三豊市議会会派「清風会」議員研修報告・2

地方議員研究会の研修、伊関友伸(ともとし)先生の「地方消滅の時代における医療・介護を考える」のテーマの2件目は、『こうすればできる!ローコスト病院建設のコツ』です。

 

病院の新築は、病院の「最大の危機」である。新しく大きな病院を建築すれば、医師は集まってくるという考えがあるが正しいのか?今は、女性医師に対応する視点がいるし、外来をコンパクトにするとともに、職員のアメニティを考えた明確な方向性を形にする設計にするべきだ。これまでに立派すぎる病院を新築したことで、破綻した病院の例は枚挙にいとまがない。宮崎県小林市立病院、静岡県牧之原市と吉田町の一部事務組合病院榛原総合病院、江別市立病院などがある。

病院建築費の現状は、建築費の増加傾向にある。東日本大震災、東京オリンピックの建設需要の影響を受けて病院建設費は増加傾向にある。また、指名競争入札を行うものの不調となる例が相次いでいる。

自治体病院の新築の問題は、起債に頼る病院建築にある。そもそも、自治体病院の新築を行う場合手持ちの現金を多く抱える病院は少ない。起債の原本利息の返済は、一部地方交付税措置や自治体本体の負担がある。しかし、そののちの経営によって、医師や看護師などの医療スタッフの病院職員が借金を返済することとなる。元本利息の編成が病院の収益力を上回れば、病院事業の手持ち現金を使い果たすこととなる。よって、借金による建設は、病院の経営危機に直結する。だから、病院事業で何よりも重要なのは手持ち現金だ。手持ち現金がなければ病院を継続できない。100床で10億円の手持ち現金は必要だ。この手持ち現金をハードではなくソフトの医療に使うべきだ。そこに、ローコスト病院建築の発想の原点がある。

病院新築をする場合のポイントは、手持ち現金をショートさせないことだ。なぜなら、企業債の借り入れを最小限にすることによって、病院の建築コストを抑制することとなるからだ。手持ち現金を減らさないためには企業債の借り入れを最小限にすることだ。病院再編には医療介護総合確保基金、過疎債などを組み合わせることだ。そして、企業債の借り入れを最小限にするためには建物の建築コストを最小限にすることが必要なのは当然だ。

どうすればローコストで一定の質の病院建築ができるか。価値ある病院建築を行うために必要なことは、手持ちの現金と返済可能な起債の額を考え、病院建築に可能な投資金額を考えることだ。可能な投資額で、その病院が望まれる機能は何か、どのような病院構成とするべきなのかを絞り込むのだ。

病院新築をするポイントは他にいくつかある。一つは、病院職員の意識改革だ。病院開設後の財務の危機に際し、どのような行動にするべきか職員が変わらなくてはならない。病院建設中から経営改善を行い、できるだけ現金をためることだ。もう一つは、病院職員や議会・地域住民も病院建築について「人任せ」にせず勉強することだ。

そのような下支えがあった上で、高い建築コストの設計を安い請負金額で建築させるのではなく、安い建築コストの設計を適正な請負金額で建築させることを目指すことだ。その遂行のために「二段階(設計)発注方式」がある。基本設計後に建設会社を公開プロポーザルで決定し、実施設計から参加してもらう。現在、国交省はECI方式と名付けている。ECIとは、「早期に施工者が設計に関与すること」であり、施工者は工事契約とは別に設計業務への技術協力を行うというものだ。

二段階発注方式の効果は、①実施設計時に建設会社のコスト削減提案がしやすい   ②詳細設計が住んでいると、コスト削減のための大幅な設計変更ができないが、それが可能となる ③詳細設計終了後の入札不調は、入札価格の単純な増額しかできなかったが、変更設計により対応が可能となる ④基本設計時の想定金額と建設会社の概算建設費に差がある場合、建設会社にコスト削減の提案が(VE提案)をしてもらい目標額を目指すことができる

建設費の高騰の中建設会社の受注参加を促すためには、基本設計の時点でシンプルでコンパクトな設計にすることだ。そして、施工しやすく、建設会社に利益が見込めるような設計にすることだ。昔のように豪華な設計を安く建設させることはできない。適正利益が無ければならない。

終わりに、始まりと同じこという。病院新築は病院の「最大の危機」だということだ。財政の厳しい自治体では、病院を新築して、病院の経営が悪化した場合、財政支援を行う余裕はない。直ちに病院の存続問題になる。新築はぎりぎりの選択だ。病院を建替えなけらば、若い医師や看護師はよそへ行き病院の将来はない。進も地獄、退くのも地獄だ。ローコスト建築しても、リスクは少なくなるだけで危機そのものは何ら変わりない。最後に言いたいことは、従来の考えにとらわれないことだ。病院建築はどうしても従来の官庁発注の考えにとらわれやすい。徹底的にローコストで質の高い病院建築を考えることが必要なのだ。

 

岐阜県下呂市立金山病院や茨城県筑西市・桜川市統合新病院の成果と取り組みは、病院オタクと自称する伊関先生の情熱と探求心によって具現化されたものだと実感しました。これらの実績を三豊市の市立永康病院建替え計画に最大限生かすべく、特別委員会の総力を挙げて調査研究を重ねていかなくてはなりません。

以上で、研修の報告を終わります。