会派視察研修報告・2

会派の視察研修報告の2件目は、鳥取県八頭町(やずちょう)での 『八頭町のバイケミ(バイオケミストリー)農法について』 です。

八頭町は鳥取市の南に位置し、平成17年3月に郡家町(こうげちょう)、船岡町(ふなおかちょう)、八東町(はっとうちょう)が合併し誕生した、人口20,000人ほどのまちです。西条柿や花御所柿、二十世紀梨、りんご、ぶどうなど、フルーツの里そして全国に情報発信しています。八頭町のバイケミ農法は、日本古来からこの国の気候や風土に適した農法を基本にして、竹を肥料にして高い食味値の米や、鮮度や糖度、低硝酸値の野菜の栽培を目指すものです。

八頭町バイケミ農法研究会の取り組みの研修を行いました。

 

戦後、広く行われてきた肥料を土に深くすきこむ農法は、乾燥した気候風土のアメリカでは効果的なもので、それをそのまま雨の多い日本に取り入れたものだ。竹パウダーを肥料とする稲作は、生(なま)の肥料を表面で堆肥化させる表面施肥(上肥え)で、代掻き後、生の肥料として竹パウダーを散布し、直後に田植えをする。理想は田植え後に散布するのが良いと考えている。”おいしさ” は、横に張る横根の成長でうまれるもので、土深く伸びる直根は植物自身を支えるための根で、”おいしさ” には関係ない。八頭町では、孟宗竹パウダーを使用している。竹は稲と同様に草系植物であるため、炭素分解周期が稲の収穫期間に合致しているため、優れた生(なま)の肥料だ。

竹を肥料にしたバイケミ農法の効果は、  米:食味値が八頭町役場所有のサタケ米粒食味計RCTA11Aの計測で、90以上が90%以上  野菜:鮮度の日持ちが良く、高品質で高食味、高糖度(大根で9度)、低硝酸値

課題は、 ●多量の竹パウダーを作りにも、散布にも機械設備が必要で、多額の投資が伴うため、機械の所有・管理の体制整備が必要。 ●豊かな土壌づくりのためには、生産物の収穫以上の繊維の多い有機物を入れることが必要。一時的に多量投入すると、腐植には土壌中の窒素を吸収し、作物が窒素飢餓を起こすため、作物のために降るのではなく腐植促進のため、腐植に要する量の窒素を有機物に散布する必要がある。 ●竹パウダーの腐植は、土の表面の方が早いため、土壌表面に散布し竹パウダーを土の中にすきこまない。なぜなら、土中では腐植が進みにくく腐敗し有毒ガスが発生し、作物の根に障害が出ることで、連作障害の原因となる。

今後の展望として、 ●竹パウダーを使う農法は、日本古来の農法だ。現代農業として経営できるようにしたい。 ●和食も世界に周知される時代だ。世界から信頼される農家となり、心のこもったものを作れば、勝ち残れるはずだ。 ●野菜の硝酸イオンは、EUでは制限値が制定されているが、日本はない。日本古来の農法で、EUの制限の半分に減らすことが可能だ。

竹を肥料にしたバイケミ農法で栽培した米の収穫量及び売価の目標は、10a当たり600㎏で5,000円/㎏だ。この量とこの単価はまだまだの段階だが、1パック450g(3合袋)を900円でギフト市場の開拓を目指している。農家は 「土づくりではなく、作物づくりだ。量なのか質なのか。」 自らの農業経営の方針を明確にして、辛抱強くバイケミ農法に取り組んでいる。

 

説明して下さった バイケミ農法研究会 副代表の中嶋繁夫さんのバイケミ農法米は、八頭町の学校給食に出荷しています。子どもの味覚は幼少期に決まるためです。また、同席されたぶどう農家の会員さんのつくるぶどうは、竹チップを施肥したことで病気や害虫が少なくなったうえに、生食用は糖度20度となっているとのことです。直売所へ出荷するとともに町内の保育所で使用されています。地域とともに生き、地域とともに進化する農業の在り方の一例を学ぶことができました。我が家の稲作とぶどう栽培にも取り入れてみたいと思います。先ずは、実践です。

八頭町バイケミ農法研究会の皆さん、研修の段取りをつけていただいた町役場の職員さん、お世話になりました。ありがとうございました。

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