能の合体)による施設整備がある。老朽化した児童センターとコミュニティーセンターを、空き教室のある小学校を改修することで、3つの機能を持たせた複合施設とした。このことによるメリットは ●学校を地域づくりの拠点とすることでコミュニティが活性化 ●世代間交流の促進 ●色々な機能が集まって利便性が向上 ●学校は知名度が高くアクセス環境がよい ●公共施設の量を削減(財政負担の軽減) などがある。

市民との合意形成には、行政と市民との役割を認識して、公共施設のあり方を考えて進めることが重用だ。行政は ◎市民に説明責任を果たし、情報共有すること ◎市民が意見を述べる機会を設けること また、市民は ◎公共施設のことを「自分ごと」として考え ◎意見交換の場に積極的に参加し、意見・提案すること

実施例として、施設を利用する市民(ユーザー)と、費用を負担する市民(オーナー)が参加する機会を設定した。そこでは行政としての考え方を示したうえでサイレントマジョリティの意見をくみ上げることに主眼を置いた。

 

古河市の考え方と取り組みは、まさにその通りです。現時点で三豊市が直面している小学校廃校による統合小学校建設は、コロナ禍の失われた3年間による逼迫した工程で進まざるを得ない状況となっています。限られた時間で最善を尽くすよりほかに道はないことを自問した研修でした。

 

 

公共施設再配置特別委員会 視察研修報告・1

令和5年(2023)10月2日(月)~4日(水)の3日間、三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修に参加しました。視察研修先は、1件目は茨城県かすみがうら市、2件目は同じく古河市、3件目は栃木県宇都宮市の三市です。

 

かすみがうら市は、平成18年に2町合併により誕生した。現在人口は約4万人で、面積は156.60㎢(内、霞ヶ浦面積37.87㎢)となっている。国内第2位面積の「霞ヶ浦」と筑波山系南麓に挟まれ、首都東京へ約70㎞、水戸市へ約30㎞、つくば市へ約10㎞の距離に位置しており、幹線交通網にあり立地条件に恵まれた田園都市だ。

『廃校の跡地利用について』かすみがうら市総務部検査管理課財産総括室から説明をいただいた。

かすみがうら市には、3中学校区がある。その内千代田地区と霞ヶ浦地区の2地区において、廃校の跡地利用の検討がされている。

廃校になるまでの経緯は、平成25年に小中学校適正規模実施計画を策定、平成26年に霞ヶ浦地区中学校統合、平成28年に同じく小学校を統合。平成29年に小中学校適正規模化実施計画を改訂し、令和4年に千代田地区小・中学校を統合した。これにより、10校が廃校となりその利活用に向けて委託事業者によるサウンディング手法を取り入れた、「廃校利活用等ニーズ調査」が行われた。また、コロナ禍の中においてもVR技術を活用しながら廃校見学会等にも取り組んだ。

廃校利活用の実例として、10校中5校の跡地利用が実施されている。いずれも売却ではなく民間への賃借、または、公共による複合施設としての活用となっている。民間利活用の具体例は、一つはキャンプ施設として、もう一つは研究関連施設となっている。公共による複合施設としては、『かすみがうらウエルネスプラザ』に生まれ変わった。保健センター、包括支援センター、社会福祉協議会、シルバー人材センター、貸室、体育館の複合機能を有しており、指定管理者によって運営されている。

未利用の5校の内、2校は取り壊し予定とのことで、残りの3校は検討課題としている。今後の取り組みの課題は2点ある。①市街化調整区域のため用途変更が制限されるため、制限緩和と柔軟化のために『地域未来投資促進法』による特区の設定の検討 ②老朽化と耐震性を有していないケースが多いため、公共施設等総合管理計画に解体方針を明記し、除却債を活用しての施設解体を検討

今後、解決するために取り組んでいく。

 

