市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅲ

3件目の報告は、福井県高浜町の『耕作放棄地を活用した薬草栽培~福井県高浜町の取り組み~』です。

 

高浜町は、日本海に面し京都府舞鶴市に接する福井県最西端に位置する。人口は約10,000人で面積は約72.4㎢で、うち農地面積は約440haで小さな耕作地が多くを占めている。大正時代から夏の保養地として海水欲などの観光客を誘致してきた。現在、世界レベルでの環境認証「ブルーフラッグ」を日本初で取得し、アジアで一番きれいなビーチと評される観光と農業のまちだ。

高浜町産業振興課から『耕作放棄地を活用した薬草栽培』の説明をいただいた。

薬草栽培の取り組みのきっかけは、町内にある青葉山(標高693m)に約500種類の有用植物が自生していることが分かった。平成27年度より地域の資源として活用の検討が始まり、地元団体「青葉山麓研究所」が設立された。平成28年度に(公社)東京生薬協会と栽培に係る連携協定締結がされ、令和2年まで栽培技法を模索してきたが、生産体制の構築には至らなかった。令和2年以降、新たな栽培指導者(福田商店と九州の大学)から、実績のある栽培方法を受講することで、作業体系が確立し成果を得ることができるようになってきた。生薬生産に必要な要素とは、本当に生産実績がある①栽培指導者、指導を確実に実行する②担い手プレイヤー、継続的な③行政支援、買取規格を明示する④買い手生薬問屋 の存在と連携が不可欠だ。

栽培地の棲み分け(土質)による薬草の ‟選択と集中” に着手した。中山間エリア:Ⓐヤマトトウキ  沿岸エリア(砂地):Ⓑミシマサイコ(+ⓒシソ)  休耕田:Ⓓシャクヤク の主要4品目に集中し、我流は絶対せずに栽培指導者に習う。目標は実証栽培のプログラムづくりと担い手育成に向けた仕組みづくりとした。

令和4年2月に収穫したヤマトトウキの湯もみ(冬作業)を行った。江戸時代から続く伝統技術であり、収穫・加工の「体験イベント化」による農泊体験事業の可能性を摸索中だ。また、地域の中学校の総合学習の時間をつくることにより、栽培者のやる気にもつながっている。

令和2年播種したミシマサイコは令和3年11月に収穫でき、通常2年かかるところが1年2か月で収穫できた。55㎏/反の収量があり、先行地の2倍以上と多い収穫となった。

作業時間の算出と目標は、時給単価を増やすためマルチ栽培はせずバラまきで収量を確保。集計からミシマサイコは200h/反であることから、稲作の50h/反とトマト400/hの中間の作物に位置付けて、より効率的な作業方法を研究中であり、反収20万円強を目指す。ミシマサイコは未利用部位(葉・茎・花)の活用の可能性がある。ミシマサイコ茶や入浴剤等の商品化を進めている。

シソは4月定植で7月に収穫・出荷できる。なぜシソなのかは、①地上部だから目に見える ②勝負が早く「成功体験」を得ることができる からだ。現在、シソをマハタのえさにしたハーバルフィッシュを研究中だ。

ハーバルビレッジでの活用事例は、豊かな自然環境と薬草を掛け合わせた施設として、「体験イベント」×「薬膳」 「登山」×「薬膳」 「キャンプ」×「薬草」で薬草栽培の情報発信拠点となっている。

今後の目標は、実証栽培は完了したため、次は「栽培地の団地化」だ。地域の生産者を増やす取り組みと新たな担い手の登場による、農地のままで次世代へつないでいく政策が求められるからだ。

高浜町の考える薬草産地化の定義は、【高品質な薬用作物を毎年安定出荷すること=高浜ブランドの創出】 によって、薬用作物を活用した「農林水産+観光事業」の連携が実現すると考える。

 

3件の行政視察は、いずれも物事の根幹をなすのは真似事ではない、自らの足元からしっかりと見つめ直すことから始めなければならないという、政策立案の原点に立ち返ることの大切さを痛感した研修でした。

以上で報告を終わります。