総務常任委員会行政視察研修 報告Ⅱ

2か所目の訪問先である新潟県上越市では、「上越市の防災の取り組み」について、危機管理課他から説明をいただきました。

 

「『令和6年能登半島地震』における上越市の対応状況等について」

今回の能登半島地震は、日本海調査検討会(2014)による波源断層モデルにおける能登地域のF43が動いた。当市には30分位で津波が来ると予測されていたため、速やかにその対応を行った。午後4:35頃に第1波が関川を遡上。市内で確認した河川の津波遡上は、関川から約5㎞、関川の支流の保倉川で約1.6㎞まで確認された。関川河口における津波の高さは3.2mで、遡上高は船見公園の5.8mが記録された。

津波ハザードマップでは、避難支持の発令は津波発生時は市が避難指示を発令する時間的猶予がないため、『大津波警報・津波警報・津波注意報』をもって、市からの避難指示の発令としている。

市の情報発信は、防災行政無線や防災ラジオ、安全メール、市公式SNS、市HP及び報道機関を通じた周知など、様々な手段を用いている。今回の興味深い発信の手法として、発災日である1日には3回防災行政無線によって、市職員の肉声で津波からの避難と火災防止を周知した。人の声での発信は効果的であった。

津波からの避難の基本的な考え方として 【浸水想定区域内:直ちに指定緊急避難場所などの高台へ避難】 【浸水想定区域外:安全な建物の中にいれば、原則、避難しなくてよい 自力での避難が難しい人については、屋外に出ることで余震や交通事故などの二次災害のリスクが高まるため、自宅等に留まることを推奨】

能登半島地震連絡調整会議における有識者からの提言として、これまで自動車での避難を否定していたが、自動車での避難方法を詳細に検討する段階にきていることに対して、市の方針は「原則、徒歩による避難」とするが、「避難行動要支援者等に限定した自動車による避難」を選択肢の一つとした。

次に、生活環境課から能登半島地震による、一般家庭から発生した災害廃棄物の処理について説明があった。災害廃棄物処理計画に基づき迅速な対応を行う必要もあり、一時的に市民から受け入れた災害廃棄物を集積する仮設置き場を、上越市クリーンセンター(市の燃やせるごみ焼却施設)敷地内に設置した。1月5日~5月2日まで開設した。この期間中は、処理手数料は減免とした。現在、災害廃棄物は、順次排出作業をおこなっている。

 

上越市では、津波被害想定区域のデータ情報の制度が格段に向上していることから、市民一人一人の生活・住環境を考慮することで、最良な避難手段を導きだそうとしています。これも、能登半島地震の経験と体感から生まれた示唆なのだと思います。この生きた学びを、三豊市の防災に活かしていかなくてはならないと再認識した研修でした。

総務常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和6年7月9日(火)~11日(木)の3日間、三豊市議会総務常任委員会の行政視察研修に参加しました。研修先は石川県金沢市と新潟県上越市、富山県南砺市の3か所です。

1か所目の訪問先である金沢市では「金沢市の防災の取り組み」について、危機管理課他から説明をいただきました。

 

「『令和6年能登半島地震』における金沢市の対応状況等について」

令和6年1月1日(日)午後4時10分、石川県能登地方(輪島東北30㎞付近)で、マグニチュード7.6規模の地震が発生した。金沢市は震度5弱であった。人的被害は負傷者9名死者なし(帰省先の能登で死者あり)、建物被害9,095件、道路被害2,653件、河川被害101件、がけ地被害184件、水道被害1,100戸、下水道被害約36㎞

災害対策本部は4時10分設置(3月31日をもって解散)し1月1日か~7日に7回開催された。避難状況は避難所124か所で、津波情報のため1日の午後9時30分時点で避難者数10,259人となった。

「能登被災地支援本部」を4日に設置。延べ3,973件を受け入れた。「能登被災者受入支援本部」を10日に設置。輪島市南志見(なじみ)地区から最大314人を受入れ。受入れ支援は金沢市社協が主催し『あつまらんけ~のと!』を開設して【カフェ】【支援物資配布】【相談窓口】を実施している。

