総務教育常任委員会行政視察研修 報告・4

総務教育常任委員会行政視察研修の報告の最後となる4件目は、8月21日(金)午前に訪問した石川県白山市における、「地産地消推進計画・食育」についてです。

 

白山市は、平成17年2月1日に松任市、美川町、鶴来町、河内村、尾口村、白峰村の8市町村による新設合併で誕生した。石川県加賀地方の中央にあり、金沢市の南西部に位置している人口112,000人余、面積754.93㎢で、白山国立公園や手取川、日本海など、海岸部から山間部まで山・川・海の豊かな自然に恵まれている。「白山手取川ジオパーク」として日本ジオパークに認定されているとともに、古くは、手取川の扇状地であることから、物流拠点として霊峰白山のふもとに建立された多くの寺社の門前町として栄えてきた。現在は、積極的な企業誘致等により、商工業のまちとしても発展してきた。

白山市の「地産地消推進計画・食育」の取り組みは、平成21年4月に県内で初めて『地産地消課』が新設され、「食育・地産地消」を担当することから始まる。

先ず、●「地産地消」をどのように進めるのか? ●市民(消費者や生産者)は何を望んでいるのか? ●いつ、どこで、何が採れ、いつ、どこで、、何を販売しているのか? ●地元農林水産の消費拡大と流通促進をどうするのか? の課題の整理をした。

平成22年7月に、計画期間を平成22年度~26年度の5年間とする『白山市地産地消推進計画』を策定し、3つの柱と8つの主要施策を決定した。現在は、平成27年度~31年度の第2次計画期間中である。ちなみに3つの柱と8つの主要施策は、 ‟はぐくむ”:①安全・安心な地元農林水産物の生産体制の充実 ②地元農林水産物を活かした加工品の充実 ‟つなぐ”:③地元農林水産物の販路の確保・開拓 ④交流・体験活動の促進 ‟いただく”:⑤市民意識の啓発 ⑥学校給食等における地元農林水産物の使用促進 ⑦飲食店等における地元農林水産物の利用促進 ⑧食育活動の推進 だ。

取り組み方針は3点ある。

1.情報発信の強化(HP・広報・報道機関への情報提供):「白山を食べる 地産地消ガイドブック」の作成、他

2.推進体制の整備(関係者の情報共有の連携推進):「地産地消推進会議」の設置や「地産地消推進計画」の策定、他

3.市民意識の高揚(啓発事業の実施・市民参加の促進): ➊食育活動の推進 ㋐幼児料理教室「キッズ☆キッチン」の開催 ㋑「早寝・早起き・朝ごはん」運動の展開  ❷食農教育の推進 ㋐生産者との交流給食会の開催 ㋑「親子生産物収穫体験ツアー」の実施  ❸学校給食への地元食材導入推進 ㋐「地元産コシヒカリ1等米」の導入 ㋑地元産農林水産物の積極的な導入  ❹地元農林水産物の消費拡大の推進 ㋐「地産地消」簡単料理レシピ公募・審査会の実施 ㋑「1日おにぎりカフェ」の開催 ㋒郷土料理・伝統料理の伝承 ㋓「地産地消」食の商談会の開催 ㋔『Marché de Hakusan(マルシェ・ドゥ・ハクサン)』の開催  ❺地元農林水産物の活用促進 ㋐「地産地消推奨店」の募集・登録 ㋑「地産地消推奨店」スタンプラリーの実施  ❻生産者等との交流促進 ㋐「地産地消推進交流会」の開催  ❼ブランド化の推進 ㋐「ブランド認証協議会」を設立(認定品目数:8品) ㋑「ブランドマーク」の商標化  ❽市民意識の啓発 ㋐「食育フォーラム」の開催 ㋑「地産地消講演会」の開催

これからの「地産地消」は、農業は食料生産を担う大切なものである、という認識のもとに食材を通して地元の良さを再発見していかなくてはならない。そのためには、情報発信と人づくりである。だから、市民協働による「食育・地産地消」のまちづくりを、これからも続けていく。

 

わがまちの良さに気付き、「地産」の食に誇りを持った地域挙げての「地消」の、戦略的な息の長い取り組みがなくてはなりません。「地元」を信じる情熱ある人々の存在があればこその「地産地消推進計画・食育」なのだと、再認識させられた研修でした。

 

以上で、三豊市議会総務教育常任委員会行政視察研修、3日間4件の報告を終わります。

総務教育常任委員会行政視察研修 報告・3

総務教育常任委員会行政視察研修の3件目の報告は、8月20日(木)午後に訪問した長野県上田市における、「若者サポートステーションについて」と「幼保小中連携の取り組みについて」です。

