会派「清風会」行政視察研修 報告(令和元年)・2

前回に引き続き研修報告をします。8月23日(金)と24日(土)の2日間は、新潟県立大学で開催された 第11回生活保護問題議員研修会「地方から生活保護行政は変えられる! いのちを守る自治体に」参加しました。

 

第1日

●基調報告:生活保護の現状と改革の論点~地方は何ができるか 講師=吉永純先生(花園大学)

生活保護行政の運用や裁判の状況は、保護基準の引き下げが、2013年から裁判であらそわれており、2020年春に名古屋地裁で判決の見込みである。生活するに最低限の生活費の根拠が不明であることが本質的問題である。例えば、大学等進学や自動車所有、稼働能力等が個別論点となる。

地方から生活保護を変えることの視点として ①法定受託事務としての自治体の事務の在り方 ②地方議員の活動領域から生活保護を考える という2点がある。①については、首長の姿勢と議会の動向・議員の活動、行政組織の運用、職員集団などで大きな格差が生じる。②については、生活相談や市民と一緒に活動する行政チェック・調査を行うとともに、議会における質問や条例づくり、国への要望・意見書を上げる、首長選挙で変える等がある。

自治体で発生した具体的問題や議員と一緒にやってきた活動事例に基づいた報告によって、生活保護行政の現状と議員としての活動の在り方を再認識することができた報告であった。

 

●ミニシンポ:地方から、生活保護行政を変えられる! 小久保弁護士をコーディネータとして、新潟県立大学小澤先生による「新潟県における福祉事務所のあり方に関するアンケート調査結果報告に始まり、神奈川県小田原市と大阪府堺市から、活動報告がされた。

小田原市からは、記憶に残る「保護なめんなよジャンパー事件」で巻き起こったどん底からの、生活保護行政の改革と復活の報告をいただいた。堺市からは、若手ケースワーカーからの発案で、保護世帯の実態調査を行うことで、国の制度改善へとつながっていった報告があった。

地方自治体からのいずれの報告も、地方から生活保護行政は変えられることの可能性が伝わってきた。

 

●特別報告:福祉事務所における自立支援の取り組み 新潟県見附市から取り組み事例報告があった。

自立とは、‟人やサービスに頼りながら上手に生活すること” ‟社会とのつながりを持ち、その人らしい考えや自己決定が尊重されること”だ。自立支援としての関わり方は、寄り添い支えていく伴走的支援を基本的考えとして、就労支援事業を実施することで、意欲喚起としてのボランティア活動、農作業(居場所)を活用した日常生活自立支援から、社会生活自立支援に導いていこうとする取り組みが紹介された。

 

第2日

●第1分科会:生活保護なんでもQ&A  森弁護士、今井先生(十文字学園女子大学)他

生活保護行政とその運用に携わってきたベテラン講師による基礎講座である。生活保護を正しく理解し、市民の権利を守るために地方議員としてやらなければならないこととして、正しい運用がされているのかや、違法・不適切ではないのかをチェックし、改善・改正されなければならないことの指摘があった。

欧州の先進国といわれる国々との比較において、日本の保護の捕捉率が1/3~1/4程度であり極端に低いことや、生活保護法の基本理念すら現在の生活保護行政は、行われていない現状であることのお話があった。

生活保護制度・生活困窮者自立支援制度に関する議会質問の心得については、カテゴリーが3点ある。 1.制度そのものの課題(生活保護基準額は厚労大臣が決めることとなっている) 2.制度運用の課題(福祉事務所の姿勢・考え方) 3.実施機関における組織体制の課題(1人のケースワーカーの受け持ち担当の過重責任、人員の問題)

議会における質問の切り口が明らかになったように感じた。

 

「地方から生活保護行政は変えられる!命を守る自治体に」の2日間の研修を通して、地方議員として生活保護の正しい運用に対してできることは何かを考えさせられました。現場では、日々生活保護の適正な運用によって、貧困世帯を支援しようと活動している職員が多くいます。その活動が円滑に推進できるよう、専門職の採用と人員配置・研修制度等の改善に向けて、今回の研修の成果を役立てていかなければならないと考えています。