能登半島地震関連予算として、能登地域の復興キャンペーン事業や市内経済団体等と能登の団体との連携事業支援制度創設、「銀座の金沢」展、能登工芸作家情報発信支援費、応急仮設住宅入居者に対し災害救助法の対象とならない生活家電の購入費用を助成、食事の提供のない宿泊施設の避難者に食事に使えるプリペードカードの配布、市内で避難所生活を送っている被災者に食事券を提供、「被災宅地等復旧支援事業費補助」、「被災木造住宅耐震改修等事業費補助」等を実施。復旧・復興に向けた取り組みとして、「金沢市被災地区復旧技術検討会議」「金沢市能登半島地震課題検証会議」を設置。現在も、復旧・復興のため取り組んでいる。

次に、「防災」と「景観・観光」「安全・快適」の面で効果が期待できる【無電柱化】の取り組みについて、土木局道路建設課無電柱化推進室から説明があった。

続いて、現地視察で無電柱化事業の事例として主計町(かずえまち)を視察し、備蓄品等を収納する防災倉庫のある金沢スタジアム:防災拠点広場を訪問した。

 

発災時から刻々と移り行く現実の速やかな対応の記録は、臨場感あふれるものでした。また、速やかな復興・復旧に向けた、多面的かつ多様な視点での予算措置の在り方に気付くことのできた研修でした。

三豊市議会会派清風会 福岡市・北九州市視察研修報告・3

2日目の課題討議は、「議員のなり手不足問題への取り組み報告が行われました。

 

コーディネーターを江藤俊昭氏(大正大学社会共生学部公共政策学科教授)に、3氏からの事例報告として辻弘之氏(登別市議会議長)、たぞえ麻友氏(一社 WOMAN SHIFT理事、目黒区議会議員)、永野慶一郎氏(枕崎市議会議長)から行われた。

江藤氏:なり手不足は、単に無投票というレベルに止まらず、多様化の欠如(年齢・性別・職業等)、投票率の低下、といった地域民主主義の問題。多様性が議会の価値そのものだからだ。議員のなり手不足問題を克服するための地方議会の手法として、いくつかの課題がある。「議員報酬を増額すれば・・・」「定数削減すれば・・・」「夜間議会にすれば・・・」「住民総会にすれば・・・」等がよく言われるが、誤解があるので注意すべきだ。

辻氏:[「なり手」を育てる地方議会の未来への種まき研究会~地方議員養成講座]の報告があった。報酬の多少よりも定数減の方が「なり手」不足の要因ではないか。報酬が安くても議員を辞めた後に民間での価値が認められる環境にしたい。

たぞえ氏:「若手女性議員のネットワーク&ママの議員インターン」の報告があった。ミッションは、届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していくこと。WOMAN SHIFTでやっていること ●住所公開が怖い、旧姓使用ができない ●議会に女性が入っても声が届けられない ●20~40代の若手女性の声が拾いづらい 等を解消するためのワークショップ、ママの議員インターンに取り組んできた。議員の活動が楽しい、意義があると実感できるようにしたい。

永野氏:「議員のなり手不足問題への取り組み報告~無投票選挙の克服をめざした4年間の歩み~」の報告があった。無投票回避に向け報酬は現状維持で、定数減を決断し14名から12名にした。その結果、12に対して14の立候補があり、4名の女性議員が誕生した。県内でも最も女性議員比率が高い。現在の報酬額(275,000円)では議員を目指そうとは思わない現実があるが、顔の見える議会を目標に活動している。

 

「研究フォーラム㏌北九州」を受講して通して言えることは、わがまちの市議会の本質的な存在価値とは何かということです。人口、面積、財力、歴史、文化、風土、気質、そしてそこに住む人等、違いを上げれば枚挙にいとまがありません。それぞれの地方議会があっていいということです。多様性が議会の価値そのものなのですから。

