公共施設再配置特別委員会 視察研修報告・1

令和5年(2023)10月2日(月)~4日(水)の3日間、三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修に参加しました。視察研修先は、1件目は茨城県かすみがうら市、2件目は同じく古河市、3件目は栃木県宇都宮市の三市です。

 

かすみがうら市は、平成18年に2町合併により誕生した。現在人口は約4万人で、面積は156.60㎢(内、霞ヶ浦面積37.87㎢)となっている。国内第2位面積の「霞ヶ浦」と筑波山系南麓に挟まれ、首都東京へ約70㎞、水戸市へ約30㎞、つくば市へ約10㎞の距離に位置しており、幹線交通網にあり立地条件に恵まれた田園都市だ。

『廃校の跡地利用について』かすみがうら市総務部検査管理課財産総括室から説明をいただいた。

かすみがうら市には、3中学校区がある。その内千代田地区と霞ヶ浦地区の2地区において、廃校の跡地利用の検討がされている。

廃校になるまでの経緯は、平成25年に小中学校適正規模実施計画を策定、平成26年に霞ヶ浦地区中学校統合、平成28年に同じく小学校を統合。平成29年に小中学校適正規模化実施計画を改訂し、令和4年に千代田地区小・中学校を統合した。これにより、10校が廃校となりその利活用に向けて委託事業者によるサウンディング手法を取り入れた、「廃校利活用等ニーズ調査」が行われた。また、コロナ禍の中においてもVR技術を活用しながら廃校見学会等にも取り組んだ。

廃校利活用の実例として、10校中5校の跡地利用が実施されている。いずれも売却ではなく民間への賃借、または、公共による複合施設としての活用となっている。民間利活用の具体例は、一つはキャンプ施設として、もう一つは研究関連施設となっている。公共による複合施設としては、『かすみがうらウエルネスプラザ』に生まれ変わった。保健センター、包括支援センター、社会福祉協議会、シルバー人材センター、貸室、体育館の複合機能を有しており、指定管理者によって運営されている。

未利用の5校の内、2校は取り壊し予定とのことで、残りの3校は検討課題としている。今後の取り組みの課題は2点ある。①市街化調整区域のため用途変更が制限されるため、制限緩和と柔軟化のために『地域未来投資促進法』による特区の設定の検討 ②老朽化と耐震性を有していないケースが多いため、公共施設等総合管理計画に解体方針を明記し、除却債を活用しての施設解体を検討

今後、解決するために取り組んでいく。

 

三豊市は、今後学校統廃合が進められ、廃校が急増することは明らかとなっています。市民説明を実施し、地域の課題や意見を述べる機会を設け、より一層の意向反映を行っていくとともに、中長期的な観点からの公共施設のあり方を検討していかなくてはなりません。その上で、民間との連携も視野に入れた利活用の方向性を見極めていく必要性を再認識した研修でした。

 

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅲ

3件目の報告は、福井県高浜町の『耕作放棄地を活用した薬草栽培~福井県高浜町の取り組み~』です。

 

高浜町は、日本海に面し京都府舞鶴市に接する福井県最西端に位置する。人口は約10,000人で面積は約72.4㎢で、うち農地面積は約440haで小さな耕作地が多くを占めている。大正時代から夏の保養地として海水欲などの観光客を誘致してきた。現在、世界レベルでの環境認証「ブルーフラッグ」を日本初で取得し、アジアで一番きれいなビーチと評される観光と農業のまちだ。

高浜町産業振興課から『耕作放棄地を活用した薬草栽培』の説明をいただいた。

薬草栽培の取り組みのきっかけは、町内にある青葉山(標高693m)に約500種類の有用植物が自生していることが分かった。平成27年度より地域の資源として活用の検討が始まり、地元団体「青葉山麓研究所」が設立された。平成28年度に(公社)東京生薬協会と栽培に係る連携協定締結がされ、令和2年まで栽培技法を模索してきたが、生産体制の構築には至らなかった。令和2年以降、新たな栽培指導者(福田商店と九州の大学)から、実績のある栽培方法を受講することで、作業体系が確立し成果を得ることができるようになってきた。生薬生産に必要な要素とは、本当に生産実績がある①栽培指導者、指導を確実に実行する②担い手プレイヤー、継続的な③行政支援、買取規格を明示する④買い手生薬問屋 の存在と連携が不可欠だ。

栽培地の棲み分け(土質)による薬草の ‟選択と集中” に着手した。中山間エリア:Ⓐヤマトトウキ  沿岸エリア(砂地):Ⓑミシマサイコ(+ⓒシソ)  休耕田:Ⓓシャクヤク の主要4品目に集中し、我流は絶対せずに栽培指導者に習う。目標は実証栽培のプログラムづくりと担い手育成に向けた仕組みづくりとした。