 

以上で、3日間の会派の行政視察研修報告を終わります。

 

会派「清風会」行政視察研修 報告(令和元年)・1

三豊市議会会派「清風会」の行政視察研修を、令和元年8月22日(木)~24日(土)の3日間、新潟県三条市と新潟県立大学で実施しました。

8月22日に、三条市役所栄庁舎において、「子ども・若者総合サポートシステムについて」を、23日・24日には新潟県立大学を会場とする、第11回生活保護問題議員研修会『地方から生活保護行政は変えられる! いのちを守る自治体に』に参加しました。

 

三条市は平成17年に、1市1町1村の3市町村合併により新「三条市」として誕生した。現在人口98000人弱、面積431.97㎢で、三条鍛冶の伝統を受け継ぎ金属加工を中心とする産業集積地である。近年では、伝統の技と最先端技術が調和する金属産業都市となっている。

「子ども・若者総合サポートシステムについて」

特筆すべきは、子育て支援に関する窓口の一本化を、組織機構の見直しにより、平成20年4月から『子育て支援課』を教育委員会に設置したことだ。その目的は、厚生労働省の福祉健康部と文部科学省の教育委員会で窓口が分散していて分かりにくかったことの解消と、就学前から義務教育への切れ目のないかかわりを確実なものとするためだ。

このような教育委員会に置かれた子育て支援の窓口の一本化には、市長の子育て支援に対する強い思いと、それを形にする当時文科省から出向していた教育部長の働きが大きい。

教育委員会『子育て支援課』は、幼児教育、家庭教育、妊婦、子ども医療、母子保健、子ども予防接種、児童福祉を担っており、保健所、幼稚園等の就学前施設の管理運営も担当している。ワンフロアーに義務教育を担当する学校教育課(平成25年度から小中一貫教育推進課となっている)があることで、日常的に連携できる効果は大きい。

【子ども・若者総合サポートシステム~ライフステージに応じた切れ目のない子育て支援~】は、子ども・若者という「三条市民」を、妊娠期から就労に至るまで、切れ目なく総合的に必要な支援と行うため、市がその情報を一元化し、関係機関が連携して個に応じた支援を継続的に行えるようにするシステムだ。発達障がい児、被虐待児、不登校・非行児、引きこもりの若者他支援が必要なもの市民からの情報・相談が、子育て支援課にある『子どもの育ちサポートセンター』に情報が集まるようになっている。関係機関が情報を共有し、代表者会議と実務者会議による検討会議を行っており、必要に応じて個別ケース検討開始も実施している。この一連の活動を「三条市子ども・若者総合サポート会議」として組織化している。

子ども・若者総合サポートシステムからの気づきとして、新たな課題が見つけられた。幼保小の連携において、引き継がれる子どもの中に発達障がいと思われるケースが増えており、保育(幼児教育)段階での早期の対応と継続支援が必要であることから、『三条っ子発達応援事業』が展開されることとなった。この事業の基本的考え方は、子どもの育ちや個性は一人ひとり異なり、発達の凸凹がある子どももおり、早期に子どもの育ちや個性に気付きそれぞれにあった支援がされ、意欲の向上により自信が持てることで、学校・社会に適応できるように導くことである。

事業の概要は、0歳児~義務教育終了までの子どもが、持てる力を十分発揮しながら成長することを目的として、保護者・保育所(園)・幼稚園・小学校・関係機関・行政が連携し、継続的に子どもの育ちを応援するというものだ。その内容は、気づき事業、相談事業、支援事業の3つを総合的に実施するために、気づき事業として「年中児発達参観」で子どもの様子を発達応援チームと保護者が共に確認し、相談事業や支援事業につなげることで、『早期療育事業』である【児童発達支援事業所(子ども発達ルーム:市直営)】において日常生活に導くことに取り組んでいる。

三条市の発達支援体系は、気づき~相談~支援のつながりが、子どもの育ちに対しその子に関わる全ての支援者が連携できる仕組みを構築しており、三豊市にも取り入れることの多いことに気付いた、有意義な研修であった。