以上で報告を終わります。

三豊市議会会派清風会 福岡市・北九州市視察研修報告・2

「第18回全国市議会議長会研究フォーラムin北九州」は、【統一地方選挙の検証と地方議会の課題】のテーマで、北九州市小倉区西日本総合展示場において開催されました。

 

1日目の基調講演が、「躍動的でワクワクする市議会に」と題して、片山善博大正大学教授兼地域構想研究所長からあった。

◯地方議会をめぐる現状とこれまでの地方議会改革を検証する ━ 二元代表制とはいえ、地方自治法を読み込むと議会が最上位である。決定する立場と執行する立場だと、当然決定する方が重用だ。ところが、現状どうみてもそうなっていない。

◯日本の地方議会に欠けていることは何か ━ ①議場という公開の場での真剣な議論がない。議案の審議がなされていないのでそのまま決定している。議案や予算案の修正をしていくことだ。 ②税率の議論がない、お金がなければ税率を上げればいいではないか。固定資産税1.4を上げればいいし、住民税だって上げたっていい。 ③住民の声が聞こえない。住民に参加してもらう議論の場を設ける。

◯現行の議会の権限を活用してもっと積極的に取り組むべきこと ━ ●もっと議案を丁寧に審議する:提案の裏を取る。本質をぼかして説明する場合があるため、当事者を直接議場に呼んで意見を聞く。市民の意見を聞く場を設けてはどうか。議会で予算に対するアンケートを取る。 ● 教育委員会にもっと目を配ってほしい。いじめ・不登校問題(教員のなり手不足:ブラック職場という情報が学生に広がっている)は教育委員会の責任だが、提案を承認したのは議会だ。任命には所信を聞いてはどうか。

以上のような意見と指摘、提案があり、議会の在り方に対する議員自らの姿勢を問い直す有意義な基調講演となりました。

 

続いてのパネルディスカッションは、「統一地方選の検証と地方議会の課題」をテーマに、谷隆徳氏(日本経済新聞編集委員)をコーディネーターとして、勢一智子氏(西南学院大学法学部教授)、辻陽氏(近畿大学法学部教授)、濱田真理氏(Stand by Women 代表、女性議員のハラスメント相談センター共同代表)、田仲常郎氏(北九州市議会議長)の4人のパネラーで行われた。

谷氏:統一地方選を振り返ると投票率は低下傾向が続き、過去最低だった。兼業300万円/年までならOKとなったが、社員の立候補を認め、議員から戻ってもそれを活かした生活をすることが可能な社会にすることもあってもいいのではないか。

勢一氏:問題関心として、地域社会の「鏡」としての地方議会となっているのか。議員構成が地域社会を映していないのではないか。学生は議員の選択肢がないという。政治に興味がないのは変化する社会課題が議論になっていないからではないか。

辻氏:多様な地方議会が求められるのではないか。人口規模に応じた執政制度の選択を可能にしてはどうか。人口規模が大きい自治体では、「専業化」できるがそうでない自治体は「兼業」しないと生活できない。政策立案できる人的・組織的整備が必要だ。議会費が同様又は減額したとしても、それを充実して予算措置してはどうか。

濱田氏:地方議員に対するハラスメントの現状は、男性より女性の方が受けた人が多い。相談体制や議会内のルール作りが重用で、ルールや基準を設けていない場合、対応が非常に困難になる。ハラスメント倫理条例等の制定を行い、ルール作りをしておくことが重用だ。秘書のような人がいない。議員に寄り添う人が必要だ。

田仲氏:北九州市議会の取り組みとして、市民に市議会を身近に感じてもらうため、市の抱える課題をテーマにした市民との意見交換会を行う。また、ドリームサミット(中学生議会)や平和のまちスタディーツアー(議会棟視察)を実施して、関心を持ってもらうように取り組んだ。

 

「研究フォーラムin北九州」の1日目の報告を終わります。

 

