議会運営委員会視察研修(R7年度) 報告3

加西市は、兵庫県播州平野のほぼ中央に位置している。面積150㎢、人口約40,000人の農業が基幹産業の一つであるとともに、古くは北条の宿があった歴史のあるまちだ。また、三洋電機発祥の地であることから、産業技術を活かした【アラジン】商品の人気で、「ふるさと納税額」は60億円を超え、まちの発展を支えている。

 

『加西子ども議会の取組について』と『市民との意見交換会の取り組みについて』を、加西市議会中右議長と丸岡議会運営委員長から説明を受けた。

●『加西こども議会の取り組みについて』   当時の議長の発案により、令和5年から全議員の協力のもと検討を開始した。令和6年3月定例会後から詳細を協議し、7月に第1回が開催された。

事前に、開催に向けてこども議員候補者に市議会の仕組みや議員の役割等を説明するオリエンテーションを開催するとともに、議長から任命書とこども議員バッジを授与した。本番のこども議会は、議場を会場に18名のこども議員が市政について一般質問を行った。

参加者の反応として、こども議員と保護者にもアンケートを実施した中で、「市議会への理解が深まった」「自分の思いを伝えられた」等、選挙や議員に対する肯定的な回答が多くあり、保護者の議会への関心も高まった。

第2回開催に向けた改善点は ①事前のオリエンテーションは平日で、本番開催日は日曜日にするよう調整する ②再質問の時間を設ける ③事前オリエンテーションも議員が行う

これからも主権者教育の重要性が高まるため、継続して実施していく方針だ。

●『市民との意見交換会の取り組みについて』   議会基本条例で年2回以上の開催を定めており、これまでに25回実施している。議会報告やテーマ別意見交換等、様々な取り組みを試みてきた。その結果、現状は議会報告と市民生活に関心の高いテーマについて、グループワークによる意見交換を実施。この方法で発言しやすい雰囲気となり、若者の参加も増加している。

ここで出された意見や要望の内容は、議会で取りまとめ執行側に送付し、課題や要望の共有を図っている。

 

加西市議会では、平成22年の議会基本条例制定からの取り組みを通して、議員活動の透明性と市民意見の反映の努力を重ねてきたことが理解できました。また、条例への理解を深めるために、議員の任期開始時と2年経過時に議員研修を行うとともに検証を行うことや、こども議会の改善検討を行い実施につなげるなど、改革の継続の大切さを確認できた研修でした。

議会運営委員会視察研修(R7年度) 報告2

福知山市は、主要幹線道路のほかJR山陰本線や福知山線、京都丹後鉄道が行き交う北近畿の交通の要衝地だ。平成18年に1市3町が合併し、面積552㎢、現人口約74,000人の現在の福知山市となった。

『議会基本条例の検証評価について』と『議会改革の取組について』、議会運営委員長及び議会改革検討会議委員長他から説明を受けた。

●『議会基本条例の検証評価について』  議員による自己評価で実施されている。評価は「検証評価シート」を用いて行われ、各会派でシートの協議と評価を行い、それを議会で集約する。検証評価サイクルは、議員の任期終了までの4年間で行い、次回は令和8年度下半期に実施する予定だ。

これまでの課題として、条例制定時に具体的な目標設定がなかったため、評価が困難だったことがあげらる。今後は、議会運営委員会会議録や委員会審査資料の公開、SNSの導入、モニター制度の導入、オンラインを活用した市民意見交換会、政策チェック機能の強化などが、目標とされる。

●『議会改革の取り組みについて』  大きく3点の取り組み方向がある。

①情報公開の推進 : *議案賛否の公開 *政務活動費の使途・収支報告の公開 *役職選出に係る所信表明会の実施 *委員会審査等のライブ中継・録画配信の導入 *議長の議会報告活動 *議員の請負の状況の公表

②市民参加の推進 : *議会報告会 *出張委員会の実施 *行政視察研修報告の実施 *高校生フレッシュ議会 *議員定数を考える市民意見交換会 *傍聴者への取り組みの充実

③議会の機能強化 : *議決事項の充実 *議員研修の充実 *災害発生時の議会の対応 *請願審査の充実 *自由討議の推進 *自由討議を踏まえた政策提言 *議会政策検討会議の設置 *市議会から市長への政策提言書の提出 *タブレット端末の活用(ICT化の推進) *オンライン会議