令和4年2月に収穫したヤマトトウキの湯もみ(冬作業)を行った。江戸時代から続く伝統技術であり、収穫・加工の「体験イベント化」による農泊体験事業の可能性を摸索中だ。また、地域の中学校の総合学習の時間をつくることにより、栽培者のやる気にもつながっている。

令和2年播種したミシマサイコは令和3年11月に収穫でき、通常2年かかるところが1年2か月で収穫できた。55㎏/反の収量があり、先行地の2倍以上と多い収穫となった。

作業時間の算出と目標は、時給単価を増やすためマルチ栽培はせずバラまきで収量を確保。集計からミシマサイコは200h/反であることから、稲作の50h/反とトマト400/hの中間の作物に位置付けて、より効率的な作業方法を研究中であり、反収20万円強を目指す。ミシマサイコは未利用部位(葉・茎・花)の活用の可能性がある。ミシマサイコ茶や入浴剤等の商品化を進めている。

シソは4月定植で7月に収穫・出荷できる。なぜシソなのかは、①地上部だから目に見える ②勝負が早く「成功体験」を得ることができる からだ。現在、シソをマハタのえさにしたハーバルフィッシュを研究中だ。

ハーバルビレッジでの活用事例は、豊かな自然環境と薬草を掛け合わせた施設として、「体験イベント」×「薬膳」 「登山」×「薬膳」 「キャンプ」×「薬草」で薬草栽培の情報発信拠点となっている。

今後の目標は、実証栽培は完了したため、次は「栽培地の団地化」だ。地域の生産者を増やす取り組みと新たな担い手の登場による、農地のままで次世代へつないでいく政策が求められるからだ。

高浜町の考える薬草産地化の定義は、【高品質な薬用作物を毎年安定出荷すること=高浜ブランドの創出】 によって、薬用作物を活用した「農林水産+観光事業」の連携が実現すると考える。

 

3件の行政視察は、いずれも物事の根幹をなすのは真似事ではない、自らの足元からしっかりと見つめ直すことから始めなければならないという、政策立案の原点に立ち返ることの大切さを痛感した研修でした。

以上で報告を終わります。

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅱ

2件目の報告は、奈良県宇陀市の『宇陀市薬草プロジェクト』の研修です。

 

宇陀市は、平成18年に4町村が合併して誕生した。三重県名張市に隣接する奈良県北東部に位置する。人口3万人弱の小規模なまちだが、吉野葛等の伝統的な食品製造や毛皮革産業など、特徴ある伝統的な地場産業がみられる。

薬草については、日本書紀によると611年推古天皇の時代に日本最初の薬猟の記録があり、宇陀の地が王権の猟場であったことを示している。江戸時代には薬のまちとして栄え、何人もの製薬企業(ロート製薬、ツムラ、アステラス製薬等)の創業者を輩出している。宇陀市農林商工部商工産業課から『宇陀市薬用プロジェクト』の説明をいただいた。

薬の発祥地として薬草を活用したまちづくりを推進してきた。「ウエルネスシティー宇陀」を掲げ、市民の健康はもとより栽培者の健康にも貢献することを目指している。

栽培は、平成24年12月から薬草プロジェクトが始動し、シャクヤクやトウキ、アマチャ、ボタン、ジオウ等の栽培研究が市民参加で行われた。同時に、大和トウキの試験栽培が始まり、いろいろな取り組みの中から新たな栽培法により、新技術の取り組みが始まっている。平成26年10月に開かれた薬草栽培説明会には48名の参加があった。薬草問屋の指導もあり、平成27年3月に「宇陀市薬草協会」が設立され、販売先の心配なく栽培に集中できることで本格始動となった。大和トウキの試験栽培から10年となる令和4年は、約80名が栽培に取り組んでおり、根集荷量2,241㎏、葉集荷量3,693㎏の実績となった(連作障害で隔年で終了の増減がある)。

PR関係は、これまでに国内の薬草シンポジウムに参加・視察するとともに、薬草活用講演会や料理教室の開催を行ってきた。平成27年3月には地域経済循環創造事業交付金を活用した事業として、『薬草カフェ』をオープンした。また、薬草文化祭の開催や「全国薬草シンポジウム2018inうだ」を誘致し開催してきた。令和4年5月には、農山漁村振興交付金を活用した事業(農推進事業)の『うだ 薬湯の宿 やたきや』がおオープンした。これは、古民家をリノベーションしたもので「日本ヘルスツーリズム振興機構」が認証するヘルスツーリズム資格を保持したスタッフによる体験プログラムを提供している。令和5年5月に「宇陀松山薬草発酵博覧会」を開催し、積極的にPR活動を継続している。

