会派清風会視察研修(東北編)報告・1

2017年(平成29年)の夏は、記録的な猛暑の日々が続いています。お盆休み明けの8月16日(水)から18日(金)の3日間、三豊市議会会派清風会の視察研修に参加し、山形県酒田市での「空き家対策について」と、岩手県遠野市での「認定NPO法人遠野 山・里・暮らしネットワークの取り組みについて」、青森県おいらせ町での「アグリの里おいらせの取り組みについて」の、3件の研修を行いました。

1件目の、酒田市における「空き家対策について」の報告をします。

 

山形県酒田市は、最上川の河口にあり、古くから日本海沿岸の要港として発達した港町だ。中世期に「酒田三十六人衆」の自治による自由都市として栄え、近世に入り、酒田港を基地とした西廻り航路が再整備されたことから、千石船が訪れることで、「庄内米」と「酒田港」は有名となった。明治以降も県内唯一の重要港湾都市として栄えた。平成17年、酒田市、八幡町、松山町、平田町が新設合併し、現在人口約105,000人、面積602.74㎢の新「酒田市」が誕生した。平成27年10月に『酒田市まち・ひと・しごと創生総合戦略』を策定し、全市を挙げて取り組んでいる。

酒田市では、国の空家対策特別措置法制定より早い、平成24年3月に空家対策に係る条例を制定している。

条例制定を必要とした背景は、管理不十分な空き地・空き家に関する市民からの相談件数が年々増加していた。その都度現地確認や所有者・管理者に対して適正な管理をお願いしていたが、責任を問う法的根拠及び強制力がなかったため、放置された状態が発生していた。個人の財産権と周辺住民の安全、住環境の保全をどう調整するかという問題があった。しかし、将来的に大きな問題となることが予測されたため、制度整備することとした。

条例制定への準備として、空き家等の調査を行うこととして、先ず、地域の実情を最もよく知る自治会長を中心とした自治会での実態調査を、平成23年89月3日~9月5日の間実施した。次に、市職員による現地調査を実施した。調査期間は平成23年11月1日~12月22日の間で、自治会調査で「問題あり」とされたものを対象とした。

条例制定による空き家・空き地の適正管理と利活用の効果を増すために、いくつかの事業を展開している。

●平成24年度より空き家所有者のための啓発パンフレットを全ての固定資産税納税者へ郵送(固定資産税納税通知書へ同封)し、啓発・PRを図っている。

●空き家等ネットワーク協議会を平成25年に設立。不動産業者、建設業協会、司法書士会、市の4者で構成し、無料相談会等を実施している。

●自治会空き家等見守り隊を設立。自治会と空き家所有者との良好な関係を築くため、平成25年度2自治会、平成26年度3自治会でモデル事業を実施している。この取り組み事例を、平成28年度に創設した『ひとづくり・まちづくり総合交付金』に見守り隊登録時の加算金を設定し、市内自治会への普及を図っている。加算金額は1自治会10,000円の定額としているが、今後増額してほしいとの要望が多い。見守り隊の登録状況は、自治会の空き家数が世帯数の5%以上かつ5棟以上を要件として、全自治会459の内128自治会の登録となっている。

●所有者の所在が不明な空き家の対応は、最低限の事務管理を市で実施している。また、相続放棄等で相続人が存在しない危険老朽空き家については、民法第952条第1項の規定により、市が利害関係人となり、家庭裁判所へ相続財産管理人の申立てを実施し、管理人による清算手続きで問題解決を図っている。

空き家対策は、移住政策(人口減少対策)とも連携している。

政策部関係の施策として、 1.空き家改修費補助金(賃貸物件対象):事業費の1/2で上限50万円  2.移住定住者住宅取得費補助金(購入物件対象):購入経費の1/10で上限50万円、改修経費の1/10で上限40万円 の2件がある。

建設部関係の施策として、 3.住宅リフォーム総合支援事業:県事業に市が上乗せ助成し最大60万円  4.住宅改善支援事業:借入金の利子補給 の2件がある。

ほかに、 5.移住希望者への空き家紹介があり、政策推進課とまちづくり推進課が連携し『移住相談員』を置き、所有者が遠方に居住しており内部の荷物が片づけられない等の事情がある空き家を、移住定住者に市が紹介するもの。

 

市の積極的な取り組みがあったとしても空き家等の件数は増加傾向にあります。何もしなければ手の付けられない状況となるのは確実です。人が住んでいたという事実をたちまちに消し去ることはできません。突きつけられた現実に対し、一つ一つ丁寧に施策を打っていくより他になく、飽くなき対策の連続であることを実感した研修でした。