 

上田市は、平成18年3月6日に上田市、丸子町、真田町、武石村の4市町村による新設合併で誕生した。人口16万人、面積552.04㎢で、県内では3番目の規模を持つ、県東部の中核都市だ。戦国時代に活躍した真田氏の発祥の地であることで有名だ。また、多くの文化遺産が残されており、「信州の鎌倉」の異称で呼ばれている。現在は、製品出荷額で安曇野市に次いで県内2位である。

「若者サポートステーションについて」は、事業の受託団体である認定NPO法人侍学園が運営する『若者サポートステーション・シナノ』から説明があった。

15~39歳を若者というが、その内不登校13万人、パラサイトシングル1,200万人いるといわれている。また、近年若者の非社会的傾向が強くなっており、教育、職業、職業訓練のいずれにも参加していない15~34歳のニートは84万人いるとされ、引きこもりは70万人、予備軍は155万人いるとの内閣府の発表もある。

例えば、引きこもり100万人いるとし、本来就労しているはずの30代が3割で30万人とする。30万人に1か月5万円の投資をすると150億円となり、1年間に換算すると1,800億円もの社会投資が必要となる。この若者たちを立ち直らせて就労に導くのが『地域若者サポートステーション・シナノ』の役割だ。

サポートステーション(サポステ)は、厚生労働省が認定したNPO法人や株式会社等が運営しており、全国に160か所設置されている。長野県には、3か所ある。

現在、サポステ・シナノが取り組んでいる中間就労事業に、【サムライバリュー】がある。仕事場は、若者の自尊心を傷つけないために、カフェのような就労体験環境にしている中古書籍とコーヒーの店『ことば屋』だ。これが、、アマゾンの中古書籍物流事業者である「バリューブックス」と侍学園が連携した中間就労事業となっている。中古書籍の検品・クリーニングを行いPC入力してアマゾンへ出品するとともに、商品を『ことば屋』の店頭に陳列し、アマゾンから入った注文を受注し本を探し出し梱包・発送する。

安心できる環境であるならば働けるし仕事はできる。そんな若者に働く機会をつくっている。このような地道な活動によって、サポステ・シナノは年間100人の若者の就労に結び付けている。

働けない若者を、社会に適応させようとするべきなのでしょうか?それとも、彼らが働きたいと思う社会に変わらなければならないのでしょうか?断崖と絶壁に立つ思いがしています。

 

「幼保小中連携の取り組みについて」は、上田市では、子どもたちの育つ環境の激変や育てる親自身の未熟さによる育児不安、また、年間に出生する子どもたちのうち1割が発達障害の疑いがあるとの現状の中、教育委員会と健康こども未来部(保育課、子育て・子育ち支援課)が連携を図り、幼児期から義務教育期までの子どもの視点に立った一貫した育成に取り組んでいる。幼保小中の連携を推進し、家庭や地域、学校が共通した認識で子どもたちの成長を支えていくことが重要であることから、幼保から小、小から中へのスムーズな移行を図るため「ブロック会議」を設置し、情報交換や交流をおこなっている。

上田市の掲げる保育目標「心豊かな子ども」と、教育委員会目標「次代を担う人づくり」を実現するために、幼保小中の連携によるギャップを少なくした接続をいかに行うかが主要課題であり、幼児教育と小学校教育といった、立場によって子どもの見え方が違うことを前提として、取り組むこととしている。

特に、幼保小連携事業は、「接続期が子どもにとって安心した学びの場であるためのものであり、決して就学のための教育準備期間であってはならない。」として、子どもたちにとって毎日の全てが一所懸命の本番であり、練習では決してないということを基本にしている。

園の生活における子どもの特性を知る保育士は、子どもの情報や支援方法を学校へ伝えることで、子どもが安心して小学校生活をスタートすることができるようにし、学校職員は子どもの持っている力を発揮させる教育活動を計画実践する。また、各施設を訪問しあい職員間の交流を行う中で、幼保小の生活リズムや運営目標の違いをよく知り違いを知ったうえで、それぞれの生活や教育環境を見直す。これらの取り組みから、一例として、不登校になりそうな子が、保育士と接することで立ち直ったという成果があった。

校長・園長合同会議は、それぞれの立場から見た「幼保小中連携の必要性について」理解を深める役割を担っている。また、中学校区ごとの幼保小中で構成する「ブロック会議」は、子どもの記録を引き継いでいくことができ、子どもの連続した成長につないでいくことができる。

上田市の健康・福祉と教育関係部局の連携によって、「上田市未来っ子かがやきプラン」が結実している。

幼保小中の一貫した子育てと教育で最も求められるものは、子どもの成長を幼保小中の先生たちや地域の大人が、途切れることなく見つめていける環境づくりなのだと、再確認することとなりました。