取り組みに向けての課題を整理し着手している。

 

福知山市議会は、「市民にとって身近で開かれた議会」を目指し、条例の実効性を高めるため、議会改革検討会議を設置し、改革に取り組んでいます。議会改革度調査で常に上位にランクインしており、三豊市議会としても課題項目を整理するための協議の検討の指針となる、学ぶことの多い研修でした。

議会運営委員会視察研修(R7年度) 報告1

三豊市議会議会運営委員会の視察研修が、令和7年8月5日~7日の3日間の日程で実施されました。訪問先は、京都府亀岡市と同府福知山市及び、兵庫県加西市でした。

 

亀岡市は京都市の西に位置し、戦国の頃より明智光秀が亀山城を築いた城下町として栄えた。昭和の大合併において1町15村で市制を施行し、今年で60周年を迎える。面積は224㎢、人口約86,000人。保津川下り、トロッコ列車、湯の花温泉が3大観光名所となっている。また、J1サッカーチームの京都サンガのホームスタジアムが誘致され、新たな活性化につながっている。

議会運営について、亀岡市議会議会運営委員会の平本委員長他委員会メンバーから説明を受けた。

●『議会基本条例の検証と見直しのサイクルについて』  当初は運用基準で2年ごとに(任期の中間年と最終年)条例の見直しを行うと定めていたが、現在は市政の動向を見定めて柔軟に対応できるよう、毎年見直しに取り組んでいる。

●『議会報告会とわがまちトーク』  議会報告会は平成22年の条例制定直後から開始され、毎年開催していたが参加者の固定化などの課題から、平成28年度からは条例も改正し「必要に応じて実施する」こととした。

わがまちトークは、議員が自治会や各種団体に出向き、意見交換を行うもので、市民意見をくみ上げる広聴活動の中心的な位置づけとなっている。一方的な議会報告会ではなく、市民との意見交換を重視している。テーマは参加者・団体の提案に基づき行われ、実施方法は「まちづくりを一緒に考える」を重視するため、ワークショップ形式を採用している。また、広聴活動として、高校生や中学生との意見交換や子育て世代が集まる場所での「突撃インタビュー」など、多様なアプローチを試みている。

 

亀岡市議会では、毎議会ほぼすべての議員が一般質問するなど、活発な議員活動が定着しています。このような日常の活力が議会運営全体に浸透し、結果として「亀岡らしさ」が反映された議会基本条例となっていることを、学ぶことができた研修でした。

総務常任委員会視察研修(R7年度) 報告3

「公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構」は、東京都有楽町の東京交通会館にあります。母体となる「ふるさと回帰支援センター」は2002年に設立され、今年で23年目を迎えていますが、2023年に「移住交流推進機構JOIN」と組織統合され現在の体制になっています。

 

高橋理事長と香川県担当の廣原うどん県移住コーディネーター他から説明を受けた。

組織統合の最大の狙いは、全国約1,700自治体の半数の850自治体を移住促進運動に巻き込むことだ。現状、「行きたい人がいるのに、よい場所が見つからない」ということだ。バブル崩壊以降の30年間で進行した格差拡大や貧困等の克服の一助となることが期待されている。

センター内には全国44都道府県のブースが常設され、相談員が配置されている。移住者の傾向と重視する点は、「仕事があるところ」が圧倒的に多く、次いで「自然環境が良いところ」「住む場所があるところ」「交通の便が良いところ」と続く。今は若い働き盛り世代が増えている。昨今は、ファミリー層が減少し、40~60歳の単身男性が多い傾向にある。女性の移住相談も増加している。

 

センターからは三豊市が会員になることで、再び以前に行っていたセミナーを再開するなどして、「空き家バンク」が充実していることや、市民が当たり前だと思っていることが当たり前ではなく、実は大きな価値のあることを積極的に発信することが効果的だと、提案をいただきました。

 

総務常任委員会視察研修(R7年度) 報告2

佐渡市は、佐渡島全域を市域とし、平成16年に10市町村が合併して人口68,000人余で誕生したが、現在は36,000人余である。島の面積が855㎢で東京23区や淡路島の1.5倍の大きさがある日本海側最大の島だ。

調査事項である『集落支援員・二地域居住の取り組みについて』、佐渡市役所地域振興部地域産業振興課及び、移住交流課から説明を受けた。

●『集落支援制度の取り組みについて』  全島が一行政区となったことで地域課題の把握や行政サービスが届きにくいということに対して、令和3年度から支所・行政サービスの組織体制強化に着手した。