三豊市議会会派清風会 福岡市・北九州市視察研修報告・1

令和5年10月25日(水)と26日(木)に北九州市で開催された[第18回全国市議会議長会研究フォーラム㏌北九州]に参加するに合わせて、前日の24日(火)に福岡市にある福岡地区水道企業団が運営する「海の中道奈多海水淡水化センター(愛称:まみずピア)」の視察研修を行いました。

 

海水淡水化センター廣川所長はじめ職員の皆さんが丁寧に対応してくださった。

【海水淡水化事業の目的】 福岡都市圏は地域に一級河川がなくこれまで筑後川からの給水に頼っていた。だが、近年の少雨傾向もあり、渇水が頻発していることもあり、平成22年度を目標年次とする広域水道整備計画が策定され、海水淡水化事業が位置付けられた。筑後川水系に多くを依存する福岡都市圏の自助努力の一つとして、海水淡水化事業を行った。

【施設の概要】 事業費:408億円、維持管理費:18~20億円/年(電気代やRO膜 等)、取水方法:浸透取水方法(玄界灘=最大取水量103,000㎥/日)、海水淡水化方法:海水逆浸透方式(生産水量 最大50,000㎥/日)、放流方法:近隣の水処理センター処理水との混合放流(博多湾内)、供用開始:平成17年6月

現在、福岡市の必要水量は600,000㎥/日で、その内、水道企業団では まみずピア で生産した50,000㎥/日と、筑後川水系からの導水等を併せて250,000㎥/日をまかなっている。

 

三豊市では、詫間地区の工場用水確保が重要な課題となっており、海水淡水化プラントも具体的な検討技術であると確信した視察でした。

 

 

 

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・3

視察研修報告3日目、最後の報告は千葉県いすみ市での「廃校跡地の利活用」についてです。

 

いすみ市は平成17年に夷隅町と他2町の3町合併により誕生した。現在人口43,000人余、面積157.50㎢で、太平洋に面する千葉県の南東部に位置している。内陸部では米や野菜の生産、畜産などが営まれており、また、親潮と黒潮が交わる良好な漁場があり、豊富な海の幸にも恵まれている。

「廃校跡地の利活用」の取り組みは、市HPによる空き公共施設情報の発信に加えて、国・県と連携し効果的なPRを実施してきた。文部科学省の【~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト】や千葉県の県HPの空き公共施設等活用可能施設一覧を活用するなど、企業誘致活動が進められた。また、県主催のイベント等において、市場ニーズの把握や参加企業への積極的なアプローチによる、利活用を検討する企業とのマッチング機会を創出した。千葉県商工労働部企業立地課が主催する『空き公共施設活用セミナー』で可能性を見極め、公募型プロポーザル方式による企業提案の募集を実施した。

企業への支援制度は ●立地奨励金 ●雇用促進奨励金 ●半島振興法に基づく固定資産税の不均一課税 ●過疎法に基づく固定資産税の課税免除 がある。

空き公共施設への企業進出実績は ①旧サンライズガーデンへ地域の仕事拠点となるコワーキングコミュニティの運営事業:年間賃料 111万円余 ②旧学校給食センターに食品会社のレトルト食品の製造拠点:売却額 7,900万円余 ③旧中川小学校へ液晶モニター関連製品の開発やカ亞タマーサポート、商品受注拠点:売却額 2,244万円

これからの案件として、旧千町(ちまち)小学校があり、利活用アイデアの募集中である。

いすみ市は、これまでに地道な移住政策に取り組んできたことで、市のイメージ向上につながっており、企業進出に大きくプラスになったとのことです。たゆまぬシティプロモーションの必要性を再認識するとともに、多様な誘致施策の展開が求められることも気づくことのできた研修でした。

 

以上で、会派視察研修報告を終わります。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・2

2日目の報告をします。

 

防衛省では、人事教育局衛生官総括班長の石関氏から「なぜ、いま 防衛力の抜本的強化が必要なのか~戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために~」の説明をいただいた。

