令和元年度 総務常任委員会行政視察研修 報告・4

総務常任委員会行政視察研修の最終日に訪問した、4件目の視察先である (株)つくばウエルネスリサーチ における『先端技術を用いた事業展開について』の報告をします。

 

(株)つくばウエルネスリサーチは、筑波大学大学院 人間総合科学研究科 スポーツ医学専攻の教授である久野先生が経営する、大学発ベンチャー企業である。つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅前にあるKOIL(かしわ オープン イノベーション ラボ)に研究拠点を置き、筑波大学の研究成果を活用し「科学的根拠に基づく健康づくり」を基本目的として、「日本全国を元気にする!」をミッションとしている。『先端技術を用いた事業展開について』を研修テーマとして、‟健康政策に対する学術機関との連携” と ‟自治体向け事業” の説明を受けた。

ITやAIなど、世の中に新しい技術が生まれると、すべて解決できると勘違いする。これらは万能ではなく一つのメソッド(方法や手段)でしかない。健康政策でAIを研究している理由は、自治体における現在の健康政策が弱いからだ。これまで職員数を削減してきたが行政サービスの仕事は増える一方だ。多忙となった現職員は、政治課題のエビデンス(根拠)を読み込む力が弱くなり、課題解決に向かっていない。このような現状の中で、政策を立案・分析するための補完としてAIがある。しかし、AIにはブラックボックスとホワイトボックスがあり、頼りすぎると危険だ。AIはメソッドだから、どのように使うのかが課題だ。

健康政策は、人それぞれ個々のデータが多様で膨大過ぎるため解決しきれない。データは現象であって原因ではない。その人のライフスタイルが分からないと対処法がうてないので、データベースを集めるための設計で、政策の成否が決まる。だからこそ、現場を知る職員とAI技術者とのマッチングが重要だ。

(株)つくばウエルネスリサーチは、これからの超高齢社会にあって、自治体が抱える健康や社会保障の課題解決のために、「健幸都市づくり」を推進している。【健幸都市】の考え方は、多くの住民が ‟健幸” になれるためのまちづくりであり、『歩いて暮らせるまち(ウオーカブル シティ)』をつくることである。そのために

1.市民が、便利さだけを追求しすぎない生活に変えること

2.変えるために市民へのヘルスリテラシー(健康に対する理解)を高めること

3.それを自然と行うための環境をつくること ①社会参加(外出)できる場づくり ②賑わいづくり ③快適な歩行空間整備 ④車依存から脱却するための公共交通の再整備

を進めることだ。

今取り組んでいることは、健康無関心層対策だ。戦略は3つあり ➊無関心層を動かすインセンティブの開発 ❷無関心のまま健康にできるまちづくり ❸無関心層にも健康情報が届くインフルエンサーの育成 である。この戦略を軸にして、自治体が「健幸都市づくり」を進める上での課題を特定し、その対策の立案、施策、成果を生み出すための作業を強力にサポートする 〔健幸クラウドAIシステム〕 を開発した。

インセンティブシステム開発の具体事例として、無関心層の行動変容を促すために運用された、6市連携健幸ポイントプロジェクトがある。6市で12,000人が参加し実証し、成果が出ている。

インフルエンサーの養成は、「健幸アンバサダーは心に情報を届ける伝道師」と位置づけ、既存の資格者とも連携し大切な人への口コミによる伝道を行う。

自治体が「健幸都市づくり」を推進するには、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド、成果連動)が有効だ。5市町による飛び地型大規模ヘルスケアプロジェクトの実践が始まっている。広域連携によるSIBのメリットは ●ICT活用で広域連携が可能になり、事業規模が大きくなり、一人当たりのシステム利用料の低減が可能 ●複数の自治体連携によりコストを按分できる ●自治体間で成果・課題を共有することで施策の横展開が期待できる ●広域連携の先駆的モデルとして、地方創生推進交付金を受けやすい がある。

 

先端技術を用いた学術機関との連携による自治体の業務は、今後とも増加していくものと思います。いかなる先端技術が開発され進化したとしても、その利活用の方法の方向性を決定するのは、政治・行政にかかわる現場の人であることには変わりありません。久野先生が一番最初に話した、先端技術は「目的ではなく手段でしかない」との言葉が、深く心に響いています。SIBによる「健幸都市づくり」の着手は、『歩いて暮らせるまち(ウオーカブルシティ)三豊』という近未来都市づくりへの一歩であると確信した、ワクワク感いっぱいの研修でした。

以上で、令和元年度 三豊市議会総務常任委員会行政視察研修 報告を終わります。