販路開拓は、大和トウキの根は「当帰芍薬散」などの漢方薬の生薬として利用されるが、葉は平成24年に「非医」扱いとなり食品として利用できるようになったため、栄養機能食品を取得することで葉を加工販売し、六次産業化の推進を行っている。これは、良質な薬草栽培を目的として、生産者の所得向上を目指すものだ。

薬草を活用したまちづくりは、宇陀市を発信元として生産部、ウエルネス部、六次産業化部が、国・県・大学・企業の産官学の連携で推進されている。六次化商品としてのふるさと納税返礼品の売り上げは400万円/年で、うち製油商品は100万円/年あり、今後全体で3,000万円/年の販売を目標にしている。

 

日本最初の薬猟の壁画が星薬科大学本館にあったことは、宇陀市と同大学の宿命的なつながりを決定づけています。『宇陀市薬草プロジェクト』の事業展開に大きく影響していることは間違いありません。三豊市における薬用作物事業も、歴史、文化、風土、気候に根差した展開が求められます。市民の健康のためのウエルネスとともに、生産者の所得向上を目指した葉の活用による六次化商品展開に向け、産学官の連携推進がますます重要であることを確認させていただいた視察研修でした。

 

 

 

市民建設常任委員会行政視察研修 報告Ⅰ

令和5年(2023)7月12日(水)~14日(金)の3日間の日程で実施された、三豊市議会市民建設常任委員会の行政視察研修の報告をします。報告は、1件目 滋賀県湖南市、2件目 奈良県宇陀市、3件目 福井市高浜町 の順に行います。

 

1件目の湖南市は、平成16年に石部町と甲西町の2町合併により誕生し、現在人口は54,000人余、面積は70.40㎢となっている。滋賀県南部に位置し、大阪と名古屋からそれぞれ100㎞圏内にあり、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交流拠点にある。名神高速へのアクセスが良く、県下最大の工業団地が立地し、地域経済の発展に大きな役割を果たしている。

『湖南市脱炭素先行地域事業について』湖南市環境経済部環境政策課 地域エネルギー室から説明をいただいた。

湖南市総生産(総所得・総支出)は2,717億円で、地域の所得循環構造において、エネルギー代金の流出が約243億円で、GDPの約8.9%を占めている。県下最大の工業団地を有することもあり、電力料金として関電への流出が大きいことにある。

もとより環境意識に対する市民意識が高い地域であることから、全国にも珍しい〈地域に存在する自然エネルギーは地域固有の資源である〉ことを条例制定の目的とする「湖南市地域自然エネルギー基本条例」が平成24年(2012)に制定されていた。そこから『地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業(経産省)湖南市地域におけるスマートエネルギーシステム導入の検討』が行われた。

その結果、地域新電力 こなんウルトラパワー(株)が平成28年(2016)に設立された。地域新電力のメリットは ①地域で作られた地元産電力を地域で利用(地産地消) ②地域内で資金循環 ③ICTを活用し、各施設の電力見える化や遠隔制御による省エネ・節電サービスを提供 ④災害時の避難所の電源確保、レジリエンス性向上 ⑤安価な電力を提供 がある。

事業スキームは、地域の再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力)を地域新電力が需給管理・運営・エネルギーマネジメントして、地域内の地元産電力を利用者へ供給することで、「エネルギーの地産地消によるエネルギーの費用流出の最小化」で地域の活性化を実現しようとするものだ。

第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プランにおける「地域新電力が核となって事業を推進していく取り組み」として、7つのプロジェクトがある。  1.小規模分散型市民共同発電(FITに頼らない事業展開・小規模分散型でのソーラーシェアリング・自家消費型屋根借り太陽光発電への参画) 2.家庭用太陽光発電買取(家庭での自然エネルギー活用に寄与する取り組み推進) 3.自家消費型太陽光発電(屋根借り太陽光発電事業によるエネルギーの地産地消推進) 4.イモエネルギー活用(農副連携の取り組み推進による芋製品の開発等六次化産業化への検討・ソーラーシェアリングの活用) 5.木質バイオマス活用(林福連携の取り組み推進による木質バイオマス燃料の供給実施) 6.公共施設の脱炭素化(エネルギーを主眼に置いた効率的な公共施設の維持管理について検討) 7.地域マイクログリッド構築(災害時でもエネルギー供給が途切れない防衛エリヤ検討)  いずれもSDGsの視点による展開となっている。