 

以上で、上田市における研修報告を終わります。

総務教育常任委員会行政視察研修 報告・2

総務教育常任委員会行政視察研修の2件目の報告は、8月20日(木)午前中に訪問した長野県千曲市における「信州千曲ブランドについて」です。

 

千曲市は、平成15年9月1日に更埴市、戸倉町、上山田町の3市町合併により誕生した。長野県の北部、北信地方の千曲川中流域に位置しており、人口約6万人、面積119.79㎢で、明治期より善光寺詣での精進落としの場として、戸倉上山田温泉があるなど、名湯の地といわれてきた。また、江戸期には宇和島藩との交流で杏が栽培されてきた。千曲ブランドにも杏を素材とした商品が生まれている。

千曲ブランドの立ち上げの発端は、市の名前が「千曲市(ちくまし)」と読まれず知名度が低いことから、「千曲ブランド」をつくることで広く認知してもらうために始められた。平成20年に産学官連携・千曲ブランド推進担当課が設置され、21年に産業振興課に統合され、係りとなり「千曲ブランド」推進の体制となった。

ブランド認定を検討するにあたり次のような点が課題として分かった。千曲市の産品には ①市内には、水が豊富であるため食品会社が多い ②農産物については、JAがすでにブランド名を持っている ③工業製品は、多種多様でブランド化してもメリットがない ④地元の食品会社ではあるが、何を作っているのかわからない といったこともあり、先ず、分かりやすい加工食品に絞ってブランドを立ち上げることとした。市内業者に呼びかけ、応募があった業者を対象に認定の条件もゆるくし、とりあえず作業を進めた。

このような動きの中、農業・商業・工業・観光団体並びに公共団体等による「信州千曲ブランド推進協議会」が、平成21年7月に設立された。「信州千曲ブランド」の認定制度は、先ず、加工食品に絞り地元の皆さんに知ってもらうことから消費拡大を目指すこととした。認定対象要件は、●市内で製造される加工食品または市内で生産された原料を使用する加工食品 ●千曲市内に本店又は主な事業所を有するものが、自社商品として市販しているもの ●使用する原材料は市内又は国内で生産されたものをしようすること などだ。認定の審査は、ブランド認定審査会(5名)においておこない、認定期間は2年で、統一の認定マークを表示している。

第1回の認定は、平成22年2月に22業者80品目。平成23年2月に13業者28品目が加わり、合計29業者108品目となった。認定期間満了の平成24年2月に32業者120品目を認定した。その後の平成26年2月は、33業者126品目を認定している。現在平成28年2月の認定作業に向け準備中である。

ブランドの立ち上げは行政主導で行われてきたが、平成22年に「信州千曲ブランド認定業者の会」が設立され、ブランド展開にあたって民間の力が大きな推進力となってきている。これまでの5年間、市内域を超えた3回の千曲川地域ブランドフェアの開催や首都圏他各地でのイベント等への参加で、活発なPR活動の実績を重ねてきた。

これまでの取り組みに関する反省及び課題は、●「信州千曲ブランド」の認知度は市内ではある程度浸透したようだが、まだまだ商品購入につながっていない ●売り上げに業者間の差が出ている ●認定業者の会を中心に共同出店をすることで、一体感と盛り上がりが感じられる ●市内向けと市外向け、お土産と家庭用等が違うため、商品のグループ化の検討 ●セット商品の開発 ●消費者を飽きさせない新商品の開発やデザインの見直し ●多品種であるため消費者から分かりにくいとの意見があり、認定商品の区別化による販促活動の強化 などが挙げられている。

 

行政がいくら旗を振ったところで、商品を産み出すのは民間事業者です。「千曲市」と「信州千曲ブランド」の認知度向上のため、これこそがこのまちの顔だといえる、儲かる産業への支援集中も必要なことであるのであろうことと、足元をしっかり見据えることの重要さを、わがまち三豊市の現状を重ね合わせ痛感した研修でした。

総務教育常任委員会行政視察研修 報告・1

平成27年度の三豊市議会総務教育常任委員会行政視察研修に、8月19日(水)~21日(金)の3日間参加し、4市(長野県安曇野市、千曲市、上田市、石川県白山市)での研修を行いました。

 

第1回の研修報告は、19日午後に訪問した長野県安曇野市における「防災対策について」と「道の駅ほりがねの里」です。

安曇野市は、平成17年10月1日に豊科町、穂高町、三郷村、堀金村、明科町の5町村による新設合併で誕生した。長野県のほぼ中央部に位置し、県内第2の市である松本市に隣接している。人口98,000人余、面積331.78㎢で、豊かな自然環境と景観の中で、製造品出荷額県内1位の「暮らす場」と「働く場」のまちとなっている。

