「教育カウンセラー養成講座 愛媛会場」 第1回講座

NPO日本教育カウンセラー協会に所属する愛媛県教育カウンセラー協会が主催の、「2016年教育カウンセラー養成講座 愛媛会場 応用コース」研修が、松山市総合コミュニティーセンターで開催されています。10月23日(日)と29日(土)、30日(日)の3日間で、いずれの日も講座は9:30~16:30の、1日6時間ぎっしりの受講となります。

第1回講座は、高知大学教育学部准教授 金山元春先生による 《ブリーフカウンセリング「解決志向アプローチ」~心地よい人間関係とより良き未来を築くためのコツ~》

第2回講座は、新見公立短期大学幼児教育学科教授 住本克彦先生による 《対話のある授業~「いのちを育てる関わり方」指導者に必要なカウンセリング能力とは~》

第3回講座は、聖徳大学児童学科教授 鈴木由美先生による 《チーム援助~日常に生かせるやさしい支援のあり方~》

 

10月23日(日)の第1回講座の報告をします。《ブリーフカウンセリング「解決志向アプローチ」~心地よい人間関係とより良き未来を築くためのコツ~》金山元春 高知大学教育研究部人文社会科学系教育学部門准教授

 

そもそも「カウンセリング」とは、人生で誰もが取り組む課題を解決していくのを援助する営みで、これは人間関係の営みだといえる。だから、カウンセリングについて学ぶことは、人間関係について学ぶことだ。人間関係は相互作用なので、こちらが「ものの見方」を変えて、コミュニケーションを工夫することで、人間関係に変化が生まれてくる。

いろんな「ものの見方」があるが、これまでの視点とはことなる角度で見ることから始めよう。そのためには、いつもと違う「メガネ」をかけてみることだ。それは、自分の関心を解決や未来に向けてみることだ。これを「解決志向アプローチ」と呼ぶ。ブリーフセラピー(ブリーフカウンセリング)の一種とされている(ブリーフ:効率的、効果的)。解決志向もひとつの「ものの見方」なので、全てが「正しい」というわけではない。しかし、課題解決のためのひとつの方法であるといえる。役に立つ、いつもと違う色「メガネ」として使ってほしい。

より良き未来を築くために、「メガネ」を通して内外の資源(リソース)を探してみることだ。手に入れたい未来の実現に役立つものは何でもリソースだ。「内的リソース(自助資源)」と「外的リソース(援助資源)」がある。課題に関係する人たちのもちあじや、すでにあるものに注目し、それらを生かしてみる。方法として、「未来像(解決像)からのトップダウン方式」と「リソースからのボトムアップ方式」がある。これまでの主流の考え方は、問題の原因探しとその解決に視点を置いているが、「解決志向アプローチ」はいろいろな原因の中に見方や発想の転換をはかり、良いものを見つけ「リソース」とし、より良き未来を築こうとするものだ。

「解決志向アプローチ」の前提となる「ものの見方」は、①うまくいっているなら、それを続けよう。 ②一度うまくいったなら、またそれをしよう。 ③うまくいっていないなら、ちがうことをしよう。 である。これが役立つ前提として、㋐変化は必然である。小さな変化が大きな変化を生む(さざなみ効果)。 ㋑「問題」について知るよりも、「解決」について知る方が役に立つ。 ㋒誰もが自身の人生の「専門家」(母親は親として、先生は教育者として、同級生は友達として・・・)、「解決」のためのリソースを有している。 ということだ。

「解決志向アプローチ」が提案する役に立つ技法の一部を紹介する。

1.「未来」の質問  (例)「その代わりにどうなれば良いですか?」「その問題が解決されると今と何が変わりますか?」 *未来へ思いを飛ばすために「ミラクル・クエスチョン」や「タイムマシン・クエスチョン」がある。「奇跡が起きて問題が解決したとします・・・」や「タイムマシンに乗って十年後のあなたをみたとき・・・」など、奇抜でおもしろい質問もある。

2.「例外」探し  (例)「少しでもましだったとき(うまく対処できたとき)について教えてください」「それが一部でもすでにかなっているときや、それに近いときはありませんか?」

3.成功の責任追及  (例)「そうすることがよいとどうやって気付いたのですか?」「何か心がけたことがありますか?」「どんな工夫をしたのか、教えていただけませんか?」

4.OKメッセージ(コンプリメント)=リソースのフィードバック  (例)「へー↑」「なるほど↑」「そうですかぁ↑」「すばらしいですね」「よかったですね」「ありがとうございます」「うれしいです」「たすかります」

5.「ものさし」の質問(スケーリング・クエスチョン)  (例)「まったくダメなのが1、けっこういい感じが10として、今はどのくらいですか?」~「(6という答えに)6あるのは何があってですか?」「(6という答えに)7になったときには何がちがっていますか?」

6.「対処」の質問(コーピング・クエスチョン)  (例)「(・・・にもかかわらず)そんな大変な状況をどうやった切り抜けたんですか?」「これまでにはどんなふうに対処してきたのですか?」

7.最後のおみやげ  ①「行動」提案 (例)「もうすでに○○や○○ができていることがわかりました。とてもすばらしい工夫だと思います。そこで、またそれを試してみてもらえますか。」 ②「観察」の提案=「例外」の観察を提案する (例)少しでもましだったとき(うまく対処できた時)を覚えておいて、次に会ったときに教えてください。それがこれからどうすればよいのかのヒントになりますから。」

「解決志向アプローチ」には、2本のアンテナを常に立てておくことが大切だ。人の行動には「良いところ」と「良くないところ」がある。 「良いところ」は、OKメッセージを伝えよう。●ほめる:使うとき注意がいる。上から目線になりかねず、ユーメッセージにとられるかもしれない。●勇気づけ:ありがとう、たすかる、うれしいなどアイメッセージなので受け入れられやすい。●認める:存在を認める。 「良くないところ」は、対決メッセージを伝えよう。●状況を説明する。●気持ちを伝える。●選択させるよう提案する。

ブルーフカウンセリング「解決志向アプローチ」になれるには時間がかかる。右利きの人が左手でやるようなものだからだ。一段高いところ(メタポジション)からの視点で、常にリソースを見つけようと習慣化してほしい。そうしていく中で、技法が身につきより良き未来を築くためのリソースのすり合わせができていくと思う。最初に人間関係は相互作用だという話をした。この意味を最もうまく表現しているのは、ミスターチルドレンの「彩」という曲だ。すべてはつながり変化し続けているのだ。

 

第1回講座の報告を終わります。

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