湖南市の目指す将来ビジョンは、━新電力を核として 地域にある自然エネルギーを活用することで 地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を目指します 〈湖南市版シュタットベルケ構想〉━  として、その上で戦略プランの定量的な目標を、経済、環境、社会の角度からそれぞれ定めている。

湖南市の2030年のあるべき姿は、こなんウルトラパワーを核とした地域循環共生圏を目指したSDGs未来都市構想の実現に向けて、①自治体新電力を核とした官民連携の自然エネルギー導入プロイジェクトの実施 ②地域経済循環の創出 ③多様な主体との連携により地域の活力を創生し、未来を創造る ‟さりげない支えあい” のまちづくりの実現をめざす。

一連の取り組みと未来社会を創造する取り組みの提案が、環境省の『脱炭素先行地域』に選定されている。既に認定・発動している「SDGs未来都市認定」と「ゼロカーボンシティ宣言」を活かしながら、あるべき姿の ‟さりげない支えあい” のまちづくりに向け『湖南市脱炭素先行地域事業』に取り組んでいる。

 

湖南市には湖南市の、三豊市には三豊市のここだからこそこうするといったまちづくりの必然性があることを再認識することとなりました。自然・住環境や経済・産業の構造、歴史・文化・風土など、それぞれの地域に相応しい脱炭素社会構築があることを、自覚することから始めなければならないのだろうと、考えさせられた視察研修でした。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・3

視察研修の最終日となる3日目は、佐賀県佐賀市の【佐賀市清掃工場】における「バイオマス産業都市・佐賀市が目指す 持続可能な脱炭素・資源循環のまちづくり」について、市環境部循環型社会推進課3R推進係 羽立参事と小早川主任から説明をいただきました。

 

佐賀市清掃工場は、平成の大合併(1市6町1村)をきっかけに、ごみ処理施設の統合へと動きが進み、周辺地域の合意を得て平成26年に4か所あった施設を佐賀市清掃工場に集約し一括処理することとなった。

地域の理解を得るために、地域にとって有益な施設とするための施設統合の効果であるコスト縮減、バイオ資源の増加を周辺地域に還元することを目指して、地域産業の創出を実践することとし、『バイオマス産業都市構想』へと展開していった。平成26年 ‟廃棄物がエネルギーや資源として循環するまち” として『バイオマス産業都市』の認定を受けた。

取り組み内容は、1.清掃工場二酸化炭素分離改修事業 2.木質バイオマス利活用事業 3.下水浄化センターエネルギー創出事業 4.微細藻類培養によるマテリアル利用及び燃料製造事業 5.家畜排せつ物と事業系食品残差との混合堆肥化事業 6.事業系食品残差と有機性汚泥の混合利用事業 となっている。

「バイオマス産業都市さが」の基本方針は ①既存の施設を活用する ②市が仲介役を果たし企業の連携を実現する ことにある。その方向性は「これまで処理に費用をかけていたものを相互に有効利用する仕組みを構築し、処理費軽減による市内企業の経営の改善と、バイオマスの有効活用による(新)産業を育成することだ。この取り組みとして、佐賀市は仲介役に徹することとした。一つは、行政が関係者の想いや技術をつなぎ、それぞれにとってメリットのある関係を構築すること。二つは、域内の資源融通により、廃棄物量や処理費用、域外からの資源購入を抑制し、新たな価値を生み出すことで域内経済を活性化すること。

画期的ともいえる、ごみ処理施設におけるCCU事業の取り組みについて。(※CCU事業:処理施設から排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用するプロセス)  平成28年、ごみ焼却施設から発生した二酸化炭素を分離回収する設備を、環境省から15億円の補助金を得て日本初として稼働し、そのCO2を植物の成長促進に実用化している。例えば、(株)アルビータによる藻類培養、クリーンラボ(株)によるバジル栽培、ゆめファーム全農SAGAによるキュウリ栽培等の実績があり、清掃工場周辺は増設・新設も含め、次々と産業が集積している。

二酸化炭素分離回収事業による経済波及効果は、54億1,300万円と算定されている。今後の事業展開は、佐賀市の取り組みを全国、そして世界に広げたい!! CO2回収設備の普及と回収したCO2の利活用で、サーキュラ(バイオ)エコノミーの浸透を図っていくことを目指している。

 

ごみ処理が目的であったとしても、そこに向かうプロセスの中で環境への負荷を軽減し、利益に転化することにとどまらず、雇用も生み出す高度な政策立案と展開は、目を見張るものがあります。三豊市におけるバイオマス資源化センターをより効果的に活用するためのCCU事業を立案していく必要性に気づかされた視察研修でした。

