平成28年9月定例会報告「補正予算関係と他議案」

平成28年9月定例会で審議された29議案の内、「平成27年度決算関係」以外の「補正予算関係と他議案」について報告します。

 

<補正予算関係>

【一般会計】

補正額は8億59,816千円で、補正後予算額は317億65,198千円となります。

「施設管理課」  621千円  宝山湖公園管理運営事業471千円他

「企画財政課」  6億34,866千円  基金管理事業6億34,000千円(積立金)、三豊中学校交付税配分866千円

「田園都市推進課」  705千円  公共施設再配置事業486千円他

「環境衛生課」  1億29,265千円  火葬場建設事業1億29,194千円他

「水処理課」  6,384千円  集落排水事業特別会計繰り出し金5,958千円他

「バイオマスタウン推進課」  3,651千円  バイオマスタウン資源化センター事業(事業モニタリング計画策定支援事業2,268千円、法律的支援指導業務1,383千円)

「健康課」  727千円  国民健康保険事業610千円(繰り出し金)他

「介護保険課」  12,252千円  介護保険事業特別会計繰り出し金10,399千円、地域介護・福祉空間施設整備事業1,853千円

「子育て支援課」  5,760千円  予防接種事業

「農業振興課」  862千円  有害鳥獣対策事業

「土地改良課」  1,830千円  土地改良施設維持管理費1,620千円他

「建設課」  27,900千円  市単独道路橋梁新設改良事業22,900千円、市管理河川維持事業5,000千円

「建築課」  9,872千円  空き家対策事業

「港湾水産課」  4,600千円  漁港管理費2,100千円、港湾管理費2,000千円他

「教育総務課」  18,988千円  教育総務管理事業(三豊市観音寺市学校組合負担金)

「生涯学習課」  4,005千円  公民館活動推進事業3,925千円(工事請負費等)他

「人権教育課」  1,296千円  集会所管理運営費(施設修繕料)

 

【特別会計】

8つの特別会計の補正額合計は1億28,003千円となり、補正後予算額は193億47,003千円とます。

①国民健康保険事業特別会計  3,658千円  補正後99億83,658千円

②国民健康保険診療所事業特別会計  4,699千円  補正後1億69,699千円

③後期高齢者医療事業特別会計  1,588千円  補正後9億35,588千円

④介護保険事業特別会計  1億8,039千円  補正後76億98,039千円

⑤介護サービス事業特別会計  138千円  補正後1億6,138千円

⑥集落排水事業特別会計  7,518千円  補正後1億99,518千円

⑦浄化槽整備推進事業特別会計  426千円  補正後2億31,426千円

⑧港湾整備事業特別会計  1,937千円  補正後22,937千円

 

【企業会計】

2つの企業会計はいづれも補正はありません。

 

<その他議案>

「議案第95号・96号  市道の路線認定について(北北浦線・詫間339号線)」  2路線とも認定された。

「議案第97号  財産の取得について(三豊市情報セキュリティ強靭化に係る機器)」  一般競争入札で(株)富士通四国インフォテックに78,679,800円で決定した。

「議案第98号  財産の取得について(雇用促進住宅)」  高瀬宿舎及び付属建物(鉄筋コンクリート造5階建て2棟・3,429.72㎡)を、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から、38,391,300円で取得した。

 

以上で、平成28年9月定例会の報告を終わります。

平成28年9月定例会報告「平成27年度決算・2」

今回は、平成27年度決算における『財政健全化判断比率』についてお伝えします。

平成19年6月に制定された「地方公共団体の財政健全化に関する法律」(財政健全化法)に定められた、財政健全化を確認する指標は4つあります。平成27年度決算におけるそれらの指標は、次の通りです。

【①実質赤字比率】

標準財政規模に対して、一般会計の実質赤字を示すものです。赤字でないため「実質赤字なし」となっています。

【②連結実質赤字比率】

標準財政規模に対して、一般会計に特別会計及び公営企業会計を連結した実質赤字を示すものです。赤字でないため「連結実質赤字比率なし」となっています。

【③実質公債費比率】(3カ年平均)

