民生常任委員会の行政視察研修報告(平成29年)・2-①

民生常任委員会の行政視察研修で、2件目に訪問した鳥取県境港市の報告をします。「自死予防対策について(いのちとこころのプロジェクト等)」と、「がん検診向上の取り組みについて(検診すすめ隊等)」の取り組みです。

 

境港市は、鳥取県北西部に位置し、三方が海に開かれた自然条件であるため、古くから港を中心に発展してきた。人口34,000人余、面積29.10㎢のこじんまりとしたまちでありながら、日本海の豊富な水産資源に恵まれ、漁港が整備されるとともに海運による物流の拠点として、存在感を示し続けている。近年、観光において、当市出身の水木しげるに因んだ『水木しげるロード』によって、県内でも有数の観光地として「さかなと鬼太郎のまち境港」を全国発信している。

〇「自死予防対策について(いのちとこころのプロジェクト等)」

いのちとこころのプロジェクト事業は、国の自死対策強化事業が始まるにあわせ境港市においもて年間平均10名程度の自死者があったことにより、平成24年度にスタートした。この事業のポイントは ●自死(自殺)予防として思春期に着目した取り組み ●教育(学校)部門と保健福祉部門が共同して実施 で、平成24年度~26年度の3年間を1期、平成27年度~29年度を2期とし、現在進行中である。1期目は、子どもと関係機関による ”実態把握” ”情報共有” ”啓発” に取り組んだ。2期目は、子どもと保護者による ”ネットワーク” ”情報フィードバック” ”ひみつきち” の具体活動に取り組むこととしている。

1期目の取り組みとして、最初に実施したのが40歳未満のこころの病気を持っている人に対する聞き取りだ。子どものころを振り返ったものとして ●相談できる人がいなかった ●誰かに気付いてほしかった ●不安感を抱えていた ●できない自分が嫌いだった 等が多くあった。このことから、子どものころの気持ちや経験が、大人になってからの生きづらさに影響しているのではないかという推測ができた。

対策として、市役所関連部署(保健・医療・福祉・学校教育)及び関係機関(障がい福祉サービス事業所・医療機関等)による、思春期からの取り組みを検討することとなった。これが、いのちとこころのプロジェクト事業になった。目的を『生きづらさのある子ども(大人)を減らそう』と定め、 ➊自分の気持ちを自分でキャッチできる(気付く力) ❷自分の気持ちを言葉で人に伝えることができる(伝える力) ❸聞いてくれる人(支える地域)ができる ができる仕組みを作ることとした。

2期目の取り組みとして、小6生に実施したアンケート結果から ●悩んだときに話せる人、ほめてくれる人として親が一番多い 反面●悩みを話せる人はいない(6.9%)、ほめてくれる人がいない(3.1%) があった。このことから 〔子どもが自分の思いを表出できることが大切〕 〔子どもの話を聞いてくれる人、相談にのってくれる人、ほめてくれる人がいてくれることの大切さ〕 が欠かせないことが分かった。

このような環境をつくるためには、学校、保護者はもとより、地域を巻き込んだ取り組みが求められる。その方法として ①「だんごの串を通す」ように子どもの成長の情報が切れないようにすること(特に中学校から高校の間) ⓶「理解者を増やす」ために【こころの応援団を広げる会】を立ち上げ(平成27年度) に取り組んでいる。現在進行中の活動として ➊自分の気持ちを自分でキャッチできる(気付く力)→小6アンケートの継続 ❷自分の気持ちを言葉で人に伝えることができる(伝える力)→母子保健事業(赤ちゃん登校日・いのちの学習会) ❸聞いてくれる人(支える地域)ができる→【こころの応援団を広げる会】で検討 の中から、「子どもの居場所が必要!」に行き着いた。特に、【こころの応援団を広げる会】では、スーパーバイザーである東京国際大学の松本教授の助言をいただきながら、子どもの居場所の必要性に対して、《ひみつきち》をつくる計画が進められている。

 

子どもに限らず私たち大人も、心がつらくなった時に、自分の気持ちを話せる、聴いてくれる人の存在は大切です。そんな人がそばにいてくれることや、隠れ家のような《ひみつきち》があることで、心の安らぎを覚えることがあります。そんな居心地のいい地域づくりの原点を、学ぶことのできた研修でした。