我が国の安全保障・防衛の基本方針として、令和4年(2022)に国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画が新たに策定された。国家安全保障戦略は、政策の戦略的指針であり国家安全保障に関する最上位の文書だ。国家防衛戦略は、防衛省が基本をつくった防衛目標とそのアプローチ・手段を示した防衛の戦略的指針だ。防衛力整備計画は、おおむね10年後の自衛隊の体制、5か年の経費の総額・主要装備品の整備数など、中長期的な整備計画を示したものだ。2023年度~27年度の防衛力の抜本的強化のために、必要な5年間の支出額は43兆円程度と見込まれる。

国民の命と平和な暮らし、そして、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くための手立てだ。相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化を行うことで、我が国を断固として守り抜くという意思と、十分な能力があることを認識させ、相手に我が国を侵略する意思を持たせないことにつなげていかなくてはならない。

国家防衛の本質を再認識した研修でした。

 

文部科学省とこども家庭庁との情報交換会を国会議員会館で行った。

先ず、文部科学省初等中等教育局 修学支援・教材課・学校デジタル化プロジェクトチーム 中嶋氏から「GIGAスクール構想推進について」の説明をいただいた。

GIGAスクール構想の実現に向けて、目指すべき次世代の学校・教育現場とは5点ある。●学びにおける時間・距離などの制約を取り払う ●個別に最適で効果的な学びや支援 ●プロジェクト型学習を通じて創造性を育む ●校務の効率化 ●学びの知見の共有や生成 である。

学校のICT環境整備に係る地方財政措置として、◎平成30年に「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(平成30年度~令和4年度)」を策定し、単年度1,805億円の地方財政措置 ◎新たなICT環境整備方針の策定について、令和7年度に向けて検討を進めることとし、現計画期間を新たな方針までのつなぎとして令和6年度まで延長 となっている。

今後、GIGAスクール構想を踏まえた成果や課題等を検証し、引き続き教育のICT環境整備を進めていくため、令和7年度以降の新たな学校における方針の策定に向けた検討審議を行うために、「次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ」が設置された。

令和5年6月16日に『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画が閣議決定された。”国策として推進するGIGAスクール構想の一人一台端末について、公教育の必須ツールとして更新を着実に進める” というものだ。

デジタル世界に生き抜くための欠かすことのできない必須スキルであることを知るほどに、我が国のデジタル化の遅れは未来に生きる子どもたちに対する大きな付けになりはしないかと危惧した研修でした。

 

続いて、こども家庭庁長官官房参事官(総括政策担当)付参事官補佐(計画担当)新田氏と万木(ゆるぎ)氏から「こども家庭庁の取り組みと こども政策の概要について」説明をいただいた。

こども家庭庁関連予算の基本姿勢は、1.こども政策は国の未来への投資であるため、安定財源を確実に確保する 2.複数年度で戦略的に考える 3.こどもの視点に立ち施策を立案する 4.縦割りの狭間に陥っていた問題に横断的に取り組む 5.支援を求めている者にしっかり届ける である。

令和5年6月16日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2023では、新しい資本主義の加速の主要方針として、「少子化対策・こども政策の抜本強化」が示されている。

【若年人口が急激に減少する2023年代に入るまでが、状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、ラストチャンスである。若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援するという3つの基本理念を踏まえ、抜本的な政策の強化を図る。具体的には、こども未来戦略方針に基づき、今後加速化プランの3年間の集中取り組み期間で、経済的支援強化や所得向上に向けて取り組む。そのために、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充と、共働き・共育ての推進をする。こども・子育て予算倍増に向けては、加速化プランの効果の検証を行いながら、政策の内容・予算をさらに検討し、こども家庭庁予算で見て、2030年代初頭までに、国の予算又はこども1人当たりで見た国の予算の倍増を目指す。】

以上のような使命のもと、こども家庭庁は発足し始動しています。少子化対策・こども政策の抜本強化は、新しい資本主義の加速による国力の強化が大目標です。すなわち、全ては国の経済財政運営のためにあるのでしょう。