以上で、会派清風会の視察研修報告を終わります。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・2

視察研修の2日目は、鹿児島県南九州市役所を訪問し、観光行政について研修を行いました。

 

南九州市は、平成19年12月に知覧町を含む3町が合併して、人口約4万人、面積357.91㎢となり誕生した。現在人口は全国の地方都市同様、合併以来減少が続き3万人余となっている。薩摩半島の先端中央部に位置し、歴史と自然豊かな環境にあり、旧知覧町の歴史遺産や市内全域にある自然環境を生かし、観光によるまちづくりに取り組んでいる。

商工観光課の森田課長から「南九州市の観光概要」、文化財課からは「歴史遺産を活用した観光振興」、都市政策課からは「歴史と景観をいかしたまちづくり」の説明をいただいた。

【南九州市の観光概要】  昭和40年代前半に知覧武家屋敷庭園群が文献で紹介されたことに始まる。それを中心とする知覧の市街地は、昭和55年から道路や公園の整備が着手され、歴史と景観を活かした潤いのある街並み整備として、武家屋敷や平和をモチーフにした和風で落ち着いた佇まいの町づくりが進められた。町づくりが進む中、昭和62年に知覧特攻平和会館が新築され、より多くの資料展示や語り部による講和等が充実してきた。しかし、鹿児島空港からの直行バスの廃止や、新型コロナウイルスの影響もあり、近年は観光客の減少傾向が続いている。南九州市には宿泊施設が少なく日帰りが主流のため、観光消費額と滞在時間の拡大も課題である。

【知覧武家屋敷庭園群】  武家屋敷のある麓地区18.6haは、昭和56年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、7つの庭園は国の「名勝」に指定されている。その所有者等で「知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合」を組織し、入園料の徴収やPR事業、生け垣の剪定、病害虫対策を行っている。新たな取り組みとして ●WⅰーFⅰ整備・多言語音声ガイド導入 ●周辺駐車場の無料化 ●ちらん灯採路~南九州市あかりの道標~ を展開している。

【知覧特攻平和会館】  第二次世界大戦末期に行われた特攻作戦にまつわる資料を展示し、平和の大切さや命の尊さを発信している。近年は、平和学習の場として、全国各地の学校が訪れている。

【新たな観光地づくり】  番所鼻自然公園は、伊能忠敬が「天下の絶景」と称賛したとされ、鹿児島県の事業を活用し、駐車場や園路整備して新たな観光スポットとしている。市内には、まだ埋もれた観光資源があるが、限られた予算の中で持続可能な観光地をどのように整備・維持していくかが課題だ。

【稼ぐ観光に向けた取り組み】  南九州市は日帰り観光地であるため、宿泊以外の分野で観光消費額を向上させる取り組みを進めている。 ●サイクルツーリズムの推進 ●自然を活かしたアドベンチャーパークの整備 ●体験予約サイトの運用 ●新ご当地グルメ「みなコレ名物丼」の開発 などがある。

【歴史と景観をいかしたまちづくり】  町並みの整備にあたり、歴史遺産である武家屋敷群を背景とした知覧町の街路事業では、その歴史と建造物等に十分配慮し、修景や景観の保全に努めた。昭和48年度から平成16年度の約30年をかけ、10工区の町並み整備を行った。総事業費は、75億円近くを投入した。現在、南九州市知覧町の歴史と景観を活かしたまちづくりが、観光の基盤とゆるぎない価値につながっている。

 

南九州市は、宿泊施設が少ないため、日帰り観光地となっていることの現実を直視し、宿泊の6,000円がないのであれば、食で3,000円+土産物で3,000円を稼げばいいと振り切っています。そこには、地元産品をフルに活用した食事メニューや土産物の開発に活路を見出そうとする明確な方針が見えます。

三豊市も同様の環境であることをしっかりと見つめ直し、宿泊施設誘致活動は引き続き進めていくことはもとより、地元産品を活用した商品開発による産業振興が、三豊市の観光振興につながっていくことを再確認できた研修でした。

三豊市議会会派清風会 視察研修報告・1

令和5年(2023)1月30日(月)~2月1日(水)の3日間、会派清風会の視察研修に参加しました。訪問先は鹿児島県鹿児島市と南九州市、佐賀県佐賀市の3か所でした。

 

1日目の視察研修は、『鹿児島市すこやか子育て支援館(愛称:りぼんかん)』において、鹿児島市の子育て支援施設の運営実態を、市こども未来局子ども政策課交流係の高橋主幹から説明をいただいた。