三豊市は、今後学校統廃合が進められ、廃校が急増することは明らかとなっています。市民説明を実施し、地域の課題や意見を述べる機会を設け、より一層の意向反映を行っていくとともに、中長期的な観点からの公共施設のあり方を検討していかなくてはなりません。その上で、民間との連携も視野に入れた利活用の方向性を見極めていく必要性を再認識した研修でした。

 

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅲ

3件目の報告は、福井県高浜町の『耕作放棄地を活用した薬草栽培~福井県高浜町の取り組み~』です。

 

高浜町は、日本海に面し京都府舞鶴市に接する福井県最西端に位置する。人口は約10,000人で面積は約72.4㎢で、うち農地面積は約440haで小さな耕作地が多くを占めている。大正時代から夏の保養地として海水欲などの観光客を誘致してきた。現在、世界レベルでの環境認証「ブルーフラッグ」を日本初で取得し、アジアで一番きれいなビーチと評される観光と農業のまちだ。

高浜町産業振興課から『耕作放棄地を活用した薬草栽培』の説明をいただいた。

薬草栽培の取り組みのきっかけは、町内にある青葉山(標高693m)に約500種類の有用植物が自生していることが分かった。平成27年度より地域の資源として活用の検討が始まり、地元団体「青葉山麓研究所」が設立された。平成28年度に(公社)東京生薬協会と栽培に係る連携協定締結がされ、令和2年まで栽培技法を模索してきたが、生産体制の構築には至らなかった。令和2年以降、新たな栽培指導者(福田商店と九州の大学)から、実績のある栽培方法を受講することで、作業体系が確立し成果を得ることができるようになってきた。生薬生産に必要な要素とは、本当に生産実績がある①栽培指導者、指導を確実に実行する②担い手プレイヤー、継続的な③行政支援、買取規格を明示する④買い手生薬問屋 の存在と連携が不可欠だ。

栽培地の棲み分け(土質)による薬草の ‟選択と集中” に着手した。中山間エリア:Ⓐヤマトトウキ  沿岸エリア(砂地):Ⓑミシマサイコ(+ⓒシソ)  休耕田:Ⓓシャクヤク の主要4品目に集中し、我流は絶対せずに栽培指導者に習う。目標は実証栽培のプログラムづくりと担い手育成に向けた仕組みづくりとした。

令和4年2月に収穫したヤマトトウキの湯もみ(冬作業)を行った。江戸時代から続く伝統技術であり、収穫・加工の「体験イベント化」による農泊体験事業の可能性を摸索中だ。また、地域の中学校の総合学習の時間をつくることにより、栽培者のやる気にもつながっている。

令和2年播種したミシマサイコは令和3年11月に収穫でき、通常2年かかるところが1年2か月で収穫できた。55㎏/反の収量があり、先行地の2倍以上と多い収穫となった。

作業時間の算出と目標は、時給単価を増やすためマルチ栽培はせずバラまきで収量を確保。集計からミシマサイコは200h/反であることから、稲作の50h/反とトマト400/hの中間の作物に位置付けて、より効率的な作業方法を研究中であり、反収20万円強を目指す。ミシマサイコは未利用部位(葉・茎・花)の活用の可能性がある。ミシマサイコ茶や入浴剤等の商品化を進めている。

シソは4月定植で7月に収穫・出荷できる。なぜシソなのかは、①地上部だから目に見える ②勝負が早く「成功体験」を得ることができる からだ。現在、シソをマハタのえさにしたハーバルフィッシュを研究中だ。

ハーバルビレッジでの活用事例は、豊かな自然環境と薬草を掛け合わせた施設として、「体験イベント」×「薬膳」 「登山」×「薬膳」 「キャンプ」×「薬草」で薬草栽培の情報発信拠点となっている。

今後の目標は、実証栽培は完了したため、次は「栽培地の団地化」だ。地域の生産者を増やす取り組みと新たな担い手の登場による、農地のままで次世代へつないでいく政策が求められるからだ。

高浜町の考える薬草産地化の定義は、【高品質な薬用作物を毎年安定出荷すること=高浜ブランドの創出】 によって、薬用作物を活用した「農林水産+観光事業」の連携が実現すると考える。

