会派視察研修報告・2

会派視察研修の2ヵ所目は、 「第4回 2012年度日本自治創造学会 研究大会」 への参加です。
【21世紀を生きぬく自治創造~自立・自存と危機への備え~】 をテーマに、5月11日と12日の2日間の日程で研修を行いました。
本年度から、日本自治創造学会の会長に就任した、明治大学名誉教授の中邨章先生から、 「危機管理と議会」 をテーマに、東日本大震災を教訓に 「悲劇を知恵に━大震災から学ぶ自治体の危機管理」 として4点について講演をいただきました。
【1】 自治と公助のはざまで
日本だけの問題ではなく世界の先進国では、政府・自治体への不信感が強く、公務員に対する不満も強い。
自然災害時に信頼できるのは、自分自身や家族であるとのデータがある。
ところが、市民・国民は、自助の備えを日頃から取り組んでいるのかといえば、まだまだ十分ではない。
また、こんな調査がある。
G7先進国で行った個人責任と行政責任の調査では、日本は極端に行政責任に対する期待が高く、公助への依存度が強い国民性であるとの結果もある。
このような意識のはざまに、議会の役割があるのではないか。
【2】 危機管理のこれまでと大震災の教訓
これまでの自治体の欠点は、
・地域防災計画は行政がやるものだと考えられてきた
・単一の自治体で対応が完結するものだと考えてきた
・縦割り組織のため事業ごとのマニュアルとなっていた
・遠地自治体との支援協定がほとんどで、近地との関係の意識が薄かった
・職員の過重負担となっていた
・議会・企業・NPOとの距離があった
この反省のもとこれからは、
*地域の弱点把握
*BCPの作成と支援の受け方を整える(受援力)
*遠地援助(職員・消防派遣と生活物資支援)と、長期支援継続には専門職派遣が求められる
*近地との協力体制
*危機管理部門と組織整備(事業別ではなく機能別分けの組織)
*備蓄の工夫(大手スーパー・コンビニの民間に肩代わりしてもらう)
*人材育成
*専門家ネット(NBC - 核・生物・科学)
*危機規模の段階化
   ①単独対応
   ②複数対応(役割・情報・負担)
   ③戦争状態(ギブアップ)
これらを検討し準備することだ。
【3】 自治体の危機管理━基本の確立
難しくない危機管理は、意識・認識・知識・組織の4識の充実だ。
・資金不要の事前準備として、シミュレーション訓練やブレーン・ストーミング、S-KYT(消防ー危機予知トレーニング)など
・災害発生時から72時間は重要で、自治体が早期に情報を入手することと、市民への情報伝達手段の確保が生死を分ける。そのために、人の配置をクリアファイルにしておく。
・対策本部の任務として、①本部と現場のすれ違いを調整するためや、事後補償・検証に有効な記録は必要だ。②マスコミ対策の報道担当者や国・県との調整、政府情報を、分かりやすく翻訳する。
などが考えられる。
・組織間協力における議会の役割は、①物資援助、職員派遣、消防派遣 ②協定後の互いの顔の見える関係づくり ③被災者受入 ④就職斡旋、生活保障、教育支援 ⑤支援を受ける体制づくり ⑥以上のための積極的な議会人活動が期待される。
【4】 危機管理と議会━市民対話
「議会は市民対応の先兵となれ」
議員の認知度は非情に低い。“○○市議会”のジャンバーを用意しておき、災害発生時に着用し、市民とのパイプ役になる。
危機管理に対する議員活動は、
*平時から議会内部に危機管理体制をつくっておく
*自主防災組織の設立などで、地域住民との接点を持っておく
*紛争解決の仲立ちとなる
*法律と公平性をもって、非常時の例外対応の調整
東日本大震災で議会の活躍が聞こえてこない。
議会と議員には、常からの危機管理をぜひ取り組んで欲しい。
中邨先生の講演で、平時、有事の隔てなく、議会と議員は市民と行政のパイプ役となる、重要な役割を担っており、いくらでもやることがあることを、再認識させていただきました。
三豊市議会にも、危機管理組織をつくることを提案したいと考えています。
他に、何人かの先生方より、貴重な講演がありました。
様々な角度からの、自治という自主・自存を考える絶好の機会となりました。
また、日本の政治と社会が大転換を迎えようとする予感のなかで、自立・自存と危機管理への備えを考えるとき、議員としての力不足を自戒する研究大会となりました。