鹿児島市の子育て支援施設は、『すこやか子育て交流館(りぼんかん)』を中央館と位置づけ、市内をカバーするように東西南北に4つの『親子つどいの広場』が設置されている。さらに、それらを補完するように3つの『児童センター』と、8か所の『地域子育て支援センター』が設置されており、現在市内には16か所の拠点施設がある。

『りぼんかん』は、子育て中の親の不安感や負担感を軽減するとともに、子育て家庭や団体等の活動をさまざまな角度からサポートする総合的な子育て支援拠点として設置されている。施設の建物は、旧保養施設を平成20年から約4億円をかけ計画・改修し、平成22年度にオープンしている。

保養施設にあった温浴施設を「じゃぶじゃぶひろば」として水遊びができるプールにするとともに、近くには砂遊びのできる「さらさらひろば」を配し、思いっきり遊んだ後でも男女別の更衣室で着替えができ、子も親も誰もがストレスなく利用できるように、旧施設の特性をうまく利用して設計・配置されている。また、旧施設の1F~4Fの構図をフルに生かし活動が館内で満たされるようになっているため、天候に左右されることがなく思いっきり体を動かして遊ぶ場所となった。管理運営費は令和4年度で1億1,100万円足らずとなっており、講座等の運営費である事業費は170万円足らずだ。

利用者は、①小学校3年生までの者及びその家族 ②妊娠中の者及びその者に同伴する者 ③子育て支援に係る活動を行う者 ④子育てに係る相談等を希望する者 となっている。

鹿児島市では、中央館である『りぼんかん』を核として他の子育て支援施設がそれぞれの役割を果たしている。4つの『親子つどいの広場』の利用者は、小学校就学前の子どもとその家族としている。3つの『児童センター』の利用者は、18歳までの児童とその家族ほか、子ども会や母親クラブなど児童健全育成を目的として組織された団体としている。8か所の『地域子育て支援センター』は、4つの『親子つどいの広場』を補完するように保育所等に委託し、きめ細やかな支援体制を確保している。

終わりに、高橋主幹から今後の課題の話があった。現在、地域の身近なところにおいて子育て家庭の支援を実施しているが、今後は、多様なニーズに多面的に対応できるよう、それぞれの施設が関係機関と連携を深め全体での取り組みが必要であるため、「りぼんかん」は統合的な拠点施設として、地域のネットワークをさらに推進していく役割があるとお話しされた。

施設整備や体制強化だけではなく、施設間の連携というソフトの重要さを認識した視察研修でした。

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅲ

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修最終日の3件目である、埼玉県深谷市における『マイナス入札の取り組み』の報告をします。

 

深谷市は、平成18年に1市3町の合併により新「深谷市」として誕生した。人口は約142,000人、面積は138.37㎢で、東京都心から70㎞圏にあり、群馬県に接した埼玉県最北端に位置する。近代日本経済の父と言われる渋沢栄一の生誕の地であるとともに、武蔵武士の鑑と称される畠山重忠の出身地であるなど、歴史に少なからず影響をあたえた興味深い土地柄である。

深谷市企画財政課公共施設改革推進室の大野氏より説明をいただいた。

マイナス入札のきっかけは、公共施設適正配置において施設の再編を進める中で、施設を廃止しても建物を解体しない限り建物は残り続ける。仮に市で解体して更地にしても、特に市街化調整区域は不人気で、必ず売却できるとは限らないとの問題を解消するために取り組んだ。

先行事例に北海道室蘭市があった。調査して弁護士に相談すると適正な対価であれば法に触れないとの返答があった。そこで、深谷オリジナルの制度構築をすることとして、予定価格をマイナスに設定した『建物解体条件付き入札』に着手することを決定した。

マイナス入札の制度とは、建物解体費が土地評価額を上回る場合、その差額を市が負担する仕組みだ。落札金額がプラスの場合は【売買契約】となり、マイナスの場合は【無償譲渡契約】となる。落札金額がマイナスの場合は、議会の議決が必要である。議決後本契約が行われ、落札者による解体工事確認後、市が落札者へ負担金を支払うとともに、契約保証金の還付並びに土地所有権移転登記が行われる。

マイナス入札には 費用面と時間面、+α の3つの効果がある。

費用面では ①入札執行時の直接的な削減効果━『一般的な売却』では市の積算による算出であるため高額となるが、『解体条件付き入札』では民間ベースの建物解体費となるため、民間ノウハウを活用した直接的削減効果が見込める ②市の事務効率化による削減効果━『一般的な売却』では市が建物解体業務+土地売却事務を行うが、『解体条件付き入札』では民間で解体するため工事業務の削減ができ土地売却事務だけの事務負担に削減できる