 

3件の行政視察は、いずれも物事の根幹をなすのは真似事ではない、自らの足元からしっかりと見つめ直すことから始めなければならないという、政策立案の原点に立ち返ることの大切さを痛感した研修でした。

以上で報告を終わります。

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅱ

2件目の報告は、奈良県宇陀市の『宇陀市薬草プロジェクト』の研修です。

 

宇陀市は、平成18年に4町村が合併して誕生した。三重県名張市に隣接する奈良県北東部に位置する。人口3万人弱の小規模なまちだが、吉野葛等の伝統的な食品製造や毛皮革産業など、特徴ある伝統的な地場産業がみられる。

薬草については、日本書紀によると611年推古天皇の時代に日本最初の薬猟の記録があり、宇陀の地が王権の猟場であったことを示している。江戸時代には薬のまちとして栄え、何人もの製薬企業(ロート製薬、ツムラ、アステラス製薬等)の創業者を輩出している。宇陀市農林商工部商工産業課から『宇陀市薬用プロジェクト』の説明をいただいた。

薬の発祥地として薬草を活用したまちづくりを推進してきた。「ウエルネスシティー宇陀」を掲げ、市民の健康はもとより栽培者の健康にも貢献することを目指している。

栽培は、平成24年12月から薬草プロジェクトが始動し、シャクヤクやトウキ、アマチャ、ボタン、ジオウ等の栽培研究が市民参加で行われた。同時に、大和トウキの試験栽培が始まり、いろいろな取り組みの中から新たな栽培法により、新技術の取り組みが始まっている。平成26年10月に開かれた薬草栽培説明会には48名の参加があった。薬草問屋の指導もあり、平成27年3月に「宇陀市薬草協会」が設立され、販売先の心配なく栽培に集中できることで本格始動となった。大和トウキの試験栽培から10年となる令和4年は、約80名が栽培に取り組んでおり、根集荷量2,241㎏、葉集荷量3,693㎏の実績となった(連作障害で隔年で終了の増減がある)。

PR関係は、これまでに国内の薬草シンポジウムに参加・視察するとともに、薬草活用講演会や料理教室の開催を行ってきた。平成27年3月には地域経済循環創造事業交付金を活用した事業として、『薬草カフェ』をオープンした。また、薬草文化祭の開催や「全国薬草シンポジウム2018inうだ」を誘致し開催してきた。令和4年5月には、農山漁村振興交付金を活用した事業(農推進事業)の『うだ 薬湯の宿 やたきや』がおオープンした。これは、古民家をリノベーションしたもので「日本ヘルスツーリズム振興機構」が認証するヘルスツーリズム資格を保持したスタッフによる体験プログラムを提供している。令和5年5月に「宇陀松山薬草発酵博覧会」を開催し、積極的にPR活動を継続している。

販路開拓は、大和トウキの根は「当帰芍薬散」などの漢方薬の生薬として利用されるが、葉は平成24年に「非医」扱いとなり食品として利用できるようになったため、栄養機能食品を取得することで葉を加工販売し、六次産業化の推進を行っている。これは、良質な薬草栽培を目的として、生産者の所得向上を目指すものだ。

薬草を活用したまちづくりは、宇陀市を発信元として生産部、ウエルネス部、六次産業化部が、国・県・大学・企業の産官学の連携で推進されている。六次化商品としてのふるさと納税返礼品の売り上げは400万円/年で、うち製油商品は100万円/年あり、今後全体で3,000万円/年の販売を目標にしている。

 

日本最初の薬猟の壁画が星薬科大学本館にあったことは、宇陀市と同大学の宿命的なつながりを決定づけています。『宇陀市薬草プロジェクト』の事業展開に大きく影響していることは間違いありません。三豊市における薬用作物事業も、歴史、文化、風土、気候に根差した展開が求められます。市民の健康のためのウエルネスとともに、生産者の所得向上を目指した葉の活用による六次化商品展開に向け、産学官の連携推進がますます重要であることを確認させていただいた視察研修でした。