 

 

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・1

清風会の視察研修に令和5年7月4日(火)~6日(木)の3日間参加しました。視察研修先は、1日目に都内の日本銀行・貨幣博物館と農林水産省、2日目に防衛省及び国会議員会館での省庁官僚との情報交換を行い、3日目に千葉県いすみ市における「廃校跡地の利活用」についてでした。

 

日本銀行・貨幣博物館では、政策委員会室国会渉外企画役 小坂田氏から、令和5年4月27日・28日に開かれた『金融政策決定会合』の「先行きの金融政策運営方針」の説明をいただいた。 ”経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。そのためには、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。” としている。続いて、金融研究所貨幣博物館館長 福山氏の案内で、「お金の歴史」について説明をいただいた。

農林水産省では、農村振興局農村政策部地域振興課 荒廃農地活用推進班の千田氏と菅野氏から、農山漁村振興交付金のうち、最適土地利用総合対策等の説明をいただいた。対策のポイント及び事業内容、事業イメージは別紙資料の通り。

令和5年第4回定例会一般質問報告

令和5年三豊市議会第4回定例会における一般質問報告をします。

「市民病院と地域産業(資源)の連携について」

質問   三豊市立みとよ市民病院は開院から1年半が過ぎた。今、国では、2024年度以降の医療・介護・障がい者支援のトリプル同時報酬改定が議論されている。自治体病院であるみとよ市民病院も、その都度、経営状態に少なからず影響を被る。市民病院が報酬額の増減により経営状態が翻弄されることのない独自の収益事業を、市の産業施策と連携して構想することで、なくてはならない自治体病院であることの存在感を示すべきときが来たと思う。

市民病院の存在価値を見つめ直すべきだと気づいたのは、次の理由による。「自治体病院経営において、総務省は一般会計を入れた後の経営収支の黒字を重視しており、税金投入ゼロを求めているわけではない」ということだ。それは、地方の自治体病院が都市と地方の税の格差を埋める再配分機能を有しており、住民の命を守る病院をつくり、医療者を雇用して、医療を提供することができるため、ほかの公共施設より意義が大きいからだ。さらに、病院や福祉施設は将来を見込める産業であり、産業振興の観点からも考えるべきである。

かといって、病院維持のためにルール分の税金を増やすことは、財政からしても納得のいくものではない。そうならないために、そこに病院があることの存在価値を活用した市民病院と地域産業(資源)の連携による経済活性化が図られ、そこで得られた収益が病院の経営支援に向けられるような取り組みができないかということだ。市民とともにある『みんな』の市民病院を核とした地域産業(資源)の連携による地域経済活性化と市民病院の健全経営に向けた取り組みの考えを問う。

次に、三豊市だからこそできる産業(資源)を活かした事業展開の検討をしてはどうか。3点について提案する。 ①地域観光資源やゲストハウス、スポーツ施設等を活かした医療ツーリズムの可能性。これまでの医療ツーリズムは、高度医療を求めた海外からの富裕層中心のものであるが、今後は、求める需要が一般化することによる健診と観光を兼ねた家族ぐるみの医療ツーリズムのマーケットの可能性があると考えられる。 ②摂食障害嚥下食をはじめとする薬用作物を取り入れた、薬膳の医療・介護食等の開発と提供。教育機関や民間事業者の協力による、患者の病状に応じた食材、メニュー開発を、薬用作物栽培を主要施策として推進する、このまちだからこそできる薬膳メニュー開発が考えられる。 ③ベーシックインフラ活用による、治療後の日常生活を支える事業展開。市はベーシックインフラ構築に向け、市民への直接サービスの展開に着手しているが、病院の【治す医療】はもとより、治療を終えた利用者が日常の生活に戻ってからの【支える医療】があれば、楽しい食事が実現するものと考える。

以上の3っの視点から、医療機関の存在価値を最大限に活用した地域活性化と産業政策の考えを問う。

 