①と②に加えて、一部事務組合や広域連合まで範囲を広げて、公債費の比率を示すものです。早期健全化基準25.0%に対し5.0%となっています。平成26年度が6.0%であったことから1.0%良化しています。要因は、分子にあたる元利償還金額が減額となったためです。

【④将来負担比率】

③に加えて、地方公社や第3セクターまで範囲を広げ、公債費や債務負担行為など将来に係る負担の比率を示すものです。早期健全化基準は350%となっています。平成26年度は負担比率がマイナス(-25.4)であったためポイント表示はありませんでしたが、平成27年度は16.5%のポイントが表示されました。要因は、分子にあたる地方債残高が増加したことに対して、分母にあたる起債償還にあてる基金の減少によります。

 

将来負担比率の悪化は、平成27年度に大型公共事業が集中したことにより、年度末に基金を取り崩し支払いに充てるための繰り替え運用が行われたためです。計画的な平準化された事業計画の重要性を感じています。

 

平成28年9月定例会報告「平成27年度決算・1」

平成28年9月27日(火)に、9月1日(木)から開会していた三豊市議会9月定例会が、平成27年度決算及び本年度補正予算他、29議案を可決し27日間の会期を終え閉会しました。

今回の報告は、平成27年度決算のパート1です。

決算規模並びに収支状況は、一般会計が歳入399億10,260,968円で、歳出は380億76,338,456円となっており、差し引き額は18億33,922,514円です。また、特別会計が歳入186億4,258,126円で歳出は183億74,628,728円で、差引額は2億29,629,398円となっています。よって、一般会計と特別会計の歳入合計は585億14,519,094円で、歳出合計は564億50,967,182円で、その差引合計は20億63,551,912円の黒字決算となっています。また、翌年度へ繰り越すべき財源5億16,710,000円を差し引いた実質収支額は、15億46,841,912円の黒字となります。実質収支額の内訳は、一般会計が13億17,212,514円、特別会計が2億29,629,398円です。

次に、財政状況についてお伝えします。

「実質収支比率」  標準財政規模208億16,306千円に対する実質収支額13億17,213千円の割合は、6.3%となっている。(財政運営の健全性を判断するための指標で、3~5%が望ましいと考えられている)

「経常収支比率」  経常一般財源額199億58,188千円に対する経常経費充当一般財源177億64,580千円の割合は85.2%となっている。(財源構造の弾力性を判断するための指標で、充当割合は70~80%が望ましいと考えられている)

「財政力指数」  基準財政需要額148億15,892千円に対する基準財政収入額71億48,832千円の割合は0.49の指数となっている。(財政力の強弱を判断するための3カ年平均で表す指標で、1に近い方が強いとされている)

 

次回は、「平成27年度決算・2」の財政健全化判断比率についてお伝えします。

 

 

 

9月定例会開会中の民生常任委員会(報告事項)

平成28年9月1日に開会された三豊市議会9月定例会は、一般質問が終わり常任委員会審査が開催されており、13日(火)に民生常任委員会が開催されました。委員会に付託された案件は、補正予算関係のみで審査が行われ、他、所管課から報告事項が説明されました。

一般会計の関係部分と所管の7つの特別会計の8議案は、全て原案可決となりました。議会最終日に委員長から審査報告がされ、他の委員会付託議案とともに、全議員による採決が行われることとなります。

今回は、報告事項についてお伝えします。

「健康福祉部」

(1)RAN伴(ラントモ)2016について   認知症の理解と啓蒙活動として、北海道から沖縄県の4000キロを、認知症の人とともにタスキをつなぐ列島リレーとして行われている。今年で6回目だが、今回初めて四国が加わり、10月23日(日)にタスキ渡しのセレモニーを庁舎前で行う。

(2)子ども・子育て会議について   第15回三豊市子ども・子育て会議で、私立保育所開設における確認がされた。社会福祉法人花みずき福祉会が、豊中町に平成29年4月1日に開園する。名称を『芽実花(めみか)保育園』とし、生後3か月~5歳児の60名定員となる。利用定員の予定は、3号認定の0歳:6名、1・2歳:24名で、2号認定の3~5歳:30名。