 

 

 

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和5年(2023)7月12日(水)~14日(金)の3日間の日程で実施された、三豊市議会市民建設常任委員会の行政視察研修の報告をします。報告は、1件目 滋賀県湖南市、2件目 奈良県宇陀市、3件目 福井市高浜町 の順に行います。

 

1件目の湖南市は、平成16年に石部町と甲西町の2町合併により誕生し、現在人口は54,000人余、面積は70.40㎢となっている。滋賀県南部に位置し、大阪と名古屋からそれぞれ100㎞圏内にあり、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点にある。名神高速へのアクセスが良く、県下最大の工業団地が立地し、地域経済の発展に大きな役割を果たしている。

『湖南市脱炭素先行地域事業について』湖南市環境経済部環境政策課 地域エネルギー室から説明をいただいた。

湖南市総生産(総所得・総支出)は2,717億円で、地域の所得循環構造において、エネルギー代金の流出が約243億円で、GDPの約8.9%を占めている。県下最大の工業団地を有することもあり、電力料金として関電への流出が大きいことにある。

もとより環境意識に対する市民意識が高い地域であることから、全国にも珍しい〈地域に存在する自然エネルギーは地域固有の資源である〉ことを条例制定の目的とする「湖南市地域自然エネルギー基本条例」が平成24年(2012)に制定されていた。そこから『地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業(経産省)湖南市地域におけるスマートエネルギーシステム導入の検討』が行われた。

その結果、地域新電力 こなんウルトラパワー(株)が平成28年(2016)に設立された。地域新電力のメリットは ①地域で作られた地元産電力を地域で利用(地産地消) ②地域内で資金循環 ③ICTを活用し、各施設の電力見える化や遠隔制御による省エネ・節電サービスを提供 ④災害時の避難所の電源確保、レジリエンス性向上 ⑤安価な電力を提供 がある。

事業スキームは、地域の再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)を地域新電力が需給管理・運営・エネルギーマネジメントして、地域内の地元産電力を利用者へ供給することで、「エネルギーの地産地消によるエネルギーの費用流出の最小化」で地域の活性化を実現しようとするものだ。

第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プランにおける「地域新電力が核となって事業を推進していく取り組み」として、7つのプロジェクトがある。  1.小規模分散型市民共同発電(FITに頼らない事業展開・小規模分散型でのソーラーシェアリング・自家消費型屋根借り太陽光発電への参画) 2.家庭用太陽光発電買取(家庭での自然エネルギー活用に寄与する取り組み推進) 3.自家消費型太陽光発電(屋根借り太陽光発電事業によるエネルギーの地産地消推進) 4.イモエネルギー活用(農副連携の取り組み推進による芋製品の開発等六次化産業化への検討・ソーラーシェアリングの活用) 5.木質バイオマス活用(林福連携の取り組み推進による木質バイオマス燃料の供給実施) 6.公共施設の脱炭素化(エネルギーを主眼に置いた効率的な公共施設の維持管理について検討) 7.地域マイクログリッド構築(災害時でもエネルギー供給が途切れない防衛エリヤ検討)  いずれもSDGsの視点による展開となっている。

湖南市の目指す将来ビジョンは、━新電力を核として 地域にある自然エネルギーを活用することで 地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を目指します 〈湖南市版シュタットベルケ構想〉━  として、その上で戦略プランの定量的な目標を、経済、環境、社会の角度からそれぞれ定めている。

湖南市の2030年のあるべき姿は、こなんウルトラパワーを核とした地域循環共生圏を目指したSDGs未来都市構想の実現に向けて、①自治体新電力を核とした官民連携の自然エネルギー導入プロイジェクトの実施 ②地域経済循環の創出 ③多様な主体との連携により地域の活力を創生し、未来を創造る ‟さりげない支えあい” のまちづくりの実現をめざす。

