地域医療情報交換会

地域医療政策セミナーを受講した翌日は、埼玉県蕨市議会会派新翔会と地域医療の核となる市民病院建設についての情報交換を行うため、蕨市役所を訪問しました。

 

蕨市は埼玉県の南部に位置し、5.11㎢の市域の中に75,000人が暮らす日本一人口密度の高いまちだ。近隣の市に複数の病院がある中で、老朽化した市立病院の建て替え計画が、存廃も含めて検討されている。

現在の病院は、外来診療として 内科、小児科、外科(皮膚科)、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科があり、病床数は130床となっている。

三豊市立みとよ市民病院と類似した規模であることから、公立病院の役割と機能を備えた施設とはどのようなものか、及びその建設手法について情報交換を行った。

 

『CM方式及びECI方式のメリット・デメリットは』

CM方式

【メリット】 ●病院発注の場合、技術者不在であるためマイナス面をカバーする  ●精度の高い基本計画に基づく概算工事費の積算による、ローコスト建築が可能 ●コンパクトな建物形状でシンプルな矩形の建物 ●実績に基づくきめ細かな支援によるプロポーザル審査の実施で、最適な設計者・施工者の選定 ●基本計画から開院までの工期短縮

【デメリット】 ○CMに対する新たな費用が発生 ○CMの技量によって左右される

ECI方式

【メリット】 ●設計者と施工予定者の協働により実施設計を行うため、予算額内でできる ●基本設計中に施工予定者選定の準備が進められるため工期短縮ができる ●基本設計に対して施工予定者の保有技術により、コストの低減が図れる ●施工予定者は、必要な資機材やその時期が把握できるため、安価な時に押えれるなどコストの低減につながる

【デメリット】 ○施工予定者を選定するプロセス(プロポーザル等)が複雑になり、発注者の負担が増え有識者の助言が必要(そのためのCM) ○設計者の業務範囲と施工予定者の技術協力の範囲が重なる部分があるため、事前に役割分担を明確に ○コスト低減は図れるが、結果として施工予定者1社からの工事費の見積もりになる

 

『施設整備に当たり特に配慮する点』

① 工事を予算内に収め、ローコストでハイクオリティな施設とする

②診療の流れに沿った部門構成や、コンパクトで機能性を考えることで、無駄をなくし効率的で使いやすい施設とする

③免震構造で地震災害に対する安全性を高め、災害に強い施設とする

 

蕨市議会会派新翔会は9名の会員を有する第1会派です。内4名が新人議員であり未来の地域医療の観点に立ち、市立病院の在り方を熱心に調査研究しています。今回の情報交換会をきっかけに、さらなる地域医療政策の学びを深めていきたいと考えています。

 

 

 

「地域医療政策セミナー」研修報告

令和6年(2024)10月30日(水)、東京都都市センターホテルで開催された、全国自治体病院経営都市議会協議会主催の「第18回地域医療政策セミナー」に参加しました。

 

協議会会長の喜多浩一金沢市議会議長から挨拶があり、その後2件の講演を聴講した。

1件目は、厚生労働省大臣官房審議官(医政、口腔健康管理、精神保健医療、災害対策担当)(老健局、保健局併任)森真弘氏による「令和6年能登半島地震を踏まえて~災害時の医療体制構築と今後の地域医療維持、確保の課題~」の講演だ。

●自治体が災害が発生する前(平時)から医療施設等に備えて欲しいこと  ①避難に関する注意喚起を行う ②非常用自家発電設備(設備・燃料の確認等)、水や食料、医療資源等の備蓄状況の確認 ③医療機関の連携体制の構築・確認

●平時より地域の医療事情を知らねば、災害時に的確な支援はできない

●能登半島地震の後、これから  ①人口減少や高齢化の状況を加味した平時からの医療計画の実現 ②平時や災害時にとらわれない、地域のレジリエンス向上に向けた施策の継続

●災害医療の体制の見直し  ①DMAT・DPATの派遣や活動の円滑化や様々な保健医療活動チーム間での多職種連携を推進する ②災害時に拠点となる病院や他の病院が、その機能や地域における役割に応じた医療の提供を行う体制の構築 ③豪雨災害の被害を軽減するため、地域と連携して止水対策を含む浸水対策を進める ④医療コンテナの災害時における活用を進める

●災害拠点病院について  災害時に多数発生する傷病者、被災した医療機関の入院患者に対して、災害拠点病院を中心として、被災地内外の医療資源を活用できる医療提供体制の整備

●災害医療コーディネーター  医療コーディネーターとの連携、DMAT等の医療チームの派遣調整を実施する人材

●広域災害・救急医療情報システム(EMIS)  基本機能として、医療機関基本情報と被災医療機関の緊急情報他を有する

●事業継続計画(BCP)  病院機能の損失をできるだけ少なくし、機能の立ち上げ、回復を早期に行い、継続的に被災患者の診療を行うための計画 ①病院等における耐震診断・耐震整備の補助事業 ②医療施設非常用自家発電装置設置整備事業 ③医療施設給水設備強化等促進事業 ④医療施設浸水対策事業 ⑤医療施設等の災害復旧に対する補助金事業

