市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅱ

2件目の報告は、奈良県宇陀市の『宇陀市薬草プロジェクト』の研修です。

 

宇陀市は、平成18年に4町村が合併して誕生した。三重県名張市に隣接する奈良県北東部に位置する。人口3万人弱の小規模なまちだが、吉野葛等の伝統的な食品製造や毛皮革産業など、特徴ある伝統的な地場産業がみられる。

薬草については、日本書紀によると611年推古天皇の時代に日本最初の薬猟の記録があり、宇陀の地が王権の猟場であったことを示している。江戸時代には薬のまちとして栄え、何人もの製薬企業(ロート製薬、ツムラ、アステラス製薬等)の創業者を輩出している。宇陀市農林商工部商工産業課から『宇陀市薬用プロジェクト』の説明をいただいた。

薬の発祥地として薬草を活用したまちづくりを推進してきた。「ウエルネスシティー宇陀」を掲げ、市民の健康はもとより栽培者の健康にも貢献することを目指している。

栽培は、平成24年12月から薬草プロジェクトが始動し、シャクヤクやトウキ、アマチャ、ボタン、ジオウ等の栽培研究が市民参加で行われた。同時に、大和トウキの試験栽培が始まり、いろいろな取り組みの中から新たな栽培法により、新技術の取り組みが始まっている。平成26年10月に開かれた薬草栽培説明会には48名の参加があった。薬草問屋の指導もあり、平成27年3月に「宇陀市薬草協会」が設立され、販売先の心配なく栽培に集中できることで本格始動となった。大和トウキの試験栽培から10年となる令和4年は、約80名が栽培に取り組んでおり、根集荷量2,241㎏、葉集荷量3,693㎏の実績となった(連作障害で隔年で終了の増減がある)。

PR関係は、これまでに国内の薬草シンポジウムに参加・視察するとともに、薬草活用講演会や料理教室の開催を行ってきた。平成27年3月には地域経済循環創造事業交付金を活用した事業として、『薬草カフェ』をオープンした。また、薬草文化祭の開催や「全国薬草シンポジウム2018inうだ」を誘致し開催してきた。令和4年5月には、農山漁村振興交付金を活用した事業(農推進事業)の『うだ 薬湯の宿 やたきや』がおオープンした。これは、古民家をリノベーションしたもので「日本ヘルスツーリズム振興機構」が認証するヘルスツーリズム資格を保持したスタッフによる体験プログラムを提供している。令和5年5月に「宇陀松山薬草発酵博覧会」を開催し、積極的にPR活動を継続している。

販路開拓は、大和トウキの根は「当帰芍薬散」などの漢方薬の生薬として利用されるが、葉は平成24年に「非医」扱いとなり食品として利用できるようになったため、栄養機能食品を取得することで葉を加工販売し、六次産業化の推進を行っている。これは、良質な薬草栽培を目的として、生産者の所得向上を目指すものだ。

薬草を活用したまちづくりは、宇陀市を発信元として生産部、ウエルネス部、六次産業化部が、国・県・大学・企業の産官学の連携で推進されている。六次化商品としてのふるさと納税返礼品の売り上げは400万円/年で、うち製油商品は100万円/年あり、今後全体で3,000万円/年の販売を目標にしている。

 

日本最初の薬猟の壁画が星薬科大学本館にあったことは、宇陀市と同大学の宿命的なつながりを決定づけています。『宇陀市薬草プロジェクト』の事業展開に大きく影響していることは間違いありません。三豊市における薬用作物事業も、歴史、文化、風土、気候に根差した展開が求められます。市民の健康のためのウエルネスとともに、生産者の所得向上を目指した葉の活用による六次化商品展開に向け、産学官の連携推進がますます重要であることを確認させていただいた視察研修でした。