この地域は、糸魚川ー静岡構造線(北部)に位置しているにもかかわらず、近年大規模災害の発生がなく、市民の防災意識が低調な中、東日本大震災をきっかけとして防災対策に取り組むこととなった。

「防災対策について」は、自助・共助・公助の観点からの研修と現地視察を行った。

<自助> 『防災用品購入補助金』の制度を平成25年度より実施。事業内容は、各家庭に保存食、保存水をはじめ防災用品を備えてもらうため、飲料水と食料品(3年以上保存)の2品目の購入金額の3分の1、最大4,000円を補助するものだ。なお、この2品目の他非常持ち出し袋・懐中電灯・ラジオ・おむつ・生理用品等も対象としている。平成26年度アンケートでは市民の38%が非常持ち出し袋を所持している。

<共助> Ⅰ.自主防災組織への活動支援  『防災活動支援補助金』があり、自主防災組織の組織力強化のため、2つの事業補助金制度を実施している。 ①防災資機材整備事業:防災倉庫、発電機、担架、リヤカー、救助用工具セット等、購入価格の2分の1を5年間で最高50万円を補助 ②防災訓練・防災啓発:炊き出し訓練材料費、応急救護訓練用フェイスシート購入費、支え合いマップ印刷費、防災資機材のメンテナンス費用等に、経費の2分の1を10年間に各年度ごと最大3万円を補助   Ⅱ.防災訓練  自主防災組織数は83区95組織(組織率100%)で、このうち71組織で計82回/年実施され、参加人数は8,300人余となっている。

<公助> 市が実施する防災対策として、主なものとして8つある。 ㋐防災行政無線(同報系・移動系) ㋑安曇野市防災行政無線テレホンサービス ㋒安曇野市メール配信サービス ㋓安曇野市ハザードマップ ㋔避難情報等の判断伝達マニュアル ㋕安曇野市公式ツイッター ㋖公的備蓄の実施 ㋗出前講座(防災に関すること)の実施 など。

次に、安曇野市業務継続計画(BCP)については、応急業務及び非常時優先業務を発災直後から業務継続すべく計画したもので、平成27年3月に策定し、今後は実効性のあるものとするため、訓練等の実施を検討している。

「防災対策について」の最後に、【安曇野市防災広場】の現地視察をした。合併により発生した重複施設の市民プール跡地に、災害時に本庁舎に設置される災害対策本部を補完する支援拠点として設けられた。1.5haほどの面積があり、周辺には公共施設等が集積しており、災害時における避難所として期待される。平常時は、市民の憩いの場、防災教育、消防団のポンプ操法場としてりようされている。防災機能は資料の通り。

20150824

「道の駅ほりがねの里」は、昭和62年に旧堀金村の一地域の直売所『新鮮市』として開設され、平成3年には堀金地域全域での直売所『堀金新鮮市』として現在の場所にプレハブでの営業をスタートした。現在は、安曇野市の指定管理制度施行により『農事組合法人 旬の味ほりがね物産センター組合』が指定管理者となり運営している。ほりがね物産センターの活動の3本柱は直売所、加工品、食堂で、3部の取り組みによる相乗効果をねらっている。 ①物産部:生鮮野菜は、堀金産、安曇野平からの地域の農家の顔の見える農産物を中心に取り揃えている。冬場の農産物の品薄時期には、JA愛知みなみと個人生産者と連携し、通常営業を行っている。 ②加工部:地元の食材、旬の食材を活かすことを第一に考え、安曇野を感じてもらえるような商品開発を目指している。地元産の原材料にこだわり、直売書で販売するとともに、地域の学校給食への提供も行っており、年間では300種類の加工品を生産している。 ③食堂部:季節ごとに直売所で販売している食材を中心に使った田舎風メニューの提供にこだわっている。

現在、年商6億円の実績を上げているが、組合員142名の高齢化とともに後継者不足が問題だ。世代交代を進めるとともに、堀金地域以外の安曇野地域全般からの産直品の検討もしており、農産物の安定供給の維持に努めて行くこととしている。

 

災害の少ない地域に共通する悩みは、危機意識の希薄さです。いかに全ての市民に防災意識の向上を図るのかが、施策の重要な部分であると感じました。「道の駅ほりがねの里」では、明確な運営方針が店内にいきわたっているようで、接客も活き活きと、てきぱきとしており、新鮮市の原点を見た思いでした。以上で、長野県安曇野市における視察研修報告を終わります。次回は、同県千曲市の報告をします。