●地域医療構想について(今後の展望)  地域ごとに必要医療数を見直さなくてはならない。医療需要の変化:入院患者数は 、外来患者数は、在宅患者数は

●「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化

●医師の高齢化も進む

以上を包括した新たな地域医療構想については、2024年ごろを見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療介護等を含め、地域の医療提供体制全体の地域医療構想として検討予定

 

阪神・淡路大震災や東日本大震災に続く能登半島地震から導き出された、「救急医療と災害医療とはちがう。しかし、救急医療ができなければ災害にも対応できない」という視点での説明は、とても納得できる有意義な講演でした。

 

2件目は、まんのう町国民健康保険造田歯科診療所主任歯科衛生士の丸岡三紗しによる「県内一の過疎地域での挑戦!こどもも若者も高齢者も大事にするまちづくり~高齢者のためのお買い物ツアーや移動支援&児童館のないまちで取り組む子どもと子育て世代の居場所づくり」の講演だ。

香川県まんのう町琴南地区では、「人の健康を守るのは医療だけではない」を掲げて、医療関係者に民間を加えた在宅医療・介護の連絡会を設け、月一で集まってケース検討などを行っている。民間を入れることでフラットな運営ができることとなった。

ここでは「社会的処方」がフレイルの改善になることを活動の主眼に置いている。「社会的処方」とは、地域とのつながりを処方することで問題解決を図るというものだ。例えば、診察室で患者さんが「さみしい、日ごろ話す相手がいない」と言ったら「では、このサークルはどうでしょう」と地域の資源を紹介してその場で連絡を取る対応の仕方。

「健康を目的としたアプローチは本当の予防が必要な人には届かない」ということだ。

運転免許証を返納するとフレイル(虚弱)になるのか。足がないから買い物に行けなくなったストレスで痩せた事例が多くある。移動手段がないのは重要であることから、『週1で買い物ツアー』『無料通院バス(町からの補助)』を実施した。

唯一の中学校が廃校になる。そこを活用し地域住民が集えるコミュニティスペースを作った。需要は子育て世代にある。地元クリエイターと協力し、子育て世代のための居場所づくりを開始した。旧琴南中学校がみんなのコミュニティスペースとなった。今の時代の子育て支援に必要なことは「親御さんを楽にしてあげること」だ。

目の前の一人ひとりの困りごとを真剣に聞き、一つ一つ解決していく、その地道な積み重ねがまちづくりだ。

 

こんな近くに、こんなにクリエイティブでバイタリティのあふれた人がいたのに、気づいていなかったことに深く反省しています。「社会的処方」という視点は医療・介護・子育てなどの社会的課題を、地域資源をもって解決していこうとする、まちづくりの本質を射抜いています。市民ニーズと解決方法は、行政の中だけではない社会の中にあるという、当たり前のことを再認識させられた講演でした。

 

「地域医療政策セミナー」研修報告を終わります。

会派清風会視察研修報告(東北編)・2

会派研修の2件目は、岩手県盛岡市で開催された「第19回全国市議会議長会研究フォーラムin盛岡」の参加です。

大会テーマは「主権者教育の新たな展開」で、10月9日(水)と10日(木)の2日間の日程で行われました。

 

パネルディスカッションは、「地方議会の課題と主権者教育」をテーマに、コーディネーターを井柳美紀氏(静岡大学人文社会科学部法学科教授)が、パネリストに土山希美枝氏(法政大学法学部教授) 越智大貴(一般社団法人WONDER EDUCATION代表理事) 渡辺嘉久(読売新聞東京本社社会教育ネットワーク事務局) 遠藤政幸(盛岡市議会議長)で行われた。

コーディネーターから、全国都道府県・市・町村議会議長会で決議した『地方議会に関する地方自治法改正を踏まえた主権者教育の推進に関する決議』に基づく、主権者教育の推進の課題と方向性について示された。地方議会の課題として●投票率の低下 ●無投票当選の増加 ●議員の性別や年齢構成の偏り がある。推進の方向性は ◯議会に対する関心を高め、理解を深める主権者教育を一層推進する ◯出前講座や模擬議会など、議会自らが主体的に行う主権者教育の取り組みに対する支援を講ずる

パネリスト4名から ●「誰がための主権者教育か」を見つめ直すことが大切であり、議会が主権者教育をするべきか疑問がある ●政治や選挙・よのなかをおもしろく学びあい・みんなで創るシティズンシップ教育・主権者教育の研究実践と場づくり ●何が投票を促すのか。「政治とつながる」とは?「政治」は「未来」「政治とつながる」=「未来とつながる」「政治を考える」=「未来を考える」⇒「自分の未来を創造する」 ●盛岡市議会における高校生議会の開催によって市政の課題について意見交換し提言をまとめた。また、市議会が大学に「おでかけ」し、学生と意見交換を行う事業

