市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和5年(2023)7月12日(水)~14日(金)の3日間の日程で実施された、三豊市議会市民建設常任委員会の行政視察研修の報告をします。報告は、1件目 滋賀県湖南市、2件目 奈良県宇陀市、3件目 福井市高浜町 の順に行います。

 

1件目の湖南市は、平成16年に石部町と甲西町の2町合併により誕生し、現在人口は54,000人余、面積は70.40㎢となっている。滋賀県南部に位置し、大阪と名古屋からそれぞれ100㎞圏内にあり、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点にある。名神高速へのアクセスが良く、県下最大の工業団地が立地し、地域経済の発展に大きな役割を果たしている。

『湖南市脱炭素先行地域事業について』湖南市環境経済部環境政策課 地域エネルギー室から説明をいただいた。

湖南市総生産(総所得・総支出)は2,717億円で、地域の所得循環構造において、エネルギー代金の流出が約243億円で、GDPの約8.9%を占めている。県下最大の工業団地を有することもあり、電力料金として関電への流出が大きいことにある。

もとより環境意識に対する市民意識が高い地域であることから、全国にも珍しい〈地域に存在する自然エネルギーは地域固有の資源である〉ことを条例制定の目的とする「湖南市地域自然エネルギー基本条例」が平成24年(2012)に制定されていた。そこから『地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業(経産省)湖南市地域におけるスマートエネルギーシステム導入の検討』が行われた。

その結果、地域新電力 こなんウルトラパワー(株)が平成28年(2016)に設立された。地域新電力のメリットは ①地域で作られた地元産電力を地域で利用(地産地消) ②地域内で資金循環 ③ICTを活用し、各施設の電力見える化や遠隔制御による省エネ・節電サービスを提供 ④災害時の避難所の電源確保、レジリエンス性向上 ⑤安価な電力を提供 がある。

事業スキームは、地域の再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)を地域新電力が需給管理・運営・エネルギーマネジメントして、地域内の地元産電力を利用者へ供給することで、「エネルギーの地産地消によるエネルギーの費用流出の最小化」で地域の活性化を実現しようとするものだ。

第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プランにおける「地域新電力が核となって事業を推進していく取り組み」として、7つのプロジェクトがある。  1.小規模分散型市民共同発電(FITに頼らない事業展開・小規模分散型でのソーラーシェアリング・自家消費型屋根借り太陽光発電への参画) 2.家庭用太陽光発電買取(家庭での自然エネルギー活用に寄与する取り組み推進) 3.自家消費型太陽光発電(屋根借り太陽光発電事業によるエネルギーの地産地消推進) 4.イモエネルギー活用(農副連携の取り組み推進による芋製品の開発等六次化産業化への検討・ソーラーシェアリングの活用) 5.木質バイオマス活用(林福連携の取り組み推進による木質バイオマス燃料の供給実施) 6.公共施設の脱炭素化(エネルギーを主眼に置いた効率的な公共施設の維持管理について検討) 7.地域マイクログリッド構築(災害時でもエネルギー供給が途切れない防衛エリヤ検討)  いずれもSDGsの視点による展開となっている。

湖南市の目指す将来ビジョンは、━新電力を核として 地域にある自然エネルギーを活用することで 地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を目指します 〈湖南市版シュタットベルケ構想〉━  として、その上で戦略プランの定量的な目標を、経済、環境、社会の角度からそれぞれ定めている。

湖南市の2030年のあるべき姿は、こなんウルトラパワーを核とした地域循環共生圏を目指したSDGs未来都市構想の実現に向けて、①自治体新電力を核とした官民連携の自然エネルギー導入プロイジェクトの実施 ②地域経済循環の創出 ③多様な主体との連携により地域の活力を創生し、未来を創造る ‟さりげない支えあい” のまちづくりの実現をめざす。

一連の取り組みと未来社会を創造する取り組みの提案が、環境省の『脱炭素先行地域』に選定されている。既に認定・発動している「SDGs未来都市認定」と「ゼロカーボンシティ宣言」を活かしながら、あるべき姿の ‟さりげない支えあい” のまちづくりに向け『湖南市脱炭素先行地域事業』に取り組んでいる。

 

湖南市には湖南市の、三豊市には三豊市のここだからこそこうするといったまちづくりの必然性があることを再認識することとなりました。自然・住環境や経済・産業の構造、歴史・文化・風土など、それぞれの地域に相応しい脱炭素社会構築があることを、自覚することから始めなければならないのだろうと、考えさせられた視察研修でした。