(3)平成29年度保育所入所申込みについて  申込期間は、平成28年10月17日(月)~11月10日(木)で、各保育所または子育て支援課で受け付ける。公立保育所10所(内1所は民間へ運営委託)、私立保育所1所、小規模保育事業所1所で、定員合計は1,152人の予定。

(4)平成28年度臨時福祉給付金について  消費税率引き上げによる影響を緩和するため、所得の少ない方(対象者数:14,000人)に対し、一人3,000円が支給される。また、賃金引上げの恩恵が及びにくい所得の少ない障害基礎年金または遺族基礎年金の受給者(対象者数:430人)に対し、一人30,000円の「障害・遺族基礎年金受給者向け給付金」が支給される。申請受付期間は10月3日~平成29年2月3日まで。

「環境部」

(1)三豊市北部火葬場について  造成工事の入札があり、横田産業に38,000千円余で決定した。

(2)バイオマス資源化センター事業について  本年11月からの試験運転及び平成29年4月本格稼働に向け、工事が計画通り進んでいる。

(3)三観衛生組合し尿処理施設解体工事について  本年10月完了の工期で進んでいる。事故の対する補償交渉も、おおむね良好に進められている。

 

以上で、報告事項に関する、議会開会中の民生常任委員会の報告を終わります。

民生常任委員会の行政視察研修報告・3

民生常任委員会の行政視察研修報告の3件目は、岡山県総社市の「障がい者千人雇用事業について」です。

 

総社市は、岡山市の西、倉敷市の北に位置し、歴史に培われた吉備文化と高梁川の恵みによる、豊かな自然環境にある住宅・学園都市だ。人口68,000人、面積212㎢で、三豊市とほぼ同じの規模であるが、人口は増加傾向にある。総社市のセールスポイントは、内陸部であることで津波・地震のリスクが低いことと、最も近い島根原発から約118㎞にあり、福島第一原発から仙台市や山形市への距離より遠いことで、日本一安心安全なまちであるということだ。障がい者にとっても安心して生活できるまちを目指している。

「障がい者千人雇用事業」は、平成22年新設の県立支援学校の誘致合戦で隣の倉敷市に敗れたことで、それならば、「支援学校を卒業した後の働く場所は総社市が担う」という強い決意で、片岡市長のトップダウンで始まった。

平成23年「障がい者千人雇用事業」を開始。『就労支援ルーム』を全国で2番目に設置。「障がい者千人雇用推進条例」を制定。

平成24年「障がい者千人雇用センター」を設置(マッチングと生活支援の拠点)。

平成26年『就労移行支援金制度』の創設(福祉的就労から一般就労へ移行し、半年以上経過した方に、10万円を支給する独自施策)。

「障がい者千人雇用事業」を開始した平成23年時点で、市内の障害者は約3,000人おり、その内、就労期年齢者が約1,200人いた。その中の180名程しか就労していなかった。それが、平成28年現在では950名に推移している。

「障がい者千人雇用事業」の運営は、【三本の矢】と例えられる「総社市役所」「ハローワーク総社」「障がい者千人雇用センター」の、密接な連携体制で行われている。連携による協働として、「ハローワーク総社」内に、『就労支援ルーム』を設置し、〔福祉から就労〕に向けてのワンストップで付き添い型の密接な支援を行っている。また、「障がい者千人雇用センター」は社協に委託しており、ハローワーク職員が常駐し、市民であるか否かを問わず、登録者に対してマッチングから生活までマンツーマンでサポートを行うとともに、企業など就労先へのアフターケアも担当している。

現在、総社市では障がい者と触れ合える地域を実現するために、市役所の中庭を有効活用し、障がい者が提供するランチスペースに開放している。また、福祉的就労から一般就労へ移行した方に、市独自施策として10万円を支給する事業や、市内コンビニの店頭に商品を置かせてもらうなど、工賃アップのためのアイデアを市が提供できるよう取り組んでいる。

これからの「障がい者千人雇用事業」が目指すものとは、生涯を通した支援によって、障がい者一人ひとり自立し、安心して地域で暮らせる社会の実現により、「全国屈指の福祉先駆都市」実現の礎となることだ。

 