 

課題討議は、「主権者教育の取り組み報告」として、コーディネーターに河村和徳氏(東北大学大学院情報科学研究科准教授)、事例報告者に白鳥敏明氏(伊那市議会前議長) 諸岡覚氏(四日市市議会議員:第83代議長) 服部香代氏(山鹿市議会議長)で行われた。

コーディネーターから、地方議会と主権者教育には総合学習的な発想が役に立つ。地域の課題を発見し、それを議論し、改善策を提言するサイクルが「政治」であるならば、地域の課題の棚卸をおこない、政策の進捗状況を調べることだ。

事例報告者から ●伊那市議会の事例として、若い世代、特に高校生に議会に関心を高めてもらうために、高校生の議会傍聴、高校生との意見交換等の企画を決定し実施した。成果として ①高校生からの意見・提案 ②意見交換に参加した高校生による請願の提出 ③高校生からの要望を執行部へ ●四日市市議会の事例として、「ワイ!ワイ!GIKAI」と名付けて高校・大学に出向いて出前型意見交換会や、生徒と議員の選挙ポスター作り、高校生議会等の実施 ●山鹿市議会の事例としては、なぜ小学校でのシティズンシップ教室に取り組んだのか。議論して最終的に意見を集約していく経験を子どもの時から経験しておくことが大事。企画から実施に至る検討と模擬投票の実践で大きな波及効果

 

「議会改革をしても投票率は上がらなかった」という四日市市議会の報告は、議会本来の在り方を考えさせられました。市民不在の改革では意味がないということであり、当たり前のことですが市民のための議会でなければならないということです。その取り組みは、それぞれの議会と市民との関わりによって形作られていくものなのだと感じた研究フォーラムでした。

会派清風会視察研修報告(東北編)・1

三豊市議会会派清風会の視察研修報告(東北編)をします。

令和6年(2024)10月8日(火)~10日(木)の日程で、宮城県仙台市にある(株)パナソニックシステムネットワーク開発研究所(PSNRD)と岩手県盛岡市で開催された、全国市議会議長会研究フォーラムに参加しました。

 

1件目の研修はPSNRDで、次世代ネットワーク技術開発の最前線を訪問した。無線通信、パワエレ・エネマネ、画像処理、スマート端末 を主テーマに未来のイノベーションに技術で応えるための開発研究を行っている。

説明をいただいた研究中の技術として ①6G ②肌分析エンジン ③60GHzミリ波Wⅰ‐Fⅰ端末 ④AI需要予測フードロス削減実証 ⑤太陽光・水素燃料、蓄電池等を組み合わせたRE100実証施設 ⑥スマートモビリティインフラ研究のための技術研究組合の設立 の6点だ。

 

いずれも、これらのテクノロジーが近未来で複合的に融合・連動し、世界を豊かにしていくのだと感じました。たゆまぬ開発・研究が、近い将来三豊市内ベンチャー民間企業とつながって、地域経済の活性化と豊かなまちづくりに貢献することを期待できる視察でした。

会派からの要望書

12月2日(月)三豊市議会令和6年第4回定例会の開会初日終了後、会派清風会8名から山下市長あてに「要望書」を提出しました。

 

「要望書」

1.公共施設包括管理業務委託の導入について

三豊市においては、人口減少、少子高齢化が加速度を増して進み、これに連動して市の基幹財源である税収や地方交付税も減少し、財源が日伯することが懸念されている。

一方で当市には合併を経て、用途を同じくする公共施設が多数存在しており、近い将来、これらの公共施設は老朽化が進み、維持管理や更新費用の肥大は避けられない現実として突き付けられている。

このような状況下、固定費の削減が当市に課せられた至上命題であり、事業の棚卸が進められている今、公共施設の包括的管理業務委託方式を導入し、施設管理業務の軽減による事務事業の効率化と専門性の向上を図り、市民サービスのさらなる向上と長期的な視点に立った、総合的かつ計画的な管理を推進するよう要望する。

 

2.公共工事での地元企業の育成、地元経済の活性化について

本市での公共工事で、下請施工を必要とする場合には、三豊市工事請負契約約款第7条第2項に定める地元業者への優先的な発注を徹底すると共に、施工に必要な各種建設資材の調達においても、地元資材(機械等の購入またはリースを含む。)の積極的な活用に努めるよう要望する。

 

3.土地改良事業(原材料支給事業)における物価高騰対策について

土地改良事業における原材料費においては、近年の諸物価が上昇傾向となる中で、代表的な生コンの1㎥当たりの価格は、3年前と比べて約23%も上昇し、今秋からさらに上昇している。

この状況は本市の基幹的産業である農業の発展や集落施設の共助・自助による維持管理に大きな影響を与えており、早急に対策を講じる必要がある。

本市の財政状況下、その財源の調達は困難であれども、万策を講じて財源を捻出し、当初予算の対前年度増額を要望する。

 

以上3点について、三豊市役所特別応接室において山下市長に「要望書」を手渡ししました。