「子ども・子育て支援新制度」研修会の報告

少子化対策は、安心して子どもを預けることができ、女性が生きがいを持って働くことのできる社会環境を整えることで、大きな効果が得られるものと思います。そのために今、「子ども・子育て支援新制度」の制度設計が、平成27年度からの施行に向け大詰めを迎えています。

私は、施行を目前にした現時点(平成26年8月)においても、この制度の全容がつかみ切れていませんでした。そのような時に、8月18日(月)兵庫県民会館で開催された、保育研究所主催の <子ども・子育て支援新制度と自治体行政の課題> の地方議員セミナーに参加することができました。ようやく新制度運用に向けての議論の入り口に、立つことができそうです。

新制度の基本的考え方は、これまでの 措置制度 から、利用者と保育事業者の 直接契約 を基本にした、介護保険制度と同じ仕組みです。保育は自己責任で、市町村は利用料補助として現金給付を行うというものです。

Ⅰ. 子ども・子育て支援法で行おうとする施策の全体像は、【子ども・子育て支援給付】と【地域子ども・子育て支援事業】の2分野で構成されます。

【子ども・子育て支援給付】は、  ①施設型給付(認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付とし、利用者負担の保育料は事業者が集金する。ただし、私立保育所は、児童福祉法24条1項により、市町村の責任において市町村が事業委託し現行通り委託費を払い、利用者負担の保育料徴収も市町村が行う。)   ②地域型保育給付(新たにできる事業で 小規模保育 家庭的保育 居宅訪問型保育 事業所内保育 に対するもの。)   ③児童手当   これらの3本柱となっています。

【地域子ども・子育て支援事業】は、法定化された13事業が用意されています。  ①利用者支援事業(新規):相談に応じ、適切なものを選択し利用できるよう支援   ②地域子育て支援拠点事業:つどいの広場   ③妊婦健診   ④乳児家庭全戸訪問事業   ⑤養育支援訪問事業、その他要支援児童・要保護児童等の支援に資する事業   ⑥子育て短期支援事業:ショートステイ、トワイライトステイ   ⑦子育て援助活動支援事業:ファミリー・サポート・センター   ⑧一時預かり事業   ⑨延長保育事業:時間外保育費用の助成   ⑩病児保育事業   ⑪放課後児童クラブ:対象者の拡充   ⑫実費徴収に係る補足給付を行う事業(新規)   ⑬多様な主体が本制度に参入することを促進するための事業(新規)   となっています。

Ⅱ. 制度の基本像は、【子ども・子育て支援給付】の分野で異なる事業基準の多様な保育が併存します。

『施設型給付』では、事業主体(公私)によって負担率が異なります。私立は、国1/2で県と市が1/4づつ負担します。公立は、市が10/10負担します。   〔保育所:1~5歳〕児童福祉法24条1項の適用で市の実施責任があるため、委託事業として施設補助の委託料とする。幼保連携型認定こども園への移行の強制はない。    〔幼稚園:3~5歳〕幼保連携型認定こども園への移行の強制はない。    〔認定こども園:0~5歳〕幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型がある。

『地域型保育給付』では、事業主体(公私)を問わず同一負担率となっています。国1/2で県と市が1/4づつ負担します。対象児は0~2歳で、保育児数と形態によって4つの事業形態があります。    <家庭的保育>5人まで    <小規模保育>6~19人まで、保育士資格者割合によって3事業形態がある(A型:100%、B型:50%、C型:0%)    <事業所内保育>    <居宅訪問型保育>

Ⅲ. 利用手続きは、認定制度が導入され利用申し込みに対し、市において認定区分を行います。    ≪1号認定≫3歳以上児で保育の必要性なし    ≪2号認定≫3歳以上児で保育の必要性あり(標準時間と短時間の2区分)    ≪3号認定≫3歳未満児で保育の必要性あり(標準時間と短時間の2区分)    このような区分認定後の市における利用調整は、保育所がこれまで通りの市責任による受付であると同時に、直接契約(認定こども園、家庭的保育、小規模保育、事業所内保育、居宅訪問型保育)利用についても、利用申し込みを市が受付け利用調整することとなっています。なお、1号認定(幼稚園利用)は現行通り各園で受け付けます。

以上が、私が現状確認できた概要です。複雑な制度体系であるため、利用者である保護者の皆さんにとって、理解しにくい点が噴出するものと思われます。9月議会において、子ども・子育て支援新制度に係る条例提案があるものと思われます。今回の研修で学んだことを基礎として、三豊市に相応しい事業に創り上げるべく、議論を重ねていかなくてはなりません。研修の中での講師の言葉に「公立は自治体独自の形ができます。なぜなら、国のカネが入っていないからです。」がありました。私たちの知恵と発想で、私たちのまちならではの面白い展開の可能性あることに気付くことができました。議員として、市民の皆さんからの問い合わせや質問に適切に対応することで、安心して子育てができ働くことができるまちをつくるために、ともに歩んでいかなければならないと思っています。

有吉佐和子 没後30年の報に思う

少子高齢化と人口減少社会の到来とともに、消滅可能性都市の公表が衝撃となっています。出産適齢年齢とされる20~39歳の女性の人口推移が指標となっています。人口減少の根本的問題は、女性が自らの人生において子どもを産み育てながら、活き活きと豊かに生活できる社会を構築していかなくてはなりません。

一方、労働人口不足解消のため、女性の社会進出には大きな期待が寄せられており、より仕事がしやすい環境整備が急がれています。そこでは、女性が仕事を通して確かな個人として生きることができ、その中で自己実現できる環境が整うことが求められています。

有吉佐和子という作家がいました。没後30年を迎え再び光が当たっているそうです。高齢者介護を取り上げた 「恍惚の人」 や、子どもの食生活の危機感から 「複合汚染」 の作品を残しています。有吉さんは、このような社会派作家のイメージとは別に、実は、働く女性を通して女性の生き方を問いかけた、現代にも通じる先駆的な作家なのです。少子高齢化と人口減少が女性の生き方に大きく影響されているのは紛れもない事実です。有吉さんは、半世紀近くも前に 「恍惚の人」 で高齢者介護を題材にし、家庭生活で培った 〔女性の視点〕 が生かされており、現代における、女性にとって家庭と仕事が絡み合ったものであることを、いち早く察知していたのです。有吉さんが今の時代に生きていたならば、働く女性の視点と生活者の目線で、どのような作品を執筆していたのでしょうか。

私の住む地域に、今月15日(金)から介護施設が増設オープンされました。また、今日の新聞(16日)では、近所にあるのと同じコンビニエンス(ローソン)チェーンが、来年から埼玉県で介護と健康サービスを扱う事業を始めるとの報道が目に映ります。私たちの生活は、少子高齢化による人口減少によって、思わぬところから、しかし、確実に変化しているのだと感じます。