時間面では ①解体工期の短縮 ②工程間の短縮 ③よって全期間の短縮 が実現できる

+α の効果は 土地活用を前提で応札するため、更地後の売却不成立の回避効果があるほか、未利用であった私有地が速やかに活用され、固定資産税の増や管理費用負担削減の効果がある。

制度構築にあたってのポイントは ①予定価格の設定(もっとも時間をかけ客観性を重視) ②入札保証金、契約保証金、違約金の設定(土地の評価額に対して設定) ③用途制限(初回は住宅または共同住宅としたが制限は難しいため、2件目からは用途制限を付けず「土地利用計画書」の提出を求めた) がある。

その運用に当たっては ●「入札参加申し込みの期間」入札公告から入札参加申し込みの期間は、十分に確保すること(2か月間) ●「解体する建物の確認」解体する建物は、現地と建築図面を十分に確認すること ●「入札参加資格審査」確実な契約の履行を確保するために、契約の相手方として適正かどうかを慎重に行う(買戻し契約は必須) に十分に留意した。

マイナス入札実施の対象物件の決定は、過去2回建物活用型で入札公募したが不調であるとともに旧耐震の建物であることや、老朽化も著しく進行している旧中瀬小学校体育館敷地とした。この地は、都市計画区域外のため利用の自由度が高いこともあった。平成30年に実施され、予定価格▲13,406000円に対し落札金額は▲7,950000円で、全国初のマイナス価格での落札決定となった。2件目の実績は、令和2年に実施された旧本郷農業総合センターで、予定価格▲17,282000円に対し落札金額は▲17,080,000円の落札決定となった。

現時点でマイナス入札の実施は、全国で平成30年から令和3年までの間に5件あり、4市において行われたが、結果としてマイナス入札が成立したのは深谷市と室蘭市のみであった。他市の例は大幅なプラス入札となっている。

 

深谷市では、公共施設適正配置啓発資料の作成を推進しています。市財産処分には市民理解が欠かせません。そのために市民向けの漫画を作成したり、職員向け庁内啓発資料を作成するなどして、長期的な取り組みを進める上で意識の醸成に注力しています。そこでうったえているのは、「一人ひとりが今の現状を理解し、住みよいまちにする努力が必要なんだということです。私たちの住んでいるこの場所はこれからどうなっていくのかではなく、自分たちが今できること、すべきことを一人ひとり考え理解・協力をしていくことなんだということ」です。

深谷市職員さんからの説明の最後に、「自分事として考える」「経営的発想をもってできる理由を考える」「当たり前とされていることに疑問を持つ」の言葉に、「やればできる」「やらなければならない」という、活力を持った深谷市の姿が印象に残った研修でした。

以上で、3回に渡った報告を終わります。

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅱ

2件目の視察研修は静岡県焼津市です。

 

焼津市は、平成20年に1町を編入し人口約137,000人、面積70.30㎢となっている。かつては、遠洋漁業の基地として全国有数の水揚げを誇っていたが、現在は都市化が進み『第6次焼津市総合計画』のもと、市民や事業者、行政が相互協力・連携し「より魅力あるまちづくり」を進めている。

焼津市の公共施設マネージメントの取り組みに至る経緯は、平成20年度ころ厳しい財政状況の中施設の老朽化が進行し、少子高齢化や人口減少等の社会環境の変化への対応が求められるなど、公共施設を取り巻く環境は厳しいものとなっていた。庁内においては、公共施設のデータが一元化されておらず、所管部署ごとによる分散管理体制となっていることが、企画担当・行政改革担当・建築担当部門では課題認識されていた。

このような状況の中、平成20年に耐震対策計画を策定していた当時の担当者が、市有施設の抱える課題に気づいた。●市有施設の老朽化 ●厳しい財政状況 ●一元化されたデータの不在 ●所管部署ごとに分散管理体制 ●社会情勢、ニーズの変化への対応 このような課題解決に向けた取り組みはないのか?子や孫の世代にそのまま引き継ぐのか?というものだった。

公共施設マネジメントを始める際に留意したことは ①施設所管課と資産経営課が共に考える仕組みづくり ②管理の徹底 ③経営的な視点の導入 であった。具体的な進め方は、総合的かつ計画的に管理するための大方針として、『公共施設管理計画』を策定し、体制構築、評価、個別方針、実践 とすることとした。

推進環境の整備は、縦割り構造を発想の転換により、横断的な複合化・多目的利用等データを一元化し、横断的な企画・運営・管理と効率的な財産移管の実施を行うことから始めた。そのうえで、財政担当・公共建築担当・公共施設マネジメント担当の連携による推進体制の強化を行った。