一連の取り組みと未来社会を創造する取り組みの提案が、環境省の『脱炭素先行地域』に選定されている。既に認定・発動している「SDGs未来都市認定」と「ゼロカーボンシティ宣言」を活かしながら、あるべき姿の ‟さりげない支えあい” のまちづくりに向け『湖南市脱炭素先行地域事業』に取り組んでいる。

 

湖南市には湖南市の、三豊市には三豊市のここだからこそこうするといったまちづくりの必然性があることを再認識することとなりました。自然・住環境や経済・産業の構造、歴史・文化・風土など、それぞれの地域に相応しい脱炭素社会構築があることを、自覚することから始めなければならないのだろうと、考えさせられた視察研修でした。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・3

視察研修の最終日となる3日目は、佐賀県佐賀市の【佐賀市清掃工場】における「バイオマス産業都市・佐賀市が目指す 持続可能な脱炭素・資源循環のまちづくり」について、市環境部循環型社会推進課3R推進係 羽立参事と小早川主任から説明をいただきました。

 

佐賀市清掃工場は、平成の大合併(1市6町1村)をきっかけに、ごみ処理施設の統合へと動きが進み、周辺地域の合意を得て平成26年に4か所あった施設を佐賀市清掃工場に集約し一括処理することとなった。

地域の理解を得るために、地域にとって有益な施設とするための施設統合の効果であるコスト縮減、バイオ資源の増加を周辺地域に還元することを目指して、地域産業の創出を実践することとし、『バイオマス産業都市構想』へと展開していった。平成26年 ‟廃棄物がエネルギーや資源として循環するまち” として『バイオマス産業都市』の認定を受けた。

取り組み内容は、1.清掃工場二酸化炭素分離改修事業 2.木質バイオマス利活用事業 3.下水浄化センターエネルギー創出事業 4.微細藻類培養によるマテリアル利用及び燃料製造事業 5.家畜排せつ物と事業系食品残差との混合堆肥化事業 6.事業系食品残差と有機性汚泥の混合利用事業 となっている。

「バイオマス産業都市さが」の基本方針は ①既存の施設を活用する ②市が仲介役を果たし企業の連携を実現する ことにある。その方向性は「これまで処理に費用をかけていたものを相互に有効利用する仕組みを構築し、処理費軽減による市内企業の経営の改善と、バイオマスの有効活用による(新)産業を育成することだ。この取り組みとして、佐賀市は仲介役に徹することとした。一つは、行政が関係者の想いや技術をつなぎ、それぞれにとってメリットのある関係を構築すること。二つは、域内の資源融通により、廃棄物量や処理費用、域外からの資源購入を抑制し、新たな価値を生み出すことで域内経済を活性化すること。

画期的ともいえる、ごみ処理施設におけるCCU事業の取り組みについて。(※CCU事業:処理施設から排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用するプロセス)  平成28年、ごみ焼却施設から発生した二酸化炭素を分離回収する設備を、環境省から15億円の補助金を得て日本初として稼働し、そのCO2を植物の成長促進に実用化している。例えば、(株)アルビータによる藻類培養、クリーンラボ(株)によるバジル栽培、ゆめファーム全農SAGAによるキュウリ栽培等の実績があり、清掃工場周辺は増設・新設も含め、次々と産業が集積している。

二酸化炭素分離回収事業による経済波及効果は、54億1,300万円と算定されている。今後の事業展開は、佐賀市の取り組みを全国、そして世界に広げたい!! CO2回収設備の普及と回収したCO2の利活用で、サーキュラ(バイオ)エコノミーの浸透を図っていくことを目指している。

 

ごみ処理が目的であったとしても、そこに向かうプロセスの中で環境への負荷を軽減し、利益に転化することにとどまらず、雇用も生み出す高度な政策立案と展開は、目を見張るものがあります。三豊市におけるバイオマス資源化センターをより効果的に活用するためのCCU事業を立案していく必要性に気づかされた視察研修でした。