答弁   みとよ市民病院は、地域に根差した病院として、市民の生命と健康を守るため、職員は患者の立場に立った病院運営に努めている。この地域になくてはならない病院として、退院後の支援や事業者との連携を考えていく時期に来ていると認識している。

市民病院を核とした地域産業の連携による地域経済活性化と市民病院の健全経営に向けた取り組みの可能性については

①医療ツーリズムは、今後、求める需要が一般化することになれば、観光などの周辺産業にも貢献するなど、経済的な効果も期待できると考える。現在、ふるさと納税の返礼品を活用した人間ドックを提案し、募集を進めているところだ。ほかの地域からの健診の受け入れをすることで、本市の認知度を高め、交流人口の拡大につながることから、先進事例を調査研究するとともに、関係機関と連携を図る。

②高齢者や障がい者の摂食嚥下障害の問題は、医療機関や介護施設だけでの支援では限界がある。食の支援には、本市の地域資源である農産物や魚介類、フルーツ、薬用作物などを活用し、教育機関や異業種連携により医療・介護食の開発を進めていく必要があると認識している。健常者が食べてもおいしい嚥下食が開発できれば、退院後も家族で同じものを食べることができ、在宅でのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の生活の質が向上すると考えられるため、先進事例を調査研究していく。薬用作物の取り組みは、市民病院では本市の総合政策アドバイザー監修のレシピを取り入れた健康食を薬膳料理として、1泊の人間ドック受診者に提供しており、食の重要性を再認識していただいている。このようなレシピを地域の事業者と共有することで、市民の健康増進と地域資源の活用を進めていく。

③今年度、三豊ベーシックインフラ整備事業として、地域の健康社員食堂という取り組みを実施している。市民病院と連携しながら、企業の従業員だけでなく、治療を終えた患者に拡大していくことは、市民全体の健康維持向上の観点から十分検討すべきであり、展開可能性のあるものだと考える。また、日常生活に戻ってからの支える医療は、宝山湖ボールパークの芝生広場や父母ヶ浜の砂地などの観光資源を活用し、退院後のリハビリや精神的な癒しの提案などを、関係機関と検討していく。

今回の提案により、みとよ市民病院の存在価値を高めるとともに、事業者との連携により地域活性化を進めていきたいと考えている。

 

以上で一般質問の報告を終わります。

 

 

地域医療政策セミナー研修報告 他

令和5年10月31日(火)、東京都内にある都市センターホテルで開催された、全国自治体病院経営都市議会協議会の主催による『第17回地域医療政策セミナー』及び、11月1日(水)の官公庁訪問の報告をします。

医療政策セミナーでは2件の講演がありました。

 

1件目  「地域包括ケアシステムを支えるICTの仕組みづくり」 守屋潔氏(名寄市役所健康福祉部、名寄市立総合病院情報管理センター長)

母親の介護体験から、〈治す医療〉だけではなく〈支える医療〉があることに気付き、ICTネットワーク構築に取り組み始めた。ちょうど令和6年度の医療、介護、障がい者支援のトリプル同時報酬改定が議論されていた。2025年以降の医療・介護提供体制の姿の3つの柱は、①『医療・介護を提供する主体の連携』により、必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受け入れられること ②地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその『連携』が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること ③『健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備』されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること となっている。これを医療DXにより、名寄市のすべての医療介護連携を改善しネットワークで実現した。

名寄市医療連携ICTのコンセプトは、1)病院の視点:名寄市立総合病院と地域の連携効率化 2)ケアマネージャーの視点:ケアマネージャーの業務負荷の軽減 3)市の視点:市が中心になって地域で1つのネットワーク(地域完結型)をつくる ということだ。そのために、医療の情報と介護情報を1つのパソコンで全て見えるように構築していった。情報の性質として、ストック情報の【ID‐LINK】とフロー情報(日々の情報のやりとり)の【Team】で構成されており、市が積極的に声がけすることで、全員参加することができた。