研修を受けながら感じたのは、強力なリーダーシップの存在でした。トップダウンで始められた「障がい者千人雇用事業」は、橋本龍太郎元首相秘書官であった片岡市長の熱いおもいが形となった施策なのです。その証は、「障がい者千人雇用センター」入り口に掲げられた市長直筆の看板の、力強い筆致に見ることができます。発想の原点は、日本一安心安全なまちなのだから、障がい者にとっても住みやすいまちになるに違いないとの思いからなのだと想像できます。熱き郷土愛こそが事業推進の力となることを、またここでも感じた研修でした。

 

以上で、3回にわたっての民生常任委員会の行政視察研修報告を終わります。

民生常任委員会の行政視察研修報告・2

民生常任委員会の行政視察研修報告の2件目は、愛知県豊田市立の「寺部こども園について」です。

 

豊田市はトヨタ自動車の本社があり、市内の製造業で働く人の約85%が自動車関連産業に従事しているという「クルマのまち」である。一方、市町村合併により、愛知県全体の17.8%を占める広大な面積と持ち、7割が田園と森林地帯である等、豊かな自然環境に恵まれた人口425,000人程の、日本を代表する地方都市だ。

 

研修先である「寺部こども園」は、本年(平成28年)4月に『豊田市立寺部小学校・寺部こども園』として、豊田市初の小学校とこども園の合築で移転改築された、まだ半年に満たない最新の施設の中にある。

豊田市の「こども園」事業は、国の定める「認定こども園」とはことなり、市独自の幼保一元化の制度として平成20年度から実施されている。現在、「こども園」としての一体的な運用対象は、認可保育所(市立:55、私立:15)と、認可幼稚園(市立:12)の82ヶ所体制となっている。

幼保一元化の「こども園」に至るまでの取り組みは、次のようになっている。

<平成13年> ●保育園と幼稚園を所管する部署を統一し、市長部局に「子ども課」を創設 ●市立幼稚園で保育要件を必要とする3歳児保育を開始 以降拡大する ●市立幼稚園で預かり保育を開始

<平成15年> ●「保育士」「幼稚園教諭」を総称して「保育師」とする

<平成17年> ●「とよた子どもスマイルプラン「豊田市次世代育成支援行動計画」を策定し、「幼保一体化の推進」を計画の重点事業として位置づけた ●組織改編により、子ども課は「子ども部」となり子育て支援施策を充実する

<平成19年> ●9月議会に施設名称の変更、保育料の統一に関係する条例の一部改正議案を上程し、可決される

<平成20年> ●保育園保育料と公立幼稚園授業料を統一 ●保育園及公立幼稚園の職員配置基準を統一 ●保育園と公立幼稚園の名称を「こども園」に統一

次に、市私立保育園と市立幼稚園の一体化施策については以下の通りだ。

(1)保育園における私的契約児の受け入れ  保育園で4・5歳児の保育に欠けない児童の受け入れを行っている。

(2)市立の幼稚園・保育所の人事交流と職名統一  幼稚園・保育園間の配置転換を始め、研修の合同実施を行っている。また、幼稚園「教諭」と保育園「保育士」の職名を、豊田市方式として「保育師」に統一した。

(3)保育カリキュラムの統一  0~5歳児までの保育期間全体にわたる計画として「豊田市保育課程・指導計画」を策定し、市立幼稚園と市立保育園及び私立保育園において本計画に従った保育が実施されている。

(4)所管部所の統一と施設名称の「こども園」統一  「子ども部」は、次世代教育課、子ども家庭課、保育課の3課となり、保育課が幼稚園と保育園を所管し、「幼稚園」「保育園」から「こども園」に施設名称を変更した。

(5)職員の配置基準を統一  幼稚園と保育園とで異なる職員配置基準を、保育の質の充実と受け入れ児童数の確保の双方の視点から、統一した。〔0歳児:3人、1歳児:5人、2歳児:5人、3歳児:15人、4歳児:28人、5歳児:30人〕

 

「寺部こども園」のある『豊田市立寺部小学校・寺部こども園』は、寺部こども園と寺部小学校が合築されている。その最大の成果は、豊田市が平成20年から取り組んできた「こども園」と小学校がつながることにより、幼保小の連携がハード面においても実現したということだ。