「地域相談員」:市のOBを中心に、行政と集落のつなぎ役として地域要望や情報収集、事業化検討を行う。会計年度任用職員として、21地域の専任で各支所に配置されている。

「地域活動支援員」:佐渡市の掲げる主要政策を推進するために、主に首都圏の大学(相模女子大・東洋大・芝浦工業大等15校)と連携して地域活性を担う専任職員である。特に佐渡の伝統行事の伝承や地域イベントの活性化のため、大学生等の参加を促すサポート支援を行う。当市における集落支援員は、佐渡の伝統芸能等の造詣の深い民間人に業務委託しているこの1名である。

●『二地域居住促進の取り組みについて』  UIターン政策の行き詰まりから、より気軽に地域と関わる仕組みとして、二拠点居住を重視している。人材創出社会のため、スタートアップを支える仕組みを充実するとともに、地域活性化法の改正を受け「二拠点移住広域促進計画」を新潟県内で初めて策定し、二地域居住を推進している。

移住支援施策は二つの切り口で展開している。  ①「スタートアップ支援」と「企業誘致」として、※廃校や佐渡汽船ターミナルの空きスペースうを活用したインキュベーションセンターや、コワーキングスペースを整備し、ワーケーションによる企業を支援している ※県と連携したビジネスコンテストで雇用機会拡充補助金の活用促進をしている  ②「受け入れ促進と定着支援」は、※「さどくらしテラス」で〈住む〉〈働く〉〈暮らす〉の相談の受付 ※「お試し住宅」で保育園留学でお試し入園による佐渡の暮らしを体験 ※「就業支援」で多様な働き方を支援する、地域づくり事業協同組み合の運営や医療・介護・福祉分野の奨学金制度で若者の定着促進 等

 

二地域居住政策とそれに関わった若者に、定住を促す集落支援政策を複合的に、しかも関係性をもって展開していることに、気づき多い研修でした。

総務常任委員会視察研修(R7年度) 報告1

三豊市議会総務常任委員会の視察研修が、令和7年7月29日~31日の3日間実施されました。訪問先は、新潟県南魚沼市と同県佐渡市及び、東京都有楽町にある公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構でした。

 

南魚沼市は、平成17年10月に3町合併により面積584㎢、現人口52,000人の新生「南魚沼市」として誕生した。群馬県との県境に位置し、豊かな水と肥沃な土地が育むコシヒカリの産地として全国に名を馳せている。

調査事項である『地域コミュニティと移住について』、南魚沼市役所U&Iときめき課から説明を受けた。

●『地域づくり協議会について』  合併により地域の声が行政に届きづらく、距離のある状況を改善する必要があったことや、自分たちのまちは自分たちでつくるという機運が高まっていたことから、地区と行政が両輪となり、ともに対等な立場で効率的できめ細やかな行政運営を推進するため、平成24年に設立された。

旧3町のそれぞれに4つの旧村単位の協議会が組織され、活動事業所として12の地区センターを設置している。地区センターごとに事務長がおり、地域づくり協議会での事務業務が集落支援員業務と同等であるとみなされ、総務省の集落支援員制度の専任集落支援員と位置付けられた。給与は協議会から支払われている。

また、地区センター事務長の12名のほかに、公共施設管理運営のために会計年度任用職員の立場で1名おり、計13名の集落支援員を配置していることとなっている。

●『移住施策について』  総合計画で「若者が帰ってこられる、住み続けられる南魚沼」と謳っており、若者世代のUターン層のほかIターン層に対しては、雪などの地域資源に魅力を感じる人を狙っている。近年は、「ふるさとワーキングホリデー事業」や総務省の「ふるさとみらいカレッジ」などの、大学生世代の関係人口化に注力している。このような施策によって、当市の魅力にひかれ訪れた学生を中心に、R4からこれまでの4年間で計11名が地域おこし協力隊として、会計年度任用職員に雇用されて活動している。

 

「南魚沼市地域コミュニティ活性化事業実施要綱」における、基礎事業や提案事業の内容は、三豊市におけるこれからの制度設計に役立つと感じました。三豊市にすでにある土地改良区事業の仕組みの考え方に似ており、地域コミュニティの制度設計に大いに参考になった研修でした。