情報・データ等を機能効率しても、ICTのIだけでは動かない。Cのコミュニケーションが重用であり、自分たちでつくろうという当事者としての共感が加わって初めて動き出す。

名寄市の取り組みからのヒントとして4点あげる。●介護者にとって最も必要なのは利用者の正確な医療情報であり、医療連携の基盤の上に介護連携、医療介護連携が成り立つ ●自治体が事務局となり、地域全体の最適化=地域包括ケアシステム構築のためのICTであることを明確にすること ●ICT業者丸投げにせず、現場の声を引き出す、当事者意識を持たせるファシリテータの助力 ●機能よりもランニングコストを最小化して継続性を重視し、機能不足は運用で補うこと だといえる。ICTネットワーク構築の費用は、初期投資約2千万円、維持運営費は120~130万円程度だ。

終わりに、「ストック情報は国がDX推進しているが、先ずフロー情報整備から取りかかり、参加する全ての人々が当事者意識を育むための共創の場づくりから着手してはどうか」 との提言があった。

 

 

2件目  「食支援の京のまちづくり~新たな医療産業連携の試み~」 荒金英樹氏(愛生会山科病院消化器外科部長、京介食推進協議会会長、京滋摂食嚥下を考える会顧問)

京都の市中一般病院で一般消化器外科に従事している。人工栄養とがん患者の栄養管理を専門としており、疾患に応じた栄養支援をすることで、治療の下支えを行なっている。また、超高齢社会の招来による摂食嚥下障害、誤嚥性肺炎の増加に対し、院内の体制を整備するとともに、地域での医療連携、異業種との交流を通した「まちづくり」に取り組んでいる。

食を支える京都の医療・介護連携は、2008年の京都府口腔サポートセンターに始まり、2010年〈いつまでも食事を楽しめる京都、滋賀〉をスローガンに京滋摂食嚥下を考える会の発足、2012年山科地域ケア愛ステーション(現 京都市山科区在宅医療・介護連携支援センター)でき、2016年には京都府医師会在宅医療・地域包括ケアサポートセンター へとつながっており、訪問管理栄養士を広めている。

食を支える京都の医療・産業連携は、医療・介護連携だけではなく異業種連携により推進されてきた。京滋摂食嚥下を考える会を発足し、数々の「嚥下食プロジェクト」を発案実施してきた。有名料理店と連携した【京料理】、福寿園に依頼した【京のお茶】、京都府菓子工業会と協力した【京の和菓子】、伏見の老舗蔵元とコラボした「日本酒プロジェクト」、豆腐を飲み込みやすくて美味しい「豆腐プロジェクト」、食器にこだわった「介護食器プロジェクト」などがある。極み付けは、「晴れの日の松花堂弁当」や、『せんしょう』の「やわらかおせち」となった。

多職種連携、地域連携による京都のまちづくりを推進するために、「京介食推進協議会を発足し、新ブランド『京介食』を立ち上げた。これまでの取り組みの中から、「食支援の京のまちづくり」の発想が生まれた。医療技術を産業の発展に使えないか。これまでは地域包括ケアシステムには産業界が入っていないため、利用者の意見が取り入れられていなかった。医療を介して利用者の意見を取り入れ、新たな医療・産業連携に向けて、『京MED(キョウメド)』(京都×医療・介護分野への参入を目指すチーム)が発足した。

今、ポストコロナに向けて、京都府商工労働観光部ものづくり振興課と公益財団法人京都産業21の参画により、行政との連携が始動している。

 

『第17回地域医療政策セミナー』の研修報告を終わります。

 

11月1日(水)には、三豊市職員2名のそれぞれの出向先を訪問しました。一般財団法人地域活性化センターでは森亘輝さんに面会し、センターの役割や所属している企画・人材育成グループの業務等について説明をいただきました。また、経済産業省で業務に当たっている赤池賢史さんから、「工業用水道の現状と課題を踏まえた施策の取組状況」について説明をいただきました。お二人とも元気で業務に携わっているようでした。

忙しいところ時間を割いていただき、ありがとうございました。