会派啓明会 視察研修報告・Ⅱ-④

5月22日講演の4件目の報告をします。

「公共財産老朽化への対応━自治体(首長・議会)に求められる課題━」 根本祐二東洋大学経済学部教授

インフラ老朽化問題の実態は、1970年代にピークとなった急激なインフラ整備が、2020年には50年の耐用年数を迎えることだ。放置すれば崩壊し、無理な借金をすれば財政破綻、増税すれば国民負担増となる。現在のインフラをそのまま維持するだけでも年間8.1兆円で50年間必要だ。そのためには、年間8.1兆円確保する政策か、年間8.1兆円使わずに済むような政策のいづれかを決定していかなくてはならない。アメリカは増税を実施した。

老朽化による更新投資需要に対し、大幅な予算不足が発生する。公共施設の【3階層マネージメント】の考え方がある。利用者の範囲によってそれぞれに別々の処方箋を提案し、機能を維持しつつ負担は3割減にする方法だ。

1層は、自治体全体をカバーする庁舎、病院、博物館・美術館、中央図書館、文化ホール、大型体育施設などを『広域化』し、ワンセット主義を捨てて他の自治体と連担する。(中東遠総合医療センター、多摩六都科学館)

2層は、校区ごとにある学校、児童館、幼稚園・保育所、老人福祉施設、公民館、地区図書館などを中核コミュニティ施設として『多機能化』し、複合施設建設する。(千葉県市川市立第七中学校舎・給食室・公会堂・保育所・ケアハウス・デイサービス複合施設整備PFI事業、埼玉県宮代町役場議場多機能化、岩手県の「オガール紫波」公民合築、豊島区役所PFI事業)

3層は、住区の集会所や公営住宅を、民間施設や民間アパートの利用をする『ソフト化』のために、補助に切り替える。(三重県津市猪の倉温泉の民営化施設の公的利用、恵庭市のまちじゅう図書館、蔦屋書店函館店)

地元民間事業者や市民協働による対応の考え方もある。

予防保全包括委託による土木インフラの処方箋。(北海道清里町、東京都府中市けやき並木通り周辺地区道路等包括管理委託)

市民参加による検討会。(埼玉県鶴ヶ島市学校・公民館合築設計ワークショップ、埼玉県宮代町‟あったらいいなこんな場所”ワークショップ)

市民自治による維持点検。(長野県下条村生活道路舗装・道守事業)

国の政策として、インフラ長寿命化基本計画と公共施設等総合管理計画がある。平成25年11月に、インフラ長寿命化基本計画が策定され、平成26年度から行動計画の策定が始まる。予算不足の解消のために、計画に基づく公共施設の処分に75%の財政措置がある。

都市再生特別措置法改正で、立地適正化計画を作成することができるようになり、居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定し、事業化ができるようになっている。にわかに、『多極ネットワーク型コンパクトシティ』構想が現実味を帯びてきた。

終わりに、まとめとして首長・議員の皆さんに肝に銘じてほしいことをお伝えする。 ①日に日に確実に問題は深刻化 ②特に、土木インフラの精査が必要 ③今までと同じ発想では問題は解決しない ④この機会に、まちづくりそのものの姿を考えよう ⑤公共施設等総合管理計画は絶好の機会 ⑥利用者に迎合しない 市民の真意を聞く耳を持つ

 

22日受講した4件目の講演の報告を終わります。

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