民生常任委員会の行政視察研修報告・1

三豊市議会民政常任委員会の行政視察研修が、平成28年8月17日(水)~19日(金)の3日間の日程で行われました。研修先と目的は、京都府京丹後市「市立久美浜病院の取り組みについて」、愛知県豊田市「市立寺部こども園について」、岡山県総社市「障がい者千人雇用事業について」の3件でした。

 

1件目の、京都府京丹後市「市立久美浜病院の取り組みについて」の報告をします。

京丹後市立久美浜病院は、国保診療施設として国民皆保険制度の発足に伴い設立され、平成16年の市誕生とともに「地域包括ケアシステム」の中核を担う、170床の医療施設として今日を迎えている。設立時から医師確保や経営面で「苦難の道のり」を歩んできた。しかし、この試練が「地域包括ケアシステム」を構築する原動力になっている。それは、限られた人材が知恵を絞り、連携し協働することにより展開される、「地域づくり」の歴史であるといえる。

先頭に立ちここまで導いてきた赤木重典病院長は、自治医科大学の1期生として、この地に赴任し情熱をもって地域医療のあり方を一貫して模索し続けた方で、この人があればこその実績の数々であるといえる。限られた人材が「連携」し「協働」することにより導き出される「地域力の創造(マンパワーの結集)」、この動きは「地域づくり」そのものだった。

僻地における地域医療の未来のために克服しなければならない課題が2点ある。1点目は、医師不足による人材不足 2点目は、市町村合併により拡大したエリヤ(コミュニティ)に地域包括ケアシステムの理念を生かしていかに浸透させるか だ。この課題対応に「連携」をキーワードに6つの視点から、これまでの取り組みをふり返る。

連携その1 『医師間の支え合い』  限られた人材が個々の守備範囲を広げた。診療科を問わず、当直医が小児の救急・時間外診療を担当した。一方、難しい症例には迷うことなく小児科医に相談することを確認した。並行して、医師の応援を気軽に依頼できるよう、緊急医療業務手当を創設した。医師を呼び出しやすい環境の整備が、協力体制による「精神的負担の軽減」を導き、連携や一体感の中で仕事ができているという自覚が「楽しさ」を実感させ、広い守備範囲をカバーできることが「充実感」をもたらし、住民の信頼が「モチベーションを高める」ことにつながっていった。結果、医師たちの定着が得られることとなった。『医師間の支え合い』は、医師を迎え入れるための環境整備の一つと言い換えることができる。

連携その2 『多職種の共通認識』  連携の範囲を病院全体に広げる。院内の多職種が、問題意識を共有して課題解決に取り組み、大きな成果を導き出すことができた。利用件数が減少した訪問看護を活性化させるために医師、歯科医師、看護部長、病棟看護師、訪問看護師、歯科衛生士、理学療法士、地域医療連携室、事務職員などの多職種に参加を求め、「在宅支援委員会」を設置した。訪問看護師と主治医が緊密に連携して在宅療養を支えていることが住民に理解され、安心を提供することにつまがっている。

連携その3 『病院と施設の協働』  連携の範囲を院外に広げ、病院と特別養護老人ホームが協力して誤嚥性肺炎の予防に取り組んだ。特養の入所者の重度化が進行するに伴い、誤嚥性肺炎での入院延べ日数が大幅に増加した。歯科医師が入所者の摂食嚥下状況を観察し、早期の発見と歯科医師と歯科衛生士により実施される口腔ケアと摂食嚥下機能訓練につなげている。「最後まで口から食べる」ことへのこだわりは、「施設看取り」を可能にする一つの要素であることがわかる。

連携その4 『多施設・多職種の集い』  地域包括ケアシステムの理念を市全域に浸透させる仕掛けとして、多くの施設の多くの職種が定期的に「顔を合わせる」ことができる「場」の設定をした。「京丹後市NST(栄養サポートチーム)研究会」を設立し、「地域」を意識して開催された。参加者の構成は多岐にわたり、相互理解が深まり、情報や知識の共有ができ、参加者間に「ネットワーク」が構築され、「顔の見える関係」が広がった。限られた人材が連携し、協働することにより「地域力」が創造されたといえる。

連携その5 『引き出し』  専門医を『引き出し』と表現している。必要な時に日本のトップレベルの医療技術を提供できるよう、全国の専門医との連携を密にしている。「患者が動くより医師が動く方が親切」をモットーにしている。多くの『引き出し』を持つことは、僻地の中小病院にとって、病院のレベルの高さを保証してくれるかけがえのない財産だ。

連携その6 『医科と歯科の一体化』  平成16年に必修化された歯科医師臨床研修制度を先取りして、研修施設の指定を受けている。歯科部門の大きな転換点は、現在の堀歯科口腔外科診療部長と酒を酌み交わす機会に恵まれたことにある。かれの「住民の近くで医療がしたい」という熱い心に触れ、京都大学口腔外科学教室の理解をいただき着任が実現している。以後、口腔外科手術症例は右肩上がりに増加し、手術前精査や麻酔分野での医科・歯科連携が構築されていった。医科と歯科が連携し、一体となった取り組みを展開することにより、住民の期待に応えられることができる体制づくりが求められている。

 

次に、限られた人材が「連携」し、「協働」することにより導き出されるマンパワーの結集は「地域づくり」そのものであるが、京丹後市における医師確保の取り組み(人材確保)は、大きく分け4点ある。

1.京丹後市の医療確保奨学金制度  平成19年度より医学生、研修医を対象に設置:一般診療科は月額20万円(小児科・産婦人科希望者は月額25万円)

2.京都府立医科大学医学生の地域滞在実習  京都府北部の9病院で実施

3.京都府地域医療支援センター「KMCC 」が主導するキャリアパス  4年間の総合内科・総合診療科研修プログラム

4.京都第2赤十字病院研修医の受け入れ  平成23年度より2か月単位で受け入れ

成果として、現在奨学金受給者4名が久美浜病院で活躍中である。

 

終わりに、地方創生への思いがある。消滅可能性市町村からの脱却だ。その可能性はある。大都市部の40~50歳代の半数以上が田舎に住んでいいと考えているという調査結果があり、個人資産が流動化するような安心の政策が必要だと考えている。安心に暮らせる地域とは、地域包括ケアシステムが構築されているところだ。「何が求められているか」「何ができるか」「何をしなければならないか」を見極め、『ネットワークの構築』による『顔の見える関係の広がり』を確かなものとしたいと考えている。

 

「地域づくり」はマンパワーの結集だといわれますが、その核が不可欠です。地域医療にかける熱き想い、情熱を持って実行する人です。酒を酌み交わし、若き医師たちとも地域医療の素晴らしさを熱く語り合うことで、お互いを信頼し合うところから始まっているのです。赤木重典病院長とはそんな人なのです。

1件目の報告を終わります。

 

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