その概要は、児童数:380人、園児数:180人(0歳児:8人、2歳児:20人、3歳児:45人、4歳児:65人、5歳児:40人)となっており、施設内容はパンフレットの通り。

2階の『交流室2』は、小学校とこども園の連携を代表する取り組みが行われるスペースだ。ここには絵本があり、小学校の図書委員の有志が、子ども園児へ絵本の読み聞かせをするなどしている。また、地域ぐるみの教育の推進のための『地域支援室』を拠点として、地域との交流が活発に行われるよう計画されている。

20160909-1

こども園と小学校のソフト面・ハード面による連携は、豊田市の幼保小の一貫教育の理想形が出来上がったのだと思います。こども園と小学校が合築された最新機能施設は、こども園が子どもたちの就学に向けての助走期間ともいえる大切な時期を担うことができると確信しました。小1プロブレムの解消に少なからず貢献し、子どもたちの健やかな成長につながっていくことにまちがいありません。市私立保育園と市立幼稚園を「こども園」と打ち出すことで、保育園児も幼稚園児も同じ豊田の子どもだという、当たり前のこと前提に取り組まれているのが、この事業の政策の肝なのです。シンプルであり、かつ、洞察のある豊田市の「こども園」事業であると納得しました。一筋の道が鮮明に見えた研修でした。

民生常任委員会の行政視察研修報告・1

三豊市議会民政常任委員会の行政視察研修が、平成28年8月17日(水)~19日(金)の3日間の日程で行われました。研修先と目的は、京都府京丹後市「市立久美浜病院の取り組みについて」、愛知県豊田市「市立寺部こども園について」、岡山県総社市「障がい者千人雇用事業について」の3件でした。

 

1件目の、京都府京丹後市「市立久美浜病院の取り組みについて」の報告をします。

京丹後市立久美浜病院は、国保診療施設として国民皆保険制度の発足に伴い設立され、平成16年の市誕生とともに「地域包括ケアシステム」の中核を担う、170床の医療施設として今日を迎えている。設立時から医師確保や経営面で「苦難の道のり」を歩んできた。しかし、この試練が「地域包括ケアシステム」を構築する原動力になっている。それは、限られた人材が知恵を絞り、連携し協働することにより展開される、「地域づくり」の歴史であるといえる。

先頭に立ちここまで導いてきた赤木重典病院長は、自治医科大学の1期生として、この地に赴任し情熱をもって地域医療のあり方を一貫して模索し続けた方で、この人があればこその実績の数々であるといえる。限られた人材が「連携」し「協働」することにより導き出される「地域力の創造(マンパワーの結集)」、この動きは「地域づくり」そのものだった。

僻地における地域医療の未来のために克服しなければならない課題が2点ある。1点目は、医師不足による人材不足 2点目は、市町村合併により拡大したエリヤ(コミュニティ)に地域包括ケアシステムの理念を生かしていかに浸透させるか だ。この課題対応に「連携」をキーワードに6つの視点から、これまでの取り組みをふり返る。

連携その1 『医師間の支え合い』  限られた人材が個々の守備範囲を広げた。診療科を問わず、当直医が小児の救急・時間外診療を担当した。一方、難しい症例には迷うことなく小児科医に相談することを確認した。並行して、医師の応援を気軽に依頼できるよう、緊急医療業務手当を創設した。医師を呼び出しやすい環境の整備が、協力体制による「精神的負担の軽減」を導き、連携や一体感の中で仕事ができているという自覚が「楽しさ」を実感させ、広い守備範囲をカバーできることが「充実感」をもたらし、住民の信頼が「モチベーションを高める」ことにつながっていった。結果、医師たちの定着が得られることとなった。『医師間の支え合い』は、医師を迎え入れるための環境整備の一つと言い換えることができる。

連携その2 『多職種の共通認識』  連携の範囲を病院全体に広げる。院内の多職種が、問題意識を共有して課題解決に取り組み、大きな成果を導き出すことができた。利用件数が減少した訪問看護を活性化させるために医師、歯科医師、看護部長、病棟看護師、訪問看護師、歯科衛生士、理学療法士、地域医療連携室、事務職員などの多職種に参加を求め、「在宅支援委員会」を設置した。訪問看護師と主治医が緊密に連携して在宅療養を支えていることが住民に理解され、安心を提供することにつまがっている。

連携その3 『病院と施設の協働』  連携の範囲を院外に広げ、病院と特別養護老人ホームが協力して誤嚥性肺炎の予防に取り組んだ。特養の入所者の重度化が進行するに伴い、誤嚥性肺炎での入院延べ日数が大幅に増加した。歯科医師が入所者の摂食嚥下状況を観察し、早期の発見と歯科医師と歯科衛生士により実施される口腔ケアと摂食嚥下機能訓練につなげている。「最後まで口から食べる」ことへのこだわりは、「施設看取り」を可能にする一つの要素であることがわかる。

連携その4 『多施設・多職種の集い』  地域包括ケアシステムの理念を市全域に浸透させる仕掛けとして、多くの施設の多くの職種が定期的に「顔を合わせる」ことができる「場」の設定をした。「京丹後市NST(栄養サポートチーム)研究会」を設立し、「地域」を意識して開催された。参加者の構成は多岐にわたり、相互理解が深まり、情報や知識の共有ができ、参加者間に「ネットワーク」が構築され、「顔の見える関係」が広がった。限られた人材が連携し、協働することにより「地域力」が創造されたといえる。

連携その5 『引き出し』  専門医を『引き出し』と表現している。必要な時に日本のトップレベルの医療技術を提供できるよう、全国の専門医との連携を密にしている。「患者が動くより医師が動く方が親切」をモットーにしている。多くの『引き出し』を持つことは、僻地の中小病院にとって、病院のレベルの高さを保証してくれるかけがえのない財産だ。

連携その6 『医科と歯科の一体化』  平成16年に必修化された歯科医師臨床研修制度を先取りして、研修施設の指定を受けている。歯科部門の大きな転換点は、現在の堀歯科口腔外科診療部長と酒を酌み交わす機会に恵まれたことにある。かれの「住民の近くで医療がしたい」という熱い心に触れ、京都大学口腔外科学教室の理解をいただき着任が実現している。以後、口腔外科手術症例は右肩上がりに増加し、手術前精査や麻酔分野での医科・歯科連携が構築されていった。医科と歯科が連携し、一体となった取り組みを展開することにより、住民の期待に応えられることができる体制づくりが求められている。

 

次に、限られた人材が「連携」し、「協働」することにより導き出されるマンパワーの結集は「地域づくり」そのものであるが、京丹後市における医師確保の取り組み(人材確保)は、大きく分け4点ある。

1.京丹後市の医療確保奨学金制度  平成19年度より医学生、研修医を対象に設置:一般診療科は月額20万円(小児科・産婦人科希望者は月額25万円)

2.京都府立医科大学医学生の地域滞在実習  京都府北部の9病院で実施

3.京都府地域医療支援センター「KMCC 」が主導するキャリアパス  4年間の総合内科・総合診療科研修プログラム

4.京都第2赤十字病院研修医の受け入れ  平成23年度より2か月単位で受け入れ

成果として、現在奨学金受給者4名が久美浜病院で活躍中である。

 

終わりに、地方創生への思いがある。消滅可能性市町村からの脱却だ。その可能性はある。大都市部の40~50歳代の半数以上が田舎に住んでいいと考えているという調査結果があり、個人資産が流動化するような安心の政策が必要だと考えている。安心に暮らせる地域とは、地域包括ケアシステムが構築されているところだ。「何が求められているか」「何ができるか」「何をしなければならないか」を見極め、『ネットワークの構築』による『顔の見える関係の広がり』を確かなものとしたいと考えている。

 

「地域づくり」はマンパワーの結集だといわれますが、その核が不可欠です。地域医療にかける熱き想い、情熱を持って実行する人です。酒を酌み交わし、若き医師たちとも地域医療の素晴らしさを熱く語り合うことで、お互いを信頼し合うところから始まっているのです。赤木重典病院長とはそんな人なのです。

1件目の報告を終わります。