組織体制は、トップマネジメント(首長のリーダーシップ)により庁内検討組織の推進体制の整備が行われた。市長を議長とする「行政経営会議」を最終政策等決定会議と位置づけ、その下に行政経営部担当副市長を本部長とする「公共施設マネジメント対策本部」を置き、次に行政経営部長を委員長とする「公共施設マネジメント検討委員会」を、そして個別施設計画アクションプランの検討をする「個別施設計画アクションプランに基づく個別、専門部会」を配し構築した。

「個別施設計画アクションプランに基づく再編実績として  【統合・集約等】では ●新庁舎の再編(現地での建て替え) ●和田公民館の再編(隣接する小学校校舎との複合化) ●放課後児童クラブの再編(民間施設活用による増設) 他がある。  【維持管理・運営】では ●文化施設の管理運営に関する改善方針 ●図書館、公民館、体育館等のあり方及び改善の方針による、事業収益増や経費削減等の実績がある。

 

焼津市がこれまでの実績を上げるには、市民の大小様々な意見や要望に対して、地道に対応し、積み重ねてきた成果なのだろうと思います。当時の担当職員の危機感に応え、市のトップである市長のリーダーシップにより、全庁内上げた組織としての公共施設マネジメントの取り組みに向け、大きく展開していったことを理解することができました。行政の、現実を見極め未来を見通す感性と理性の重要性を強く感じる研修となりました。

 

 

公共施設再配置特別委員会 視察研修 報告Ⅰ

三豊市議会公共施設再配置特別委員会の視察研修に、令和4年(2022)11月7日(月)~9日(水)の3日間参加しました。視察研修先は、1日目に滋賀県高島市、2日目に静岡県焼津市、3日目に埼玉県深谷市の3市です。

 

高島市は、平成17年に5町1村の合併により誕生した。現在人口は約47,000人で、面積は滋賀県で最も広い693.05㎢(琵琶湖面積181.64㎢含)だ。

『公共施設再編の取り組みについて』高島市総務部行財政管理局行政管理課の上原課長と鈴木氏から説明をいただいた。

合併により同種・同機能の公共施設を有することとなった。そこで平成26年に高島市公共施設等総合管理計画を策定した。計画の趣旨は、旧6町村から引き継いだ各施設が、全国の人口規模類似団体や県内他市平均と比較して大変多い状況となっている実状と、人口減少や少子高齢化、地方交付税・市税の減少、扶助費等の義務的経費の増大が決定的状況にあり●施設の効率的かつ効果的な維持修繕 ●保有する公共施設等の総量の最適化 等が必須であることから策定することだ。

計画期間と削減計画は、平成27年度から令和26年度までの30年間で延べ床面積を半分にする計画で、令和6年度までに10%、令和16年度までに20%、令和26年度までに20%とし、50%の段階的計画をたてている。第1段階目標である令和6年10%削減目標は、現時点で5%強程で合併特例債期限が迫る中、旧町村とのバランスに苦慮している現状だ。

公共施設等のマネージメント推進の基本方針は ①次世代の継承可能な施設保有(施設保有量の縮減) ②将来にわたり必要な施設の計画的な維持更新(長寿命化の推進)として、 公共建築物(ハコモノ): ●新規整備は原則として行わない ●施設の更新(建て替え)は複合施設とする ●施設総量(延べ床面積)を縮減する  インフラ資産: ●ライフサイクルコストの縮減に努める  こととした。

この方針に基づき、各施設ごとの再編の方向性等を示した「高島市公共施設再編計画」を、平成27年に一般財団法人地方自治研究機構と共同で策定した。また、インフラ資産は将来負担コストの低減と財政負担の平準化を図るため、順次種別ごとに長寿命化計画を策定している。

個別計画における再編パターンの考え方には ①公共施設の譲渡・廃止 ②公共施設の多機能化(集約化・複合化) ③用途を変更し存続する公共施設(転用) ④維持する公共施設 があり、副市長をトップとして市行財政改革推進本部(計画構築・推進管理)がマネージメント機関となっている。

公共施設再編の推進は、市民アンケートによると総論賛成だが各論反対は根強いため、総論の理解を得ながら各論を進めなくてはならない。そのために、受益者だけでなく負担者の意見を聞く必要があり、【子どもや孫の世代につけを回さない】ことに尽きる。

職員一人ひとりがどうすればよいかを考えねばならないため、そのための人材育成が求められる。今後とも職員一丸となって取り組んでいく。

 

高島市のおかれた現状は、三豊市を鏡に映したような実態であり、合意形成の厳しさや痛みを突き付けられました。取り組みの中に二元代表制における機関としての議会の関りが薄いように感じたことで、三豊市議会としての機関組織としての取り組みの重要さを再認識した研修でした。