以上で、会派清風会の視察研修報告を終わります。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・2

視察研修の2日目は、鹿児島県南九州市役所を訪問し、観光行政について研修を行いました。

 

南九州市は、平成19年12月に知覧町を含む3町が合併して、人口約4万人、面積357.91㎢となり誕生した。現在人口は全国の地方都市同様、合併以来減少が続き3万人余となっている。薩摩半島の先端中央部に位置し、歴史と自然豊かな環境にあり、旧知覧町の歴史遺産や市内全域にある自然環境を生かし、観光によるまちづくりに取り組んでいる。

商工観光課の森田課長から「南九州市の観光概要」、文化財課からは「歴史遺産を活用した観光振興」、都市政策課からは「歴史と景観をいかしたまちづくり」の説明をいただいた。

【南九州市の観光概要】  昭和40年代前半に知覧武家屋敷庭園群が文献で紹介されたことに始まる。それを中心とする知覧の市街地は、昭和55年から道路や公園の整備が着手され、歴史と景観を活かした潤いのある街並み整備として、武家屋敷や平和をモチーフにした和風で落ち着いた佇まいの町づくりが進められた。町づくりが進む中、昭和62年に知覧特攻平和会館が新築され、より多くの資料展示や語り部による講和等が充実してきた。しかし、鹿児島空港からの直行バスの廃止や、新型コロナウイルスの影響もあり、近年は観光客の減少傾向が続いている。南九州市には宿泊施設が少なく日帰りが主流のため、観光消費額と滞在時間の拡大も課題である。

【知覧武家屋敷庭園群】  武家屋敷のある麓地区18.6haは、昭和56年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、7つの庭園は国の「名勝」に指定されている。その所有者等で「知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合」を組織し、入園料の徴収やPR事業、生け垣の剪定、病害虫対策を行っている。新たな取り組みとして ●WⅰーFⅰ整備・多言語音声ガイド導入 ●周辺駐車場の無料化 ●ちらん灯採路~南九州市あかりの道標~ を展開している。

【知覧特攻平和会館】  第二次世界大戦末期に行われた特攻作戦にまつわる資料を展示し、平和の大切さや命の尊さを発信している。近年は、平和学習の場として、全国各地の学校が訪れている。

【新たな観光地づくり】  番所鼻自然公園は、伊能忠敬が「天下の絶景」と称賛したとされ、鹿児島県の事業を活用し、駐車場や園路整備して新たな観光スポットとしている。市内には、まだ埋もれた観光資源があるが、限られた予算の中で持続可能な観光地をどのように整備・維持していくかが課題だ。

【稼ぐ観光に向けた取り組み】  南九州市は日帰り観光地であるため、宿泊以外の分野で観光消費額を向上させる取り組みを進めている。 ●サイクルツーリズムの推進 ●自然を活かしたアドベンチャーパークの整備 ●体験予約サイトの運用 ●新ご当地グルメ「みなコレ名物丼」の開発 などがある。

【歴史と景観をいかしたまちづくり】  町並みの整備にあたり、歴史遺産である武家屋敷群を背景とした知覧町の街路事業では、その歴史と建造物等に十分配慮し、修景や景観の保全に努めた。昭和48年度から平成16年度の約30年をかけ、10工区の町並み整備を行った。総事業費は、75億円近くを投入した。現在、南九州市知覧町の歴史と景観を活かしたまちづくりが、観光の基盤とゆるぎない価値につながっている。

 

南九州市は、宿泊施設が少ないため、日帰り観光地となっていることの現実を直視し、宿泊の6,000円がないのであれば、食で3,000円+土産物で3,000円を稼げばいいと振り切っています。そこには、地元産品をフルに活用した食事メニューや土産物の開発に活路を見出そうとする明確な方針が見えます。

三豊市も同様の環境であることをしっかりと見つめ直し、宿泊施設誘致活動は引き続き進めていくことはもとより、地元産品を活用した商品開発による産業振興が、三豊市の観光振興につながっていくことを再確認できた研修でした。