青少年育成全国大会と中央研修会

11月1日から30日は、全国青少年健全育成強調月間となっています。
27日と28日の2日間 “青少年育成全国大会”と“青少年育成施策推進体制充実強化中央研修会” 参加のために、東京へ行っていました。
いずれの会とも内閣府主催によるもので、青少年のコミュニケーション能力低下が指摘される現状を、どのように改善し、社会に適応する力をいかに育むのかを課題としています。
27日の全国大会では、シンポジュームとして、『青少年健全育成の今日的課題~人とつながる力「コミュニケーション力」を高めるために~』をテーマに、前・杉並区立和田中学校長で現・東京学芸大学客員教授である、藤原和博さんの基調講演が行われました。
その後、それぞれの分野で活躍する3氏に藤原さんが加わり、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付青少年育成担当調査官の森さんをコーディネーターとして、パネルディスカッションが行われました。
《基調講演》
5年間、民間校長として義務教育現場にいた。
この間に強く感じたことは、現代社会は、子どもたちに言葉を失わせる社会になっていることだ。
テレビやインターネット、携帯電話などで、子どもたちは一日中話さなくても生活できてしまうということだ。
言葉を変えれば、「子どもを黙らせる社会」になっているということだ。
このことによって、コミュニケーション能力低下の子どもたちがつくられて来たといえ、不登校、引きこもり、ニートを増加させる結果となった。
私は、就任以来【保護者への5つのお願い】を入学説明会を含め3回、保護者に繰り返し配布してきた。
1. 和田中を選んでこられた以上、責任をもって参画していただきます
2. 生徒の生活習慣が規律を持ったものになるようご協力下さい
3. テレビをつけっぱなしで見せている家庭の子の学力は保証しません
4. ケータイはもってこさせない、自転車通学はさせない(自転車は地域環境による)
5. 子どもに仕事を与えること、続けさせること
家族の一員として当然やるべき仕事や勉強の成果に対し、「ありがとう」「よく頑張ったね」という親子の言葉の交流こそが、自分には居場所があるという確信を育てる。
いったん始めたことは是非とも続けさせ、苦しいこともあったが続けられたという自信と「集中力」は一生の財産になる。
次に、「よの中科」をつくって地域で仕事をする大人に先生となってもらい、大人と子どもが一緒に学ぶ模擬体験(ロールプレイ)を通して勉強と社会との関係を学ばせた。
そして、地域のボランティアの協力による『学校支援地域本部』をつくった。
PTA・大学生・地域の人たちによって、図書室の運用や土曜寺子屋(大学生のお兄さんやお姉さんの“学ボラ”による“ドテラ”)を始めた。
『学校支援地域本部』の目的は、「よの中と家庭をつなぐ」ことだ。
重ねて言うが、超便利社会になり情報環境が良くなると、人間が働きかけなくても済む社会になっている。
コミュニケーション能力向上には、「つなげる力」が重要だと考える。
この考えが国の予算にも反映されてきている。
文部科学省においても、50億円の予算をとり『学校支援地域本部』を波及させようとしている。
学校・地域・家庭を巻き込んだ、「つなげる力」の実践を期待したい。
《パネルディスカッション》
テレビやケータイなどの便利なツールをどう使うかだ。
コミュニケーションの対語として、「思考停止」や「パターン認識」がある。
テレビの一方的な情報に対しても、一人で見ないで皆で突っ込みながら見ることも、「思考停止」や「パターン認識」を回避する方法の一つだ。
今、学校で起こっている問題は社会問題だといえる。
医療・教育・福祉などのすべてを又にかけたソーシャルワーカーが必要となるのではないか。
今後、これらを包括する、子どもたちの未来を考える『子ども省』の創設が要望されてもよいのではないか。
などの意見が出されていました。
更に、青少年のコミュニケーション能力向上の手立ての議論と同時に、学校に通う、職場で働くといった“入り口支援”に止まらず、“継続支援”という「~し続ける」ための力を養う仕組みが抜け落ちていることの指摘は、地域社会としてとるべき施策の方向を指し示しているように感じました。
地域の青少年健全育成のための、具体的施策立案に向